平成19年3月12日(月)
昭和28年(1953年)の今日は,詩人・伊東静雄の命日,行年46。『わがひとに與ふる哀歌』『夏花』などの詩集をのこした。日本浪漫派の流れにいる詩人である。
旧制中学の教師をしながら,創作に打ち込んだ。
『夏花』から私の好きな作品を。伊東が30歳のときの作。
八月の石にすがりて
八月の石にすがりて
さち多き蝶ぞ,いま,息たゆる。
わが運命(さだめ)を知りしのち,
たれかよくこの烈しき
夏の陽光のなかに生きむ。
運命? さなり,
あゝ われら自ら孤寂(こせき)なる発光体なり
白く外部世界なり。
見よや,太陽はかしこに
わづかにおのれがためにこそ
深く,美しき木陰をつくれ。
われも亦,
雪原に倒れふし, 飢ゑにかげりて
青みし狼の目を,
しばし夢みむ。
ちなみに伊東の忌日を「菜の花忌」ともいうのだが,今では司馬遼太郎の命日も同名として有名になってしまったので,個人的には伊東の方を別の名称にしたらと思う。たとえば「青狼忌」とか。