3月13日
チョムロンで朝を迎えました。
窓の外が薄明るくなってきたので、GH(ゲストハウス)のテラスに出て、朝陽に染まる山の光景を楽しむことにしました。
アンナプルナ・サウスのピークに光りが届き始めました。

マチャプチャレが背後から陽を浴び始めました。
何度見ても、胸の奥の蒼い水底に黒曜石を落とし込んだような、静かで確実な感慨が、波紋を伴いながら胸一杯に広がってゆきます。

アンナプルナ・サウスは手が届くほどの近さで、刻々と表情を変化させます。

マチャプチャレの、胸奥に積み重なる感慨を絵に留めたいと、ズームを利かせ、構図を変えて、シャッターを押し続けました。
頂上直下の南壁の斜面が仄かな曙色に染まり始めました。
西壁の下部はダークブルーのまま、眠りから覚めた様子は感じられません。

どれ程の時が過ぎたのか記憶が定かではないのですが、
永い時間だったように思いますし、瞬時のことだったのかもしれません。
気付くとマチャプチャレは光のベールに包まれ、夜から朝の分岐点で、凝縮された時間が弛緩してゆく表情を見せていました。

張り詰めた空気が緩み、背後のキッチンに人の気配を感じました。
私は振り返り、キッチンで朝の準備を始めていた男性を見かけ、温かなティーを一つ注文しました。
左手にアンナプルナ・サウス、右手にマチャプチャレ。
千両役者の競演を眺めながら、モーニングティーのふくよかな香りが、喉から胸の奥に広がってゆきました。

チョムロン村はまだ、眠りから覚めずにいます。

名も知らぬ稜線に風雪が舞っています。
眠りから覚めたイエティが、遊び始めたのかもしれません。

目の前の電線で、一羽の小鳥がチュルル、チュルルと囀りを始めました。

贅沢な時間がゆったりとチョムロン村にながれます。

何も思いませんでした。
何も考えませんでした。
只々、山の輝きを眺め続け、時を忘れていました。
今、この地に居ることが本当にありがたい。
これ程の贅沢な時間に生きることに、感謝の気持ちが溢れます。
やがてマチャプチャレの西壁に陽の光が回り始めました。

アンナプルナ・サウスは山容を輝かせ始めました。

チョムロン村に光が届き始めました。
周囲の家々から村人の声が聞こえ始めていました。

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