インヴァレリー(Inveraray)から再びA83でグラスゴー(Glasgow)を目指します。
街を離れ、道は山の中へ入って行きます。

山肌には針葉樹が植林されていました。
日本では、全国に植林が及んでいますが、イギリスでは稀に見かける程度です。
イギリスの住居が99%石造りであることと、関連するのでしょうか。
推論ですが、多くの農民が羊を飼うことを生業としたことが、草地を広げる為に森林の伐採を促し、それが、木材の不足と価格の高騰を呼び、石造りの街を導く遠因になったと考えたら如何でしょうか。
石の住居が当たり前になれば、木材の需要が低下するので、林業が衰退し、イギリス全土から森林面積が減少したとすれば、今まで見てきた光景が矛盾なく説明できます。
森は水を供給しますが、イギリスではメキシコ湾流が豊かな雨をもたらすので、森林の減少が深刻な水不足を招かなかったと考えます。
こんなふうに、車窓からの風景を、パズルを一つ一つ解くように見る、面白い旅となりました。

道路の脇に小さな湖がありました。
ヤマゼリに似た白い花とキンポウゲに似た黄色い花が咲いていました。

ジギタリスが陽の当たる斜面に花を咲かせていました。

山から流れ出た清水が滝を作っています。
すぐ傍の谷の底では、風を避けるようにして建つ、一軒の農家が見えます。

道はやがて大きな湖の畔へ出てきました。
しかし実は、これがクライド湾から20km以上も内陸へ切れ込んだ入江の最奥部で、正面がアロッチャー(Arrochar)の街です。

ナビを確認すると、アロッチャーの先の鞍部を越えてローモンド湖畔(Loch Lomond)へ出るようです。

ローモンド湖畔に出ると、湖上を強い風が吹き抜け、湖面は波打っていました。

人間という動物は(自分のことですが)本当にわがままなのだと思います。
昨日、晴天の下で、あんなに気持ち良くイギリス本島最北部をドライブして、とても幸せな一日だったのですが、スコットランドの「暗く立ち込める雲と、草を払うような風の中で黒いマントで立ち尽くす男」みたいなイメージも味わってみたいな~ と思っていたのです。
今のローモンド湖はそんなイメージにピッタリ。


風はビュンビュンですし、波は音を立てて渚に打ち寄せますし、小雨混じりの空はドラキュラでも出てきそうな雰囲気です。
いいですね~。
こんなチャンスを逃す手はないと、雨の中を傘も差さずに湖畔を歩いてみました。
白いバラが咲いていました。園芸種ではなく、原種のように見えます。

鴨が草の中に蹲っていました。
イギリスの野鳥は人間を全く警戒しません。驚く程の距離まで近づくことができます。

そして、ここでも小川に掛かる橋は石でできていました。
人が手をかける全てのものが石造りです。
「風が吹くと桶屋が儲かるように、イギリス本島へ吹きつける風と雲がもたらす雨が、過不足のない牧草を育て、それが巡り巡って石の文化を育んできたのではないか」と、一人納得する東洋からの旅行者を尻目に、鴨君は「一人で頷いていれば」と、全く相手にもしてくれませんでした。

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