スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&睡眠欲への対抗

2018-12-05 19:26:29 | 将棋
 和倉温泉で指された第31期竜王戦七番勝負第五局。
 羽生善治竜王の先手で矢倉模様の将棋。広瀬章人八段は2筋を角で交換させ,自身は5筋を角で交換して2筋を詰められることは甘受するという指し方を採用しました。
 この将棋は先手に変わった手が多く出ましたので,そうした手だけを紹介していきます。
                                     
 後手が8二の飛車をひとつ引いた局面。ここで先手は☗2七角と打ちました。これは普通は☗1八角と打つものなのですが,1筋の突き合いが入っていないこの局面では,飛車の上に打った方が後に別の使い方が生じ得るという判断があったのでしょう。
                                     
 先手が6二の金を銀で取り,後手が3五の馬で取り返した局面。ここでは☗7二金と打ちました。これも馬を攻めるのなら☗6三金と打つのが自然ですが,この場合は☖5一馬と逃げた後に☗6三角成とし,確実に桂馬を取れるのでこちらの方がよいということだったと思われます。
                                     
 先手が2四の飛車で桂馬を取りつつ王手をし,後手が合駒をした局面。ここは☗1一龍が最も普通の手ですが☗3三桂☖4二玉という交換を入れてから☗7六銀と手を戻しました。つまり7七の銀を取られてはいけないので,王手をしつつ飛車にヒモを付けたという意味。実際に龍は取られて先手が成桂を作る展開に進みましたが,この成桂が後手玉に対して働きかける展開に進みました。
                                     
 後手が銀を打って3三の地点を補強した局面。ここから☗7一金打☖5五角☗7七歩☖7一飛☗同金と進めています。飛車を取りながら1段目の横利きを消すのは大きいですが,金を使って盤上の金がそっぽにいくのでこれも浮かびにくい順と思います。ところがこの7一の金も完全な遊び駒にはならず,2一の成桂と同様に後手玉に働きかける駒であり続ける展開となりました。☗7一同金の局面はちょうど先手が金桂得で,その2枚が7一の金と2一の成桂。この2枚が遊んでいれば別ですが,そうでないということであればここでは先手が優勢なのでしょう。
 異筋の手を連発した羽生竜王が勝って3勝2敗。第六局は12日と13日です。

 現実的に存在する人間が寝坊したり寝過ごしてしまったりすることが,常に能動的な欲望cupiditasである睡眠欲から由来するということはできません。他面からいえば,理性ratioによって肯定され得る睡眠欲に由来するとはいえません。しかしそうでないともいいきれないのです。たとえばその寝坊によって他人に迷惑をかけてしまったとしても,それは理性によって肯定されるべき睡眠欲に由来するものであったというケースがあり得ることになります。もしそこでその睡眠欲に精神の力で対抗し,睡眠することを避けたがゆえに,後に身体corpusに重大な支障を来すことになってしまうということがあり得るということから,これは明らかであるといわなければなりません。そもそも僕の考えでは,受動passioである睡眠欲に対して能動的に精神の力で対抗するというのは,眠さを我慢して行動するということではないのです。
 現実的に存在する人間はその現実的存在を維持していくために睡眠を必要とするのは確かですが,それは一定の量の睡眠です。もちろんそこには個体差が生じますが,適切な量の睡眠時間を確保していれば,受動的な睡眠欲に支配されてしまうということは生じません。したがって,睡眠欲に対抗するためには,睡眠時間を確保するということが重要であることになります。そしてそれが理性の仕事であると僕は考えます。たとえば無意味に夜更かしをすることによって睡眠欲に従属してしまう,つまり寝坊をしたり寝過ごしてしまったりするなら,これはその夜更かしの方に原因があるのであって,この夜更かしを理性によって避けなかったという意味で,自由の人homo liberと反対の意味で無知の人の行動であったということになるでしょう。ただ,どのような人間であっても止むを得ない理由によって睡眠不足に陥ってしまうということはあるわけですから,単純に睡眠が不足することは無知の人がすることだというわけではありません。極端にいえば,どれほど自由の人として行動する人間であっても,睡眠不足に陥ってしまうということはあり得るのであり,この意味では自由の人であろうと無知の人であろうと,寝坊したり寝過ごしてしまったりすることは起こり得ることなのです。

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