黒岳の頂に昔と変わらぬ景色が広がっていました。
昔々のことですが、北海道の帯広で仕事をしていた頃、大病院のお医者さんと一緒に、この道を通って旭岳まで縦走したことを思い出しました。
私が山歩きの楽しさを語ると、「私も一度は行ってみたい」のような会話が切っ掛けだった気がします。
あれから数十年の月日が流れましたが、今でも「あの時は本当に楽しかった」の言葉を頂きます。
そのたびに、誰かに喜んでもらえることの幸せが心に染みます。
この歳になるまで山に登り続け、花を楽しんできたことが、多くの困難を乗り切る心の支となっていたような気がします。
花を見ながら一歩ずつ歩を進めるような人生でした。
これからも同じやり方で、峠を越えてゆこうと思うのです。
黒岳のピークでそよ風に吹かれた後、黒岳の石室へ向かいました。
頂上から少し下った辺りで、エゾツメクサが清楚な花を咲かせていました。
ミヤマリンドウが上品な花を見せています。
エゾツメクサ ミヤマリンドウ
登山道の脇にタルマイソウ(イワブクロ)を見かけました。
しかし、多くの株は花を散らせ実を付けていました。
北海道の山は既に、花の季節を終えているのです。
タルマイソウ(イワブクロ)の花と実
チングルマやイワウメに花はありませんが、花が散り終えた後に、夫々の花を想い描くとき、山に登るとふいに顔を見せる、胸の奥底に潜む誰かが微笑みを返してくれます。
チングルマ イワウメ
暫く進んで振り返り、ミヤマハンノキの上で優しい曲線を描く黒岳の姿を眺めました。
黒岳の山容を確認できる場所は以外に少ないのです。
正面の谷の中に消え残った雪渓が見えました。
谷の下からレースを被せるように雲が湧き上がってきます。
気の早いウラシマツツジが紅葉を始めていました。
大雪山の夏は短く、秋は更に更に短いのです。
9月ともなれば、何時雪が降ってもおかしくはありません。
ウラシマツツジ
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