静まりかえった深夜に耳を澄ますと、チッ、チッ・・という鳴き声が聞こえてくる。
カネタタキは、植込みの葉の陰に遠慮深げにすんでいるらしい。やみの中にあって、静寂を演出している。
”すずしき鉦(かね)をとをばかり・・たたきてやみぬ鉦たたき・・よべの嘆きをまたせよと・・
あとはこゑなき夜のくだち ”(三好達治)
夜のくだちは、夜が更けること。
沈吟という言葉がある。静かにくちずさむ、あるいは思いにふける、といった意味だろう。
カネタタキの声を聞いていると、沈吟・・という言葉が浮かんでくる。
「わが心 ひそかに聞ゆ鉦叩」(中村汀女)・・その単調な鳴き声は、心の内側によどむため息やつぶやき声と、とけあう・・
今日聴いたジャズ・・・
HOUSTON PERSON with BILL CHARLAP・・・「YOU TAUGHT MY HEART TO SING」
ブルース・フィーリングたっぷり、ソウル・ジャズ界を代表するテナー・サックスの巨匠、ヒューストン・パーソンと
洗練されたタッチで人気を誇るジャズ・ピアノ界の貴公子、ビル・シャーラップとのデュオアルバム。
全曲、穏やかでなごやかなダイアローグ。。二人の優しい対話が心地良く響く・・
濃厚な味わいを放ちながらも決して自己主張することなく、終始抑制されたテナーを聴かせる。シャーラップはさりげなくも
清明なピアノを聴かせる。テナーとピアノ・・意外な組み合わせながらもベテラン二人によって綴られるフレーズは実に見事。
疲れている時、静かな空間に身を置きたい時などに、そっと取り出して聴きたい一枚。
1・YOU TAUGHT MY HEART TO SING・・2・NAMELY YOU・・3・WHERE ARE YOU・・4・SWEET LORRAINE・・
5・IF I RULED THE WORLD・・6・S’WONDERFUL・・7・WHERE IS THE LOVE・・8・I WAS TELLING HER ABOUT YOU・・
9・DON’T FORGET THE BLUES・・10・I WONDER WHERE OUR LOVE HAS GONE・・
8はシャーラップのオリジナル、9はパーソンのオリジナル。タイトルからしてもどんなバラードもブルースにしてしまうパーソンの曲
らしい・・9。表題曲はマッコイの書いた曲、たしか邦題は ”心が歌う歌”じゃなかったかな?
マッコイ・タイナーのソロを思い出してしまう。ほんとにステキな曲だと思う。
秋の夜長にヴォリュームをさげて聴いてみよう・・・
2004年8月4日、録音・・