スポイチ編集長日誌

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「昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より」と題するコピペがウソくせえ件

2011年11月30日 | 社会
最近、釣り雑誌に連載を持っていたフリーライターの若者が急性白血病で亡くなったという内容の雑誌記事がネットで紹介され、それ自体はお悔やみ記事だったのだが、一部のいわゆる「まとめサイト」の記事において"福島県に住む祖父の田舎を釣りで応援すると言い、(福島第一原発の)30キロ圏内で野宿し池や川で釣った魚を食べたことで急性リンパ白血病で亡くなった"などの「新事実」が紹介され、すわ原発からの放射性物質による犠牲者かと当初騒がれたのだが、実は30キロ圏内で野宿していた等の話は事実ではなかったという指摘が相次いだことで、一転悪質なデマ扱いとなっている。

参考
ある若者の死が“原発事故の犠牲者”としてネットで広がり、否定されるまで
お知らせ ツイッター、匿名掲示板等で、以下のような誤った情報が出回っているので、追記します。


一方、その「まとめサイト」の同記事中にはネットからの引用という形で、「昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より」と題する記事の文章が紹介されていた。しかし、その内容が新聞記事としてはどうも怪しい。
怪しいとか言っておいて引用するのは気が引けるのだがとりあえず引用しておく。

---引用開始----------------------------------------------------
昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より

「海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできれば」と同社幹部。昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため、新日本窒素肥料が地元水産物を買い上げ、地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしてもらうのが狙い。漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣産海産物の美味しさと安全安心を伝えて欲しいと話している。
---引用終わり--------------------------------------------------

この「コピペ」にはさらに別パターンも存在する。
---引用開始----------------------------------------------------
昭和35年の熊本日日新聞より

■新日本窒素肥料が安全宣言で魚貝類を地元住民へ

原因不明の奇病が発生したとされるこの地域で不安を抱えた地元漁民が安全を宣言。
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。

「海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできれば」と同社幹部。
昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため新日本窒素肥料が地元水産物を買い上げ
地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしてもらうのが狙い。
漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣産海産物の美味しさと安全安心を伝えて欲しいと話している。
---引用終わり--------------------------------------------------

この「新聞記事」は遅くとも2011年4月初めにはコピペとしてネット上に出現している。
その初出はおそらくこれ(キャッシュ)初出については別記事にて追記あり。こちらを参照してください。

---引用開始----------------------------------------------------
116 名前: 名無しさん@十一周年:2011/04/06(水)14:22:14 ID:xL8Qknw+0
昭和20年熊本日日新聞より

「新日本窒素肥料が安全宣言で魚貝類を地元住民へ」
原因不明の奇病が発生している、この地域で不安を抱えた地元農民へ
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。
奇病と結びつける風評被害を少しでも手助けできればと同社幹部。
安心安全を知ってもらうため新日本窒素肥料が水産物を買い上げ
地元の皆様へ近海の良質な水産物を食べて奇病の風評を飛ばしてもらうのが願い。
漁業関係者は風評を恐れずに水俣産の海産物を流通して欲しいと話している。
---引用終わり--------------------------------------------------

昭和20年…?
現在コピペされているものよりも、さらに文体が支離滅裂なのが分かる。
この時の反応はいまいちだったようだが、2011年9月はじめには「昭和35年(1960年)」の記事だとしてほぼ現在の文章になり、その後は細々とコピペされたり個人ブログ等に引用されていた。
だが、冒頭記事の「まとめサイト」に引用されたことから、ネット上において現在急速に広まりつつある。
しかし、「コピペ」として頻繁に紹介されているにもかかわらず、ネット上にオリジナルのソースに相当するものは見つからず、また、そもそも新聞記事としてもおかしな点がいくつかある。

1.日付がない
この記事コピペとセットでタイトルのみ紹介されることの多い同じ熊本日日新聞の「猫の狂死」記事のほうは、ご丁寧にも「1954年8月1日付」と書かれているのに、この「記事」には「昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より」とあるのみで、日付が書かれていない。新聞記事を引用する際には日付まで記すのは常識だと思うのだが…。

2.言葉遣い・発想が現代的
「あんぜんあんしん」などというフレーズが出て来たのは、早くてもPL法施行以後、「こんにゃくゼリー」への総叩きとかで例の「のだせい」大臣が大暴れして以降のノリでしょう。
同様に、「風評被害」が起きているとする地域の食品をわざわざ買い取って格安で他地域にバラ撒こうなんて発想もフクシマ以降のものです。狂牛病とか鳥インフル、豚インフル、口蹄疫の時に、「肉を食べないのは風評被害!発症地域の肉を全国に送りましょう!」なんて運動があっただろうか?

3.なんでチッソが「買い上げ」る?
当時の公害疑惑企業がわざわざこんなことをするとは思えない。裁判等を経て公害が広く認知される以前の公害加害企業はどこも皆傲岸不遜だった。「風評被害に苦しむ漁民がかわいそうだから行動しよう」なんて発想があったとは思えない。
しかも、先に書いたように、こういう「風評被害が許せないからバラ撒く」なんてのはフクシマ以降の発想だし、仮にこういうことを本当にやっていたとしても漁協とか地元水産会社の役目だろう。
実際には、当時の水俣では「奇病」の噂で海産物は全く売れず、漁民達は自分たちで食べる分の魚や貝を細々と採っていた。そこから発症したのだ。
(追記:昭和35年には既に熊本県により水俣湾での漁業は禁止されていた模様。)
そして、事実はやはり風評ではなく「真っ黒」だったのだから、誰であろうと「汚染された海産物を他地域にばらまく」なんてことをやっていたとしたら、当時も今も語り草になっているはずだ。それが他ならぬ加害企業のチッソであったのならばなおさらである。

4.記事の文章がおかしい
既に他の人も指摘されていますが、「風評被害を少しでも手助け」(被害を手助けするの?)とか、「安心安全」と書いた後に今度は「安全安心」と書いたり、さらに主語と述語の関係がめちゃくちゃ(「安全を宣言」したのは誰?「話している」のは誰?)など、普通の新聞社のデスクや校正部であればまず見逃さないであろうおかしな表現や表記揺れが多い。
あと、記事本数の増加に対応して文章量を圧縮するための「体言止め」が新聞記事に多用されるようになったのって、もう少し後の時代の流行だったかと思うのだが。

…と、さまざまおかしな点のある「昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より」のコピペですが、当時の熊本日日新聞のマイクロフィルムは熊本市立図書館他で見られるみたいです。
この記事および記事内の事実が本当に存在していたなら結構なことだし、引用者の狙い通り、日本人は半世紀前から同じ過ちをやっていたという証左にもなる。それでも最初の引用者には「日付ぐらいは書いておけ」と言いたいし、どう見ても原文ママの正確な引用とは思えないのが残念なところですが。

しかし、意図はよく分かりませんが、もしもねつ造や改変でウソ記事をでっち上げていたとしたなら、ネット発祥のデマがまた一つ増えることになる。
個人的には、熊本日日新聞に問い合わせるまでもなく、「最初から最後まで何者かがでっち上げした創作文」にオールインです。
もしこの記事が本当に熊本日日新聞に当時掲載されたものだったなら、その時は謝りますが、「プロの新聞記事の割には文章おかしくね?」とも言わせてもらいたいと思います。



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