HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

詳細は売りにつながるか。

2016-02-24 09:38:20 | Weblog
 The FLAGが「商品ページから"購入したい"と思わせるには」というテーマで、各社のECサイトを独自に調査し、比較している。(http://theflag.jp/article/41810?ref=)

 それによると、 セレクトショップからファクトリーブランドまでの20サイトでは、 掲載する写真点数は各社で分かれている。アイテムによって異なるものの、平均10枚から15枚。概ね、メジャーなブランドほど、店舗展開をしているからか、点数は絞り気味だ。

 ただ、アーバンリサーチやシップスジェットブルーは、知名度、店舗展開があるにも関わらず、30枚以上の写真を掲載するなど、商品のディテールまで紹介して販促につなげようという狙いがうかがえる。

 操作、機能はスクロール、クリック&ホバーによる拡大程度。Webのメカニズム上、これが限界のようで各社とも大差はない。メーンのカットは各社ともモデルを起用し、着用させている。これが最近では物議を醸している。

 筆者はアパレルの撮影も数々手掛けてきたが、モデル撮影ではスタイリストに指示して、体型調整をするのは半ば常識だ。CMの撮影になると、ライティングよって起こるボタンのハイライトを嫌うディレクターもいて、ブランドの商品であっても付け替えが命じられることもある。

 Webサイト、ECではそこまでないと思いきや。モデルに着用時に「脇締めなどのサイズ調整でピン打ちを行っている」と、ある関係者がカミングアウトした。撮影の世界では当然のことだから、別に驚くまでもない。だが、現物商品を見ることができないECで、それを行うのはどうなのか。

 撮影でのサイズ調整をご存じない一般ユーザーは、モデル写真の「フィット感」で購入を決めた場合、実際に現物を着たときのギャップがあれば、裏切られた気持ちになるだろう。キャプションで小さく表示していても、購入希望者はそこまで細かく目を通さないし、単なる言い訳程度にしか映らない。

 現物を試着するわけではないので、商品を良く見せる施策は重要である。しかし、虚偽に近いような演出は、商売の信義に反するのではないか。

 その辺の線引きは、各社の裁量に任せられるようだが、モデル写真とは別にボディへの着せ替えや置撮りを加えていれば、購入者の信頼を損ねないと思う。みんながみんな、星の数やレビューを細かくチェックしていると限らない。それはアパレル側、EC事業者も織り込み済みのはずだから、なおさらである。

 一方、いろんな着こなし方を雑誌のように提案しているサイトもある。でも、これはイメージを訴求し、ブランドの世界観を作り上げたとの意図もあるだろう。

 だが、必ずしも購入希望者が知りたい情報ではないし、そこまで手間隙、コストをかけたからと言って販促につながるとは思えない。写真点数の豊富さ=情報量の多さが購入希望者にとって必ずしも有益ではないはずだ。消費者心理としてあまりに情報が多過ぎても、購入には決め手を欠く。

 全体のスタイルイメージやフィット感をメーンカットで伝え、サイズ、素材、色柄、混紡率などを詳細、拡大のカットでフォローする。ECの場合の写真は情報量よりも、「情報の適確さ」が重要ではないかと思う。

 次に素材表示&フィッティングサービスだ。これについては大半の事業者が、素材や洗濯方法をテキスト表示するのみで、「ヴァーチャルサイズ」や身長・着丈まで詳細に記しているところは、一部に止まる。

 EC最大の課題は、現物の商品を売場で「見て」「触って」「試着してみる」という行動ができないことだ。にも関わらず、ECがこれほど普及、浸透したことを考えると、購入希望者はこの3つの条件をそれほど重視しなくなっているのではないか。少なくともEC事業者はそう判断しているのかもしれない。

 素材は工業規格のルール上から商品への表示が義務づけられているが、消費者がそれをどこまで購入の選択肢にしているかである。

 昔、ウールマークのコピーに「触ってごらん、ウールだよ」があった。だが、これもきわめて主観的なものである。オンリー素材はもちろんだが、綿と麻、ウールとポリエステル、ウールとアクリル、ナイロンやポリウレタン、レーヨンなど混紡率で、感触は変わってくる。

 しかし、我々アパレルで仕事をして来た人間なら、素材にはすごく敏感になるし、後先のケアまで考える。しかし、それをECの利用者がどこまで重視しているかと言えば、いたって曖昧だろう。

 若者の中には、デニムなんかについては、凄くこだわる人がいる。しかし、ストレッチを利かせたときのポリエステルが2%なのか、5%なのかまでこだわってチェックしているとは思えない。

 それはあくまで穿いたときの主観で個人差があるからだ。素材、特に混紡率は個人、個人で受け取り方が違う。静電気にアレルギーな人もいるだろうし、さほど気にならない人もいる。ラミー系の麻素材のザラザラ感がチクチクするという人もいる。

 特に素材感は主観、個人差によって左右される。調査にあったように実際の「生地の厚さや光沢」「透け感」は目で確かめないといけないわけだが、Webの場合、写真とテキストで伝えることには限界がある。

