スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

不屈の棋士&迷信家

2018-01-22 18:58:23 | 将棋トピック
 将棋関連の書籍のレビューの6冊目は,2016年7月に講談社現代新書より発売された,観戦記者としても活躍中の大川慎太郎が書いた『不屈の棋士』です。タイトルからイメージするのは難しいかもしれませんが,トップ棋士へのインタビュー集で,そのインタビューの内容は,コンピュータの将棋に特化しています。つまり棋士がコンピュータの将棋にどのように対応しているのかを大川が質問しているということです。
                                     
 発売直前の2016年5月,第1回の電王戦で山崎隆之八段がポナンザに連敗しました。そして昨年は佐藤天彦名人もソフトに敗れ,電王戦は2回で幕を閉じることになりました。インタビューは当然ながら発売より前にされています。ただし,山崎八段だけは電王戦で敗北を喫した後の短いインタビューも収録されています。これでみれば分かるように,コンピュータがはっきりとした形で棋士を上回っていく段階でのインタビュー集です。この書籍の価値が高いのは,そうした時期に実施されたインタビューの中で,棋士,それもトップ棋士が,どういう考えの下にどのような仕方でコンピュータの将棋と向き合っていたのかということが,明白になっているという点です。後世に残る歴史的資料としての価値も高いと僕は考えています。
 棋士といえどもそれぞれで,コンピュータに対する考え方の相違は,僕が思っていたよりはずっと大きかったです。とくに山崎八段が,コンピュータを将棋の研究に使う際に,どのようなソフトを入手することができるのかという点で棋士の間に差異が出ていて,それは不平等であるという主旨の発言をしているのですが,こうした考え方というのは僕が想像することすら難しいものでした。
 一応,大川自身が棋士の態度を分類して章分けしています。第1章は最強棋士として羽生善治と渡辺明。第2章がコンピュータ先駆者として勝又清和,西尾明,千田翔太。第3章がコンピュータに敗れた棋士として山崎隆之と村山慈明。第4章がコンピュータとの対決を望む者として森内俊之と糸谷哲郎。第5章がソフトに背を向ける者として佐藤康光と行方尚史。あとがきの中に再び山崎へのインタビューがあります。
 章分けは便宜的なものと僕は感じました。手許に残し,もっと時間が経過した後にまた読んでみたい1冊です。

 地獄への不安metusあるいは恐怖metusに関しては,アルベルトAlbert Burghは植え付けられてしまったのであり,この意味では被害者です。書簡七十六でスピノザはアルベルトに厳しいことばも述べていますが,そのことは理解していたと思います。ただ,植え付けられた不安あるいは恐怖がアルベルトにとってはあまりに強大なものであったがゆえに,それはすべての人間に共有されるべき感情affectusとみなされました。第四部定理六三備考で,この場合でいえば不安あるいは恐怖を植え付けた側の迷信家が,ほかの人びとをも不幸にしようとしているといわれているのには,このような意味も含まれていると解しておくのがいいでしょう。この結果,アルベルトは書簡六十七をスピノザに送り付け,スピノザに対する排他的感情および排他的思想を露にしたのです。
 アルベルトは家族に対しても似たような態度をとったと思われますが,スピノザの場合についていえば,これは一対一の関係です。そしてその根源となった感情である不安ないしは恐怖が,地獄に対するものであったということは,実はあまり関係ありません。備考Scholiumは迷信家ということで,宗教的なものを匂わせているといえますが,不安あるいは恐怖を煽ることによって人びとを悪malumから逃れさせようとするのは,すべからく迷信家の態度であるといっていいでしょう。実際にこの種の感情を植え付けることによって高額の商品を買わせるとか,老後の金銭面での不安に乗じて投資をさせるといった詐欺行為は現実的に存在します。この場合は詐欺を行う者はそれが詐欺だと理解した上で行うわけですから,迷信家と名付けるのには語弊があるでしょう。しかしそうした行為が人びとを不幸に陥れているというのは明白であると思います。備考で迷信家が行っているとされている行為は,こうした詐欺行為に類するとスピノザはいっているのです。
 したがって,こうした行為は単に宗教的指導者がなすものと限定されるわけではありません。たとえばある国家の指導者が仮想の敵を立て,その敵に対する不安あるいは恐怖を国民に煽るなら,その指導者は国民を不幸に陥れている迷信家ないしは詐欺を働く者と何ら変わるところはないのです。
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