仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「手紙」 東野圭吾

2006-12-30 19:09:38 | 讀書録(一般)
お薦め度:☆☆☆☆ /
2006年11月10日読了


弟が大學に進學するための費用をなんとかして作りたいと働く兄。
しかし、ハードな仕事で腰を傷めてしまひ、日々の暮しを支へるだけで精一杯。
魔が差したといふのだらう。
以前に引つ越し屋の仕事で行つたことのある裕福な家に空き巣に入つたのだが、そこには老婦人がゐて、その老婦人を殺してしまつた。

弟はその後の人生の至る所で、兄が殺人者であることによつて不利益を被る。
さうした經驗を重ねるに從つて、兄から毎月送られてくる手紙が次第に、弟にとつて不愉快なものに思はれてくる。
そして、弟は結婚し家族が出來ると、つひに兄に手紙を出すのだ。
「この手紙は私から貴方に送る最後の書簡です。また今後は、貴方からの郵便物は一切受け取りを拒否いたします。」

綺麗事ではなく、實際にさういふ境遇になれば、弟の決斷は非難することは出來ないだらう。
さうは思ひながらも、わりきれない、哀しい思ひに捉はれてしまふ。

弟は兄が殺した老婦人の息子のもとへ謝罪に行く。
氣にかかりながらも、兄の行爲を詫びることになかなか踏み切れなかつたのだが、兄の事件を自分の中で清算するためには避けて通れないのだつた。
そして、弟は、そこで兄が被害者の息子に出した手紙を見せられる。
その最後の手紙を讀んで、弟が取つた行動は・・・

さすがに東野圭吾である。
讀者のわりきれない思ひをそのまま放置はしない。
ジョン・レノンの「イマジン」のイントロがいつまでも流れてゐる。
やはり、人といふものはかうであつて欲しい。


手紙

文藝春秋

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