 感触については、ナノユニバースはじめ多くが採用している、至ってアナログなバランス表示が限界だろう。「あり」「ややあり」「なし」とか、「厚手」「普通」「薄手」で伝えるものだ。

 「シンプルで洗練されたシルエット」「きわめて肌触りの良い生地」と言ったって、それも事業者側の感覚だから、購入希望者にとっての客観性にはなりえない。

 あくまで素材はあくまでルール上の延長線で記載する。混紡率も記載しないよりは、記載した方が良いというくらいではないだろうか。写真同様に素材や感触の説明は、情報が多いからと買う気にはならないと思う。それが購入に絶対条件にはならないということである。

 また、PCとスマホでも視認性の問題から、求める情報量は変わってくる。きめ細かく表示したから、必ずしも販売につながるとは思えない。どの程度に抑えるか、どの程度まで広げるかは、EC事業者のビジネスに対する「意思」の差ではないかと思う。

 サイズは着丈、身幅、袖丈(裄丈)、ウエスト、股上、股下、わたり幅、裾幅などを記載するのは、ECでは一般的になっている。

 進んでいるのがフィッティングサービスだ。手持ちの服のサイズを入力すると、購入を検討しているアイテムとのサイズ比較ができたり、自分の身長をベースに、アイテムの着丈がイメージしやすくなるガイドまで掲載される。

 ただ、これには問題もある。お客がどこまで自分の体型、リアルなサイズを知っているかと言えば、これがいたってアバウトだ。急場に自分自身で採寸することは不可能である。サイトのサイズ表示では、自分のだいたいのサイズと照らし合わせ、大凡のフィット感を想像するに過ぎない。

 手持ち服でフィット感のいいものと比較するのが良いのだろうが、長く着たものほど生地の伸びもある。特にパンツなんかはそうだ。またレザーは長く着るほどに、身体に馴染んでいく。サイズ表示にテキストを加えたくらいではフィット感は想像できない。

 だから、フィッティングでは、自分の今のサイズをどう知って、商品と照らし合わせるか。そちらを何とかすることが課題のようにも思える。
 
 以前にも書いたが、スマホやデジタルカメラで撮影した自分の画像をメールで送ると、首周りや腰回りなどなど詳細なオーダーサイズを教えてくれる無料の「自動採寸サービス」を始めた事業者がいる。

 正確なサイズがわかれば、それは購入希望者にとってはメリットだし、EC事業者も在庫商品とフィッティングをしやすくなるのは確かだ。ここまで来ればECという小売りを超えて、アパレルの範疇に入ってしまう。また購入規模者がここまでを求めるのかどうか。それについても温度差はあるだろう。

 しかし、すでにシステムが開発されているのだし、それに基づいてオーダーシャツの製造サービスが始まっている。

 遅かれ早かれ大手のEC事業者が、このようなサービスがページ上でできるようにするかもしれない。そうなった時に中小の事業者はどう考えるかである。これも見極めは意思の問題になるかもしれない。

 ECが飽和状態に近づき、商品を売るためには、いかにページ上の情報加工を工夫し、訴求力をあげた上で、それをサービスにつなげられるか。企業規模やブランドバリュで、できる内容は変わってくる。サービスの充実は重要だが、情報量が多いからといって購入に結びつくとは思えない。

 先日、某通販サイトのCMの表現がネットに取り上げられていた。カップルが靴店を訪れ、女性が好きな靴を見つけると、その場で購入せず堂々と某サイトで購入すると宣言するという内容だ。

 こうしたお客として悪びれもしない、店に対する配慮も仁義もない行為が一部の反感を買ったのだろう。でも、制作したCMクリエーターとしては、今では当たり前の行為をそのまま再現しただけである。

 それがJAROのレギュレーションや代理店の内規に触れる表現だったかどうかはわからない。

 ただ、現実的には家電量販店の売場でも、タブレットPCやスマホでネット通販の価格を見せて、値段交渉するのは当たり前になっている。それに応えたことで、某企業が赤字に転落したわけではないだろうが、情報技術社会、デジタルライフの中で、それだけ消費者は賢くなっている=我が儘なのは事実だ。

 ECサイトのページづくりも、現状のシステム、プログラム上で小差はあっても、多くが壁にぶつかっているのではないか。ECビジネス全体で言えば、事業者による新品の販売から、個人が中古品を売買するマーケットに期待がかかっているように感じる。

 従来はオークションが主体だったから、いたって簡単なフォーマットに情報をアップする単純なものだった。

 先行するユーズドサイトは、写真使用のサービスを充実させており、ページも利用者には簡便で使いやすい操作方法にして、情報を充実させるようにしている。購入希望者にとっても、利用者が増えて商品が充実したサイトほど、閲覧する機会が増えるのは言うまでもない。

 プロパー販売でしのぎを削ったECサイトのページづくりは、限界値に達したノウハウが一般消費者が中古品を売買するページに応用されていくのだと思う。

 それにしても新しいシステム、プログラムが開発されるまで、サイトページの機能はしばらくは足踏み状態が続くと思う。
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