深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2022年春アニメの感想と評価 2

2022-07-10 07:45:23 | 趣味人的レビュー

新型コロナで制作が遅れていた『可愛いだけじゃない式守さん』が無事最終回を迎えたので、2022年春期に見た15本のアニメのうち、この「2」は6/25以降に終了したものと7月以降も放送が続く7本について感想と評価をアップする。並びは五十音順で評価はA~E。

なお「1」に書いたことの繰り返しになるが、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、仮に多少作画崩壊があったとしても基本スルーである。

『アオアシ』放送継続中

サッカーのユースチームを舞台にした作品。愛媛の中学のサッカー部でFWだった主人公、青井葦人(あしと)はJリーグのユースチーム監督に見出され、〈セレクション〉を突破し、中学卒業と同時に上京してユースチームへの入団を果たす。だが、そこで彼を待っていたものは、自分がサッカーの基本を何も分かっていないという現実だった…。
将来、プロのサッカー選手になるために彼らが所属するユースチームの世界は、いわゆる「部活動もの」とは違う独特の緊張感があるが、基本骨格は「部活動もの」。私はサッカー(というかスポーツ全般)に興味がないので戦術的な部分などはよく分からないが、青春群像劇+主人公の成長物語という「部活動もの」の王道スト-リーは、つい見てしまう強さがある。その反面、そういったド定番を超えた「この作品でしか描けない」部分がまだ見えない。(もしかしたら、葦人の持つ"EAGLE EYE"がそれになるのだろうか?)
評価はC~C+。

『可愛いだけじゃない式守さん』

行く先々で不幸を引き寄せてしまう不幸体質の男子高生、和泉君と、彼を守る“男前”の彼女、式守さんによる学園ラブコメ。
ラブコメ作品として、設定、キャラデザ、ストーリー、演出、演技に何か突出したものがあるわけではないが、非常にバランスのいい作品だと思う。キャラクタの可愛らしさに寄りかかるのでもなく、変なエロで目を引くのでもなく、絵とストーリーでちゃんと面白い作品にしようという制作会社(動画工房)の姿勢が感じられて、毎回見ていて満足感があった。登場人物では狼谷(かみや)さんのキャラが秀逸で、第8話で描かれる文化祭の日の学校の屋上での式守さんと狼谷さんの2人のシーンは、これだけでこのアニメを見ていてよかったと思えるものだった。
上に述べたように安定して面白かった作品で、評価はB~B+。

『境界戦機』2期

4つの世界主要経済圏によって分割統治されることになった日本を舞台に、そんな隷属状態から脱しようとする日本人パルチザンたちの戦いを描く。
これはもちろん制作側も予期していなかったことだと思うが、この作品の放送と重なるように、ロシアがウクライナに軍事侵攻してその領土を力ずくで削り取るという、地域こそ違うがまるでこの作品が現実化したような事態が起こっている。そういう意味では、この作品は確かに現実の世界と地続きのところにあったわけで、もっと話題になってもよさそうなのに、その気配すらない(私が知らないだけかもしれないが)。
例えば神聖ブリタニア帝国に支配された日本を舞台とした『Code Geass』が全50話を要したことを考えると、それより遥かに複雑な設定の『境界戦機』は、普通に考えれば少なくとも200話くらいかけなければキチンとしたストーリーは描けないと思うのだが、それを上手く政治劇に持ち込んで全25話にまとめた。そういうストーリー展開は悪くなかったと思う。ただ最終回まで見た時、何だか現実感のないペラペラの書き割りを見せられたようなむなしさが残った。
評価はD+~C-。

『サマータイムレンダ』放送継続中

和歌山県沖の小島を舞台にしたSFホラー・サスペンス。かなり大風呂敷を広げた話ではあるが、『処刑少女の生きる道(バージンロード)』とともに今期、最も楽しめた作品だった…と終わったように書いているが、まだ後半が残っている。「ジャンプ+」に連載されていたという原作は完結しているので、続く夏期で物語の最後まで描かれる予定。
『サマータイムレンダ』はミステリ的な要素もあるので、ここで粗筋を紹介することはしないが、「ミステリ読み」を自認する私として、多くのミステリが「魅力的な謎」を提示できても「魅力的な解決」を提示できていないのに対して、この作品はそれができていることを評価したい(もちろん、これは純粋なミステリではなくSFホラー・サスペンスだが、そこを割り引いてもその点は十分評価に値する)。それにしても、まさか物語が『妖怪ハンター』になってしまうとは(そういえば諸星大二郎の『妖怪ハンター』も「ジャンプ」連載だったっけ)! 『妖怪ハンター』のうちの「黒い探究者」、「死人(しびと)帰り」、「ヒトニグサ」、「闇の客人(まろうど)」、「蟻地獄」を融合させると『サマータイムレンダ』になりそうな感じ。そういう意味では、これは『妖怪ハンター』の異形の続編なのだ。
前半の評価はB+~A-。果たして後半はどうなる?

