穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

よく出来たチャイニーズ・ボックス

2019-07-16 08:23:21 | ポール・オースター

  オースターの「インヴィンシブル」を読み終わった。オースターの作品の半分くらいは読んだであろうか。この作品はチャイニーズ・ボックス的な入れ子細工としてはこれまで私が読んだ作品の中で一番よい出来である。

  作家ギルトにとっかかりをつかむと作家は延命策として通俗小説に向かうのは日米で同じだろう。これは通俗小説なのだが、複雑なつくり(invinsible)なわりには、文章の滑らかさ、構成の一体感、分かりやすさでいわゆる「円熟」の境地に達している。日本だとこうなると「文豪」という呼称をたてまつるのだろうか。

  後書きで訳者はこの作品が初期の「ムーンパレス」と世間で比較されるというが、訳者も指摘しているように全然違うようだ。


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