邦画ブラボー

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「お吟さま」

2005年02月01日 | ★愛!の映画
恋というものは、不思議なものなんだ~♪
太古の昔、布施明のこういう歌があった・・

♪逢っているときは なんともないが
さよならすると 涙がこぼれちゃう
逢うたびに うれしくて
逢えばまた せつなくて
逢えなきゃ 悲しくて
逢わずにいられない~~♪

勝手にしろ!といいたくなる歌だが、
まったく恋愛中の男女の心理をズバリ表現している歌詞だ。

歌はこのくらいにして、
切ない「恋」、悲しい「恋」、激しい「恋」。
昔も今も、恋は人を狂わせる。
破滅に向かっているとわかっていても、理性とは相反し、
どうにも止まらないのが恋なのだ。

これは自分の心を偽らず、恋を貫き通した女性の物語。

千利休(中村鴈治郎)の娘吟(有馬稲子)は
幼馴染の高山右近(仲代達矢)を恋い慕っていた。
だが右近は切支丹でバツイチ。
ガチガチに禁欲的で吟をイライラさせる。
縁談が持ち上がっていることを訴えると、
いいお話ではありませんかと言い、絶望させる。

そんな薄情な言葉にもへこたれず、嫁いでもなお右近を思う
情熱的でいちずなお吟さま。

ここまでならよくあるハナシだが、
太閤秀吉(滝沢修)の茶の師匠である千利休を父に持ち
類稀なる美貌を持った吟には大きな悲劇が待ち受けていた。
そして父、利休の運命もまた・・

出演者が大変に贅沢で驚いた。
秀吉の求愛を拒んだ咎で、
女が裸馬に乗せられ刑場にひかれていくシーンがある。
綺麗なひとだなと思ったら岸恵子だった!

吟は「なんとむごい・・でもなんと晴れやかなお顔だろう。」と、
侍女に言うのだった。

慈愛に満ちた母には高峰三枝子、
まだ10代のあどけない田村正和が弟役。
吟に献身的に尽くす侍女に冨士真奈美。
このころはまだほどよいふっくら加減。

ちょっとしか出ないが、傲慢で派手好きな淀君(月丘夢路)がいいかんじ。

木石のようだった右近が、吟になじられて
とうとう熱い胸のうちを激白するシーンがいい。
「愛する人はそなたひとり・・!」
たちまち光り輝く吟の顔。もはやどうにも止まらない!

大女優田中絹代のメガホンによる格調高い映像。
女流監督として、この作品を含み6本も作品を残していると知って驚いた。

千利休の切腹については色々な説があり、
映画や小説にも散々描かれてきた。
この映画では「茶」の道に生き、
娘を心から愛する父親としての利休の姿が描かれていて、心を打たれた。

恋愛中の方もそうでない方も、
そういえば大昔にそんなようなこともあったな~と、遠い目の方にも
おすすめの『恋の』映画。
有馬稲子の凛とした美しさも必見。

1962年 監督 田中絹代 脚本 成澤昌茂
原作は、この作品で直木賞を取った今東光。

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