『SPY×FAMILY』1期

MAPPAとCloverWorksという、今、日本でトップクラスのアニメ制作会社2社がタッグを組んで作っている作品。東西の大国が対立する世界で、伝説のスパイが新たな任務のために作った疑似家族は、図らずも娘役は人の心を読む能力を持ったエスパー、妻役は凄腕の殺し屋だった…ということから展開するシチュエーション・コメディ。
ネットでは外国で大人気だと伝えられていて、それは理解できる。日本のアニメはかなりあからさまな裸や性的な描写があったり、主要な登場人物が突然死んでしまったりと、サービス過剰だったり衝撃展開があったりするものが少なくないが、『SPY×FAMILY』にはそうしたことがなく、家族揃って安心して見られる作品になっているから。なので、このアニメ見ながらずっと「これって昔なら夜7時台に放送するような内容だよな」と思っていた。といっても、別に子供向けアニメを揶揄するつもりはない。ただ、これは私が見たいと思う作品ではなかった。
途中切りせず頑張って最後まで見たものの、もう流し見で十分というのが正直な感想だ。スパイだ殺し屋だという要素はあるが、単なる味付け以上のものではない。過去には暗殺者やスパイものなら例えば『アカメが斬る』や『Princess Principale』、隠し事を抱えた(疑似)家族によるドタバタ劇なら『ハッピーシュガーライフ』や『かくしごと』という作品があって、私にはどちらも『SPY×FAMILY』よりずっと面白かった。
コメディということでは、シチュエーション・コメディはその名の通りシチュエーション(状況設定)がキモで、その点、この作品の疑似家族の構成は完璧に近い。この設定なら、あとは何を描いても面白い…はずで、実際、面白い回もあるが、思ったほど突出した面白さは感じられない。それは作者がこの設定を上手く使えてない(とにかく使い方がワンパターンすぎる)ため、無理に面白くしようと「余計なこと」をしてしまっているためだ(第10話「ドッジボール大作戦」などは、その最たる例)。そうしたことは『鬼滅の刃』などにも言え、「ジャンプ」マンガの悪しき伝統かもしれないが、コメディなのに面白くないのは致命的である。
アニメーションは悪くないが、コメディとして微妙でストーリーにも魅力を感じられないため、評価はせいぜいD+~C-といったところ。エスパーの娘、アーニャの可愛らしさと種崎敦美の演技の凄さは買うものの、私にはそれだけで2期までつき合うのは無理(この作品は秋期に2期が放送される)。

『薔薇王の葬列』後半

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、平安時代末期から鎌倉時代初期の残酷で陰惨な権力闘争が描かれるが、薔薇戦争の時代のイングランドもそれに引けを取らない。前半は白薔薇のヨークが赤薔薇のランカスターを打ち破り、主人公であるリチャード・プランタジネットの兄、エドワードが王座に就くまでが描かれた。2期ではリチャードが、その半身たるバッキンガム公とともに、奸計を駆使して2人の兄、エドワードをジョージ、そしてエドワードの外戚たちを討ち滅ぼしてリチャード3世へと成り上がり、そしてそれが終焉を迎えるまでが描かれる。
シェイクスピアの戯曲『ヘンリー6世』、『リチャード3世』を原案にしているだけあって、ストーリーの面白さは折り紙付きで、絵の動かない紙芝居のようなアニメでも、もはや全く気にならない(ストーリーという点だけで見れば今期No.1と言っても過言ではないだろう)。特にリチャードとバッキンガムの最後の邂逅と別離が描かれる第22話(話数は1期からの通し)は文句なしの神回で、ラストで見せたバッキンガムの表情はちょっと忘れられない。それだけに、名だたるアニメYouTuberたちが、この作品をレビューで取り上げないのが残念でならない(もっとも自称アニオタでも、アニメを萌え要素や作画崩壊してないかどうかでしか評価できないような人では、この作品を評価するのは無理な話だろうけど)。
なお、シェイクスピアの『リチャード3世』の中の有名なセリフ「馬を、馬を! 王国でも何でもくれてやる!」は『薔薇王の葬列』には出てこない。それは『リチャード3世』と『薔薇王の葬列』では、リチャード3世のキャラクタが全く違うものになっているためで、その辺を比較してみるのも興味深い。
前半はアニメーションがあまりにも省エネゆえC~C+と評価したが、人間ドラマとして更にダークさと深みが増した2期はA-をつけよう。

『魔法使い黎明期』

かつて魔女、魔法使いと人間たちとの激しい戦争があり、それが落ち着いたとはいえいまだ不穏な空気が漂う世界で、見習い魔法使いたちが遭遇する試練とは?
この作品は2017年春期に放送され、私も見ていた『ゼロから始める魔法の書』(←『リゼロ』じゃないよ!)の続編だが、『ゼロから~』とはちょっと複雑な関係にある。アニメ『ゼロから~』は同名のラノベの第1巻をアニメ化したもので、残りはアニメ化されなかった。そしてこの『魔法使い黎明期』は、ラノベ『ゼロから~』最終巻からの同名の続編をアニメ化したものである。なので、『魔法使い黎明期』にはアニメ『ゼロから~』の登場人物がそのまま成長した姿で出てくる。とはいえアニメやラノベの『ゼロから~』を知らないと楽しめないわけではない。この作品は『ゼロから~』を知っているからこそ楽しめる部分と、逆にアニメ『ゼロから~』を知らないからこそ楽しめる部分があって、どちらの視聴者にも配慮した作りになっているのだ。
よくある異世界もの、と言ってしまえばその通りだが、『ゼロから~』という分厚い前段に支えられていることもあって、薄っぺらな感じはない。キャラクタそれぞれが抱える暗い過去もしっかりと描かれ、ほのぼのとした中にもかなり残酷でエグい部分や、かなりエチエチな部分もあったりと、大人向けの作品でもある。
多くのアニメYouTuberからは低い評価しか得られていないが、逆に私はしっかりとした成長物語になっている点を評価して、B~B+をつけたい。


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