登山で思ったこと

山登りに関して、個人的に思ったことをアレコレ書いていきます。

中央アルプスの遭難事故をうけて

2013-07-31 22:55:56 | 日記
皆さんがご存知の通り、7月29日に中央アルプスで韓国人登山ツアー客が遭難し、残念ながら4人もの死者をだす事態となりました。遭難した関係者にはお悔やみ申し上げます。

山の遭難自体は決して珍しいことではないのですが、大量の遭難者を出して死者が4人にのぼったことと、外国人グループという特殊性が耳目を集める結果となりました。

韓国人グループの遭難事故は起きたばかりなのでまだ具体的にどのような状況下で遭難したのか詳細は待たなければなりませんが、現在のところ警察の談話や領事館の話としては死亡者は登山に向かない薄手のウェアを着ていたということです。

ただ、この警察発表(をそのまま流すマスコミも同様に)というもの、実に眉唾ものでして、2009年7月16日に起きたトムラウシの遭難事故でも装備が不適切であったと発表されましたし、近年では2012年に起きたゴールデンウィーク中に北九州市で医師をしていた登山者グループが北アルプスで6人全員死亡するという事故も装備がいい加減であったと公表されました。

しかし、ヤマケイなどが後追い調査をすると、少なくも二つの事例ではどの登山者もしっかりした装備をしており、中には最先端のレイヤリングに身を包んでいたとする報告もあったぐらいです。

そもそも、わざわざ外国である日本まで来て、山登りをするような人たちがいい加減な装備で山を登るのでしょうか?
また、何も調べないで海外の山に来るでしょうか?

富士山ならともかく、中央アルプスは本格的な山登りを志向とする人たちが集う場所ですし、登山に不適切な装備で登るというのは常識的に考えにくいように思われます。実際に警察発表には「前科」があるわけですから、今回も少し疑った目でみる必要がありそうです。

それと、こうした情報発信の背景にあるのは、装備に対する過剰な盲信ではないでしょうか。言い換えれば、装備さえきちんとしていれば遭難することはなかったとする考え方です。

最近読んだ(正確には立ち読みした)本の中に、事故をいかに防ぐのかを題材にした本があったのですが、山登りの雑誌に携わる人間がその専門家である著者を訪ね、その時にビーコンに関する話をしたそうです。その話がリスク管理の好例として紹介されていました。

近年ビーコンが普及するとともに、今までならば危険であった深雪の山道でも登山者が足を踏み入れるようになり、結果遭難者が増え、またそうした危険な場所は二次被害の可能性があるためになかなか救助に向かうことができない。こうした嘆くべき現状を外国人相手に講演したら同じ状況だと外国人からも同調されたそうです。

多くの人が口にするように、登山にちなむ装備品は日進月歩で進化し、その結果、今まで行けなかった場所も行けるようになりました。しかし、道具の進化は、人間を退化させてしまったかのように危険の感覚を鈍らせ、慎重さを奪ってしまったのではないでしょうか。

どんなに装備がしっかりしていようとも、遭難するときは遭難してしまうものです。どんなに装備が優れていても、それが自然に対する人間の限界なんだと重く受け止める必要があります。

韓国人グループは、ツアーで訪れたために、おそらくは日程の余裕はなく、撤退することは考えにくかったと思われます。トムラウシの遭難者事故にしても北九州の医師グループにしても、遠方からはるばる山登りに来たという点では、同様の状況でした。

撤退する勇気とは、あまりに聞き慣れた言葉ではありますが、じつは装備のようなハード面よりも物事を適切に判断するソフト面の方が重要ではないか。今回の事故は、そのように痛感させられた出来事でした。

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