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贅沢な時間

2014-05-30 17:01:47 | ヒマラヤ・トレッキング 花の旅

 

 3月13日

 

 チョムロンで朝を迎えました。

 

 窓の外が薄明るくなってきたので、GH(ゲストハウス)のテラスに出て、朝陽に染まる山の光景を楽しむことにしました。

 

 

 アンナプルナ・サウスのピークに光りが届き始めました。

 

 

 マチャプチャレが背後から陽を浴び始めました。

 

 何度見ても、胸の奥の蒼い水底に黒曜石を落とし込んだような、静かで確実な感慨が、波紋を伴いながら胸一杯に広がってゆきます。

 

 

 アンナプルナ・サウスは手が届くほどの近さで、刻々と表情を変化させます。

 

 

 マチャプチャレの、胸奥に積み重なる感慨を絵に留めたいと、ズームを利かせ、構図を変えて、シャッターを押し続けました。

 

 頂上直下の南壁の斜面が仄かな曙色に染まり始めました。

 

 西壁の下部はダークブルーのまま、眠りから覚めた様子は感じられません

 

 

 どれ程の時が過ぎたのか記憶が定かではないのですが、

 永い時間だったように思いますし、瞬時のことだったのかもしれません。

 気付くとマチャプチャレは光のベールに包まれ、夜から朝の分岐点で、凝縮された時間が弛緩してゆく表情を見せていました。 

 

 

 張り詰めた空気が緩み、背後のキッチンに人の気配を感じました。

 私は振り返り、キッチンで朝の準備を始めていた男性を見かけ、温かなティーを一つ注文しました。

 

 左手にアンナプルナ・サウス、右手にマチャプチャレ。

 

 千両役者の競演を眺めながら、モーニングティーのふくよかな香りが、喉から胸の奥に広がってゆきました。

 

 

 

 チョムロン村はまだ、眠りから覚めずにいます。

 

 

 名も知らぬ稜線に風雪が舞っています。

 

 眠りから覚めたイエティが、遊び始めたのかもしれません。

   

 

 目の前の電線で、一羽の小鳥がチュルル、チュルルと囀りを始めました。

 

 

 贅沢な時間がゆったりとチョムロン村にながれます。

 

 

 

 何も思いませんでした。

 

 何も考えませんでした。

 

 只々、山の輝きを眺め続け、時を忘れていました。

 

 今、この地に居ることが本当にありがたい。

 

 これ程の贅沢な時間に生きることに、感謝の気持ちが溢れます。

 

 

 やがてマチャプチャレの西壁に陽の光が回り始めました。

 

 

 アンナプルナ・サウスは山容を輝かせ始めました。

 

 

 チョムロン村に光が届き始めました。

 

 周囲の家々から村人の声が聞こえ始めていました。

 

 

 

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