亜季の思い出しノート

日々頭に浮かびつつも日常に紛れて,いつのまにか消えていく「よしなしごと」を,後から思い出しつつ書き留めているブログです。

新世界(1~5)/長野まゆみ

2007-02-11 16:20:43 | 本(読書)
【評価:梅】

 長い割に内容のない話だった。残念だが,さっぱり面白くなかった。「それで何だったの?」というのが正直な感想だ。
 全編を通して謎説きのような仕掛け(仕組み)がされているが,小説的な意図(たくらみ)というよりは,単純にストーリーの都合にしか感じられなかった。何というか「思わせぶり」が過ぎるように思う。そしてそのせいで,読んでいても見通しの悪い印象が際立っていて,私を(あるいは現実を)巻き込むような瞬間は全くなかった。
 また,自身の存在に対して悩んでいるらしい登場人物達に対しても,その各々の悩みに対しても,最後まで距離感を感じざるを得なかった。というよりも,シュイでもイオでもソレンセンでもジャウでも,登場人物以上の像は持ち得なかった。共有できるものは何処にもなかった。

 それからもう一つ,恩寵の注入(アンフュ―ジョン)とか蛤蜜(ハミ)とか余暇(レク)いった言葉で何度も出てくるが,いわゆるセックスを連想させる部分が多々あるが,その退廃的な感じには辟易した。作者としてはその使い分けに階級差による悲哀も含めた様々な意味合いがあるのだろうだけれど,文章からはそんなものはほとんど感じられず,端的に言って悪趣味なだけだった。

 やれやれ。これを書いて,何がしたかったのかなあ。何が得られたのかなあ。無駄にしか思えない。

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