スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

レディチャッター&シナゴーグ離脱の弁明書

2015-06-29 19:19:32 | 血統
 昨日の宝塚記念を勝ったラブリーデイは,1959年にイギリスで産まれ輸入されたレディチャッターという馬が母系の基礎輸入繁殖牝馬にあたります。ファミリーナンバー19。現在に続いている一族は,ほとんどが孫のペルースポートの子孫であると思います。
                         
 一族で最初に重賞を勝ったのはペルースポートの仔のシャダイチャッターで,1985年の小倉記念です。これは僕の競馬キャリアが始まる前年ですので,僕は知りません。シャダイチャッターは牝馬で,孫に2008年のオーシャンステークス,2009年のCBC賞と京阪杯を勝ったプレミアムボックスがいます。
 1989年に京成杯と函館記念を勝ったのがスピークリーズン。この馬はペルースポートの孫世代。1998年の福島記念を勝ったオーバーザウォール,2006年の福島記念と2007年の七夕賞を勝ったサンバレンティン,2005年の京都新聞杯,2007年の朝日チャレンジカップと京都大賞典を勝ったインティライミの3頭はきょうだいで,同じようにペルースポートの孫世代になります。
 2005年の朝日チャレンジカップを勝ったワンモアチャッターと2012年の中日新聞杯を勝っている現役のスマートギアも兄弟。この2頭はプレミアムボックスと同じようにペルースポートの曾孫世代です。
 この兄弟の姉から産まれたアリゼオは2010年にスプリングステークスと毎日王冠を勝ちました。ペルースポートの4代子孫になります。
 ラブリーデイはペルースポートの5代子孫。そしてこの一族から初めての大レースの勝ち馬として名を残すことになりました。
 子孫が勝っているレースからも窺えるように,平坦巧者を多く出している一族です。とくにサンバレンティンが勝った2006年の福島記念は,1着から3着まで,ペルースポートの子孫で独占しています。大レースに手が届かなかったのは,そういう傾向の影響があったかと思いますが,代を経て,底力も伴ってきたのではないでしょうか。ファンシミンがそうであったように,なかなか大レースの勝ち馬が出なかった一族から1頭が出現すると,続々と勝つというケースもあります。レディチャッター~ペルースポートの一族にも,その可能性はあるのではないでしょうか。

 メナセ・ベン・イスラエルMenasseh Ben Israelがウリエル・ダ・コスタUriel Da CostaのようになりたいのかとバルーフBaruchを恫喝したとき,破門されたいのかという意味を込めていたと僕はみています。なぜならその直後にメナセは,ユダヤ民族に背くという意味において,バルーフをダ・コスタに擬えているからです。
 これに対してはバルーフは,顔色ひとつ変えずに静かに答えたとルイは伝えています。バルーフの答えは,気の毒なダ・コスタの後を追うつもりはないというものでした。ダ・コスタを気の毒といっている点も注目に値すると思いますが,僕が重視したいのは別のところにあります。
 バルーフはダ・コスタの後を追うつもりはないと言っていますが,それは破門されないようにするという意味ではなかったと僕には思えるのです。なぜなら直後にバルーフは,自殺は犯罪だと続けているからです。
 自殺を否定することは,『エチカ』の文脈からも理解可能で,すでにこの時点でスピノザがこうした見解を有していたというのは,スピノザの哲学的思想がかなり若いうちから固まりつつあったということなのかもしれません。しかしそれより,もしもダ・コスタのように自殺するつもりはないとバルーフが答えたのだとしたら,それはもし破門されることになっても自殺はしないと読解できることになります。そして事実,この答えにはそういう意味があったと僕は解するのです。
 スピノザは破門されたとき,スペイン語で「シナゴーグ離脱の弁明書」を書いたとされています。文書は発見されていませんが,これを史実として疑っている識者を僕は知りません。ですから実際にそういう文書はあったのでしょう。
 この文書は,題名からして,ユダヤ人共同体から離脱することを前提しています。つまり改悛の意を示すような内容でなかったと類推されます。いい換えれば破門を解いてもらおうという意志はスピノザには皆無であったと判断するのが妥当です。このことと,まだ破門以前に,仮に破門されてもダ・コスタのように自殺はしないと発言していたことは,符牒が合うように思えます。1950年の時点で,後の弁明書を書く兆しが,僕には垣間見えるのです。
コメント
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