庭をきょろきょろしながら、肩に三脚を担いでいると、若い女性の「いらっしゃいませ」と言う声が聞こえました。
声のする方を見ると、堂の外廊下に女性が、笑顔で立っておられます。
「今日は」と挨拶をして、「すいません、山茶花を見に来たのですが、どこにあるのでしょうか?」と尋ねると
「それは古い山茶花のことですか?
あの山茶花は二年ほど前に折れて、倒れたんです。後ろの山門の横にある切り株がその山茶花のものです」と仰るではありませんか。
「え~ この切り株ですか! そうなんだ! この山茶花を訪ねて来たのに、残念」

すう嘆くと、女性の方は気の毒がられ、
「折角お越し頂いたのに申し訳ありません」と仰いました。
私は「申し訳ないなんて、貴女の責任でもないのに、そんなこと言われたら参るな~」と思っていると、
「折角ですから、どうぞこちらにお上がり下さい。」と本堂と思しき建物の玄関を開けてご案内して下さいました。
私はずうずうしく、案内されるがままに上がらせて頂きますと、やがて暖かいお茶とお菓子が目の前に、
「どうぞお召し上がり下さい」

「いやはや、これは。今時こんな、昔の日本人が備えていた、暖かな人情の方が今でもいらっしゃるなんて、なんと言うことか」と思いながら、
私は全国の花を尋ね歩き、ホームページに花の写真を掲載していることなどを語っていると、女性の方が、本堂の裏にもう一本の山茶花があるとお話されたので、早速その古木を見せて頂くことにしました。


この木も中々に見事な山茶花です。
根元に空があり、幹の直径は40㎝ほどもありましょうか。
柔らかな陽射しの中で薄紅色の花が微笑んでいました。
山茶花というのは本当に不思議な魅力を持つ花です。
初冬の寒さ募る季節の中で、控え目な印象に、暖かに花を咲かせ、そして根元が染まるほどに花弁を敷き散らせます。
野が枯れる季節に、人の心に暖かなものを運んでくれる花、との思いを新たにした大智寺の山茶花でした。
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