およそ新聞紙の運命などというもの、地域の小中学校の廃品回収に利用されるぐらいが関の山である。そういう運命を辿る新聞にも良い記事というものがままある。今日は静岡新聞『論壇』より『佐藤隆三』氏の記事を写し取っておきたい。・・・その見識に敬意を表するものであります。
参院選と首相のリーダーシップ
人事の任命過程に欠陥
衆院選の三週間前にまたもや「政治と金」の問題が安倍政権を直撃している。つい一週間ほど前、九間発言で本人の辞任に追い込まれた後遺症は未だ消えていない。安倍総理に任命責任はあるものの、閣僚および主要人事の任命過程そのものに重大な制度的欠陥があると言わざるを得ない。
安倍政権はこの九ヶ月間に本間前税調会長、佐田前行革担当相、松岡前農水相と、既に四人の主要人事の任命でミソをつけている。
首相が論功行賞的仲良しクラブ人事を行ったツケだ、との批判があるが問題はもっと深いところにある。ここで、米国で長年採用されている閣僚及び主要人事の制度的慣行が日本でも大いに役立つはずである。
米国ほど論功行賞人事が行われている国も少ないだろう。一つのポストを担当する能力を持つ人間はゴマンといる。大統領がここで選ぶのは友人、サポーターとまさに論功行賞的人材である(シェーファー駐日米大使はブッシュ大統領が持っていた球団テキサス・レンジャーズのパートナーだった)。
この種の人事を行っても背後関係をチェックする機能を持つシステムが米国には備わっている。民主・共和の別なく弁護士や探偵、時にはFBIを交えたグループが、バックグラウンド・チェックと称して徹底的に財産、交友関係、過去の発言等所謂スネのキズを調査するのである。米国であったら安倍首相が失った前掲諸氏と赤城農水相は、任命以前に問題点が曝されてそのポストに就くことはなかったであろう。
日本は今、与野党を問わず『改革』を叫んでいるが、こうした制度的改革には一切手をつけていない。恐らく野党議員の中にも、叩けば出るホコリを抱えている人が少なくないだろう。それにしても、首相は気の毒だ、との見方もあるが、頑強に庇い続けることがリーダーシップの発揮、と勘違いをしているフシがある。マックス・ウェーバーは「進むことと退くことの冷静な決断力こそリーダーに不可欠な資質」としている。
前進か後退かの決断力
有権者は一国の首相に完全な人間を期待しているわけではない。だが、「ナントカ還元水」の迷答弁を一歩も退かずに擁護する首相の姿勢よりも、即刻罷免または辞任を勧告することで自らの人を見る眼の誤りを潔(いさぎよ)く認めたリーダーシップを国民に示せたはずだ。
各世論調査が示している自民党離れの原因の一つは、こうした安倍人事の危うさと前進あるのみに見る真のリーダーシップの欠如であろう。そうはいっても、敵矢に対する野党側の対応にも有権者は不安をもっているに違いない。
敵矢ではない年金問題を選挙の争点とした民主側の攻撃に首相は当初あまり強い反応を示さなかった。長妻議員が二月に五万件の年金番号の問題点を指摘した際、首相は国民の不安をかきたてる発言、と非難しただけだった。こうした後退姿勢が年金問題を大きくした。むしろここでは果敢に前進して自民党自身が問題解決の主導権を握るべきだった。
ヤンキーズのヨギ・べラ名捕手の「野球は九回の裏が終わるまで分からない」ではないが、七月二十九日の開票結果は最後まで未定だ。今後の首相のマックス・ウェーバー的リーダーシップ発揮次第で予想が覆る可能性もある。(以上全文)
読むほどに、何かその~説得させられる文章である。私などは、失われた戦後60年の空白を足早に取り戻そうと安倍首相は健気に努力していると素直に受け取っているのですが、本当に彼の人事センスは稚拙ではないかと疑われてしかるべきだと思います。
少なくとも一国の首相といえども人間である以上、『私も間違う可能性がある』という人としての『前提条件』を首相自ら受け入れるべきであると思います。・・・
こういう朴念仁ともいえる『自己の人事への責任の取り方=頑な態度』は、戦後の政界に厳として君臨したご先祖を崇拝するあまり、一国の首相たるもの自らの過ちを認めること相成らずという信仰が精神を支配しているのだと思います。・・・・
