
人影の少ない、森の声だけが聞える木立の中で、胸奥へ届く酸素に、都会では味わえない純度を感じます。
しかし、ロックガーデンへの分岐を過ぎて、岩場に差し掛かった辺りで、とうとう雨が降り始めました。
前を行く三人組は、傘を差して、雨の道を登って行きます。

けれど、広葉樹の森では、木の葉に当る雨音が聞えても、体に届く水滴は殆どありません。
私は合羽を羽織ると、かえって汗で中から濡れるので、暫く様子をみることにして、そのまま歩き続けました。
御岳神社を出発してから約1時間15分程で、無人の大岳山荘に到着しましたが、雨は少しずつ程度を増していました。

大岳山荘は無人でした。
雨を避け、鍵の掛かっていない小屋へ入り、木の切り株の椅子に座り、自宅近所のスーパーで買ってきた、5個入り198円の大福餅を頬張りました。
普段大福などは、胸が焼けるので絶対に食べないのですが、山では別腹です。
この小屋で雨具を付けようかとも思いました。
しかし、この程度のシトシト雨ならば濡れるも一興と、無精をして、そのまま雨の中へと歩を進めました。
実は、若き日に山遊びをしていた頃、大雪山系のクワウンナイ川などで沢登りをしましたが、そんな時、膝から下は一日中濡れていましたし、滝登りでは全身に水を浴びますので、服が濡れることに抵抗がありません。

クワウンナイ川の滑滝
(水苔に覆われた岩の上を、ヒタヒタの水が流れる滑滝が数キロも続く)
大岳小屋を出て、大岳神社の鳥居を潜り、鎖の付いた岩場を10分程も登ると大岳山のピークに到着しました。

この山頂を踏んだのは今日が初めてですが、周囲は雲に覆われて視界が全く利きませんでした。
サビタの花とクリの花の蕾が、所在なげに雨に濡れているばかりでした。

夏山でも標高の高い山や風が強い場合は、体が濡れると体温を奪われ、遭難することがあります。
しかし、今日は大丈夫。
「色男はいつも濡れるもんさ」などとうそぶきつつ、雨の大岳山を後にしました。
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