深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

少女都市からの呼び声を求めて芝居砦・満点星に行く

2018-03-28 22:43:48 | 趣味人的レビュー

手術台に横たわる男の名は田口。彼の体内には奇形嚢腫があって、親友の有沢、そして有沢のフィアンセであるビン子が見守る中、今まさにそれが摘出されようとしていた。執刀医からこの奇形嚢腫を生かすか殺すかと問われ悩む有沢。その時、手術台の田口が突然、目を開き「彼女に聞いてきます」と言って旅立つ。そこは生まれることのなかった彼の妹、雪子の暮らす異世界だった──。


唐十郎(から じゅうろう)が現実と幻想と虚構を幾重にも重ねて紡ぎ出す『少女都市からの呼び声』。状況劇場で若衆公演のために書き下ろされ、今は金守珍(キム スジン)に引き継がれて、彼の主宰する劇団、新宿梁山泊の代表作となったこの作品が劇団創立30周年記念公演として再演されることになり、東中野にある芝居砦・満点星に見に行ってきた。

芝居砦・満点星はオフィスに喫茶室、劇場を備えた新宿梁山泊の拠点だが、あるのは古いが普通に人が住んでいるマンションの中で、地下2階でありながら地上1階という不可思議な構造をしている。

何度か行っているしチラシにも