仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「禁じられた楽園」 恩田陸

2007-05-15 10:06:20 | 讀書録(ミステリ)
「禁じられた楽園」 恩田陸
お薦め度:☆☆☆+α /
2007年5月1日讀了


「自然は藝術を模倣する」と云つたのは、あれは誰だつたか・・・
オスカー・ワイルドだつたかな?
この作品を讀んで思ひ出したのは、この言葉だつた。

若き天才藝術家・烏山響一。
彼が建築學を學ぶために大學に入り直した。
その大學に通ふ、平口捷は、何故か烏山響一に目をつけられる。
捷の姉・香織は、烏山響一が美術を擔當した映畫をちらりと見ただけで、捷に響一と關はり合ひにならないはうがよいと云ふ。
「なんだかとても不吉な人だわ」

烏山響一に目をつけられたもう一人は、美大生の香月律子。
バイト先の店に來た響一が、突然、律子のアトリエに現はれる。
そして、いま作つたばかりの作品を見て、「あんたの本質はそつちだね」と云ふのだつた。

大手廣告代理店の營業マン、黒瀬淳が失踪する。
淳の婚約者・久野夏海と、淳の大學時代の友人・星野和繁は、その行方を探り始める。

響一から、捷と律子に招待状が來た。
響一の叔父・烏山彩城が熊野にプライベートなギャラリーを造つたので、内輪のパーティーに招待したいと云ふのだ。
二人はそれぞれに迷ひながらも熊野へと向かつた。

失踪した淳らしき人物が、響一の映像作品「カーテン」に寫つてゐる。
「カーテン」のロケ地は熊野らしい。
夏海と和繁は淳を搜しに熊野に向かつた。

かうして、すべてが熊野に收斂されてゆく。
そして、その熊野には、烏山彩城が造つたとされる巨大な野外美術館がある。
そこでは、自然そのものが藝術作品になつてゐた。

捷と律子はその藝術作品の中をさまよふ。
そして、最後に辿り着いたところで見たものは・・・


著者はあとがきで、
「現代のおばけ屋敷&『パノラマ島奇談』を書かうと思つた」
と書いてゐる。
現實がアートの中に飮みこまれる、そんな世界だらう。

實に奇妙な味はひの作品だつたが、恩田陸にしては珍しくオチをつけてゐたのが惜しまれる。
「理屈なんて要らない」といふのが恩田陸の眞骨頂だと思つてゐるので・・・



2007年5月1日、新穗高温泉「ホテル穗高」にて讀了



禁じられた楽園

徳間書店

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