とにかく安倍首相には、この『苔の一念』から解脱したところに『期待され愛される首相像がある』ということに大至急気付いてもらいたいものです。・・・・その志は『真直ぐ日本の行く道を見ている』だけに、ここでズッコケテてしまっては実も蓋も無いのですぞ!。
参院選と首相のリーダーシップ
人事の任命過程に欠陥
衆院選の三週間前にまたもや「政治と金」の問題が安倍政権を直撃している。つい一週間ほど前、九間発言で本人の辞任に追い込まれた後遺症は未だ消えていない。安倍総理に任命責任はあるものの、閣僚および主要人事の任命過程そのものに重大な制度的欠陥があると言わざるを得ない。
安倍政権はこの九ヶ月間に本間前税調会長、佐田前行革担当相、松岡前農水相と、既に四人の主要人事の任命でミソをつけている。
首相が論功行賞的仲良しクラブ人事を行ったツケだ、との批判があるが問題はもっと深いところにある。ここで、米国で長年採用されている閣僚及び主要人事の制度的慣行が日本でも大いに役立つはずである。
米国ほど論功行賞人事が行われている国も少ないだろう。一つのポストを担当する能力を持つ人間はゴマンといる。大統領がここで選ぶのは友人、サポーターとまさに論功行賞的人材である(シェーファー駐日米大使はブッシュ大統領が持っていた球団テキサス・レンジャーズのパートナーだった)。
この種の人事を行っても背後関係をチェックする機能を持つシステムが米国には備わっている。民主・共和の別なく弁護士や探偵、時にはFBIを交えたグループが、バックグラウンド・チェックと称して徹底的に財産、交友関係、過去の発言等所謂スネのキズを調査するのである。米国であったら安倍首相が失った前掲諸氏と赤城農水相は、任命以前に問題点が曝されてそのポストに就くことはなかったであろう。
日本は今、与野党を問わず『改革』を叫んでいるが、こうした制度的改革には一切手をつけていない。恐らく野党議員の中にも、叩けば出るホコリを抱えている人が少なくないだろう。それにしても、首相は気の毒だ、との見方もあるが、頑強に庇い続けることがリーダーシップの発揮、と勘違いをしているフシがある。マックス・ウェーバーは「進むことと退くことの冷静な決断力こそリーダーに不可欠な資質」としている。
前進か後退かの決断力
有権者は一国の首相に完全な人間を期待しているわけではない。だが、「ナントカ還元水」の迷答弁を一歩も退かずに擁護する首相の姿勢よりも、即刻罷免または辞任を勧告することで自らの人を見る眼の誤りを潔(いさぎよ)く認めたリーダーシップを国民に示せたはずだ。
各世論調査が示している自民党離れの原因の一つは、こうした安倍人事の危うさと前進あるのみに見る真のリーダーシップの欠如であろう。そうはいっても、敵矢に対する野党側の対応にも有権者は不安をもっているに違いない。
敵矢ではない年金問題を選挙の争点とした民主側の攻撃に首相は当初あまり強い反応を示さなかった。長妻議員が二月に五万件の年金番号の問題点を指摘した際、首相は国民の不安をかきたてる発言、と非難しただけだった。こうした後退姿勢が年金問題を大きくした。むしろここでは果敢に前進して自民党自身が問題解決の主導権を握るべきだった。
ヤンキーズのヨギ・べラ名捕手の「野球は九回の裏が終わるまで分からない」ではないが、七月二十九日の開票結果は最後まで未定だ。今後の首相のマックス・ウェーバー的リーダーシップ発揮次第で予想が覆る可能性もある。(以上全文)
読むほどに、何かその~説得させられる文章である。私などは、失われた戦後60年の空白を足早に取り戻そうと安倍首相は健気に努力していると素直に受け取っているのですが、本当に彼の人事センスは稚拙ではないかと疑われてしかるべきだと思います。
少なくとも一国の首相といえども人間である以上、『私も間違う可能性がある』という人としての『前提条件』を首相自ら受け入れるべきであると思います。・・・
こういう朴念仁ともいえる『自己の人事への責任の取り方=頑な態度』は、戦後の政界に厳として君臨したご先祖を崇拝するあまり、一国の首相たるもの自らの過ちを認めること相成らずという信仰が精神を支配しているのだと思います。・・・・
とにかく安倍首相には、この『苔の一念』から解脱したところに『期待され愛される首相像がある』ということに大至急気付いてもらいたいものです。・・・・その志は『真直ぐ日本の行く道を見ている』だけに、ここでズッコケテてしまっては実も蓋も無いのですぞ!。