池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(フランス語に訳してます)

春のディオニュゾス

2010-03-22 | レビュー/作曲

全国的に記録的な猛威を奮った暴風が、深夜我が家のスレート瓦を割った。瓦は5つの破片となって落下した。猛烈な揚力に耐えきれず砕けたのだろう。ディオニュソス的!
翌日ベランダ伝いに屋根に上り、破片をコンクリート用接着剤で張り合わせた。小さい方から接着したら大きな破片がはまらず、出かける予定があったので帰宅後、防塵のためマスクを着けて残りの破片をやすりで削り…

出かけたのは、中嶋敬彦退任記念最終講義コンサート・オペラ「ディオニュゾス」 。3月21日(日)15:00、東京藝術大学奏楽堂
Ume ■台本:中嶋敬彦(東京藝大音楽文化学音楽文芸教授)
■作曲・指揮:佐藤眞(東京藝大名誉教授)
■演出:直井研二(東京藝大助教授)
■歌手:坂本知亜紀(ソプラノ)、松平敬(バス)、鈴木准(テノール)、小野和彦(バス)、太田真紀(ソプラノ)、酒井雄一(バス)、宮里直樹(テノール)
■奏者:木ノ脇道元(フルート)、川上一道(クラリネット)、守屋剛志(ヴァイオリン)、丸山奏(ヴィオラ)、窪田亮(チェロ)、遠藤祐平(コントラバス)、平川加恵(ピアノ)、吉村七重(二十絃)、杵屋七三(三絃)、目等貴士(パーカション)、甘田一成(パーカッション)
■語り手:柳原和音

ディオニュソスに抱くイメージに反し、凪が舞台を支配した。
第一に、2人の米将校が登場するエピソードと、シンとヨシがピストルで決闘する場面以外、歌手は殆ど演技せず、譜面台を前に立ち稽古の状態だった。
かつ80パーセントは生のセリフで、ニーチェに拠る難解な箇所やドイツ語も含むセリフが延々と続く合間に、おもむろに短いアリアや間奏が挿入されただけ(楽団はピット内)。
然しながらその音楽は高尚と熟練の極み。
金属打楽器のスパークを受け、ハーモニクスの持続音に始まる弦のヒンデミット風の活力ある序曲の後は、考えてみればこの編成では当然だが、器楽は大抵ソロや二重奏の、時に奇抜な名人芸。
エクリチュールの基礎は作曲家が学生時代に感化されたシェーンベルグ風の渋いもので、妥協も虚飾も一切無い。

列挙するならコントラバスの弓で弦を叩く、琵琶のような奏法。
「タタケ タタケ カッパチケ」と自虐的に高揚する重唱を伴奏したのは活きの良い三味線。
「死はやすらかー」と反復されるアリアのモチーフをビオラの間奏が受け継ぐ。
弦と木管のユニゾン(ヘテロフォニーは排除される)による雅楽のような温かみ。
ヴァイオリンの官能的なグリッサンドや、4弦のスピッカートのアルペジオが半音階で上行しつつ加速するカプリッチョ。
ソプラノの反復音型が徐々に速くなる器楽的用法。
アカペラの重唱の終結音で、器楽が同じ長三和音から入るスリル。
ピアノは主に編成に無い金管の役を担ったが、終盤のソロ(指揮なし)はクラスター連打、駆け抜けるパッセージ等、作曲者自演を彷彿させる鮮やかさ。
終結部はティンパニー主題によるパッサカリア。トゥッティのトレモロ・グリッサンドと銅鑼がピリオドを打った。


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