農家の横を過ぎると、稜線を越える峠が見えてきました。
緑の大地と空の接点に向かって、道が伸びていきます。

谷の底に細流が光り、その脇に石壁が牧柵となって続いていました。
この場所が人の住む地域からかなり離れていることを考えると、イギリス人の農地に対する執念のようなものを感じます。
人里離れたこんな場所で、営々と石を積む作業を、この国の人々は何百年も繰り返してきたのでしょう。
私が見ている緑の草地は、もしかしたら人間が作り出したのかもしれない、と思い始めていました。

ここは標高が千メートルにも足りませんので、森林限界以下のはずです。
先程の民家の横に木を見ましたから、間違いはありません。
注意して見ると、水の流れる所々に、一定の樹高の木々を認めます。
それらの木々が育つエリアは植裁されたのではなくて、切り残されたと考えるべきかもしれません。
周囲は全て牧羊地でした。

視野の中に、北海道の高層湿原にも似た光景が広がっていました。

しかし、大きく異なるのは植物種が少ないことです。
羊の捕食が影響しているかもしれません。

樹木がなく、岩が剥き出しとなった光景は、一見すると北海道の大雪山などの景観と似ていますが、バックグラウンドは似て非なるものかもしれません。
太陽が下がり始めた空に、白い雲が浮かんでいました。

多分、ここがワイノーズ峠なのでしょう。
眼下の斜面を過って細い道が下って行きます。

道路の横に、羊が食べ残したと思うシダ類が繁茂していました。

細くて険しい、それでいて恐怖心を感じさせない、緑溢れるハイ・アドベンチャーのコースは私を十分に楽しませてくれます。

天気もすっかり回復しました。
遠回りするアクシデントもありましたが、結果的に効率良いルート選定となったようです。

やがて、視界の中に人家が近いことを示す、橋や木陰が現れました。


名も知らぬ小さな湖の畔に白い家がポツンと見えます。

斜度を落とす陽の光の中で、山と湖と緑の陰影がより鮮やかになってきました。

ハイ・アドベンチャー・コースの最後、一軒の民家の脇を抜けたT字路に、次のような標識が掲げられていました。

ワイノーズ峠、ハードノット峠
斜度30度
細心の注意が必要です。 道は狭く、厳しい急カーブが多数あります。
冬季は危険なことがあります。 キャンピングカーは通行不能です。
確かに、その通りでした。
車のナビを制作したメーカーは、クレームを恐れ、通常はこの峠を通らないプログラムにしているのでしょう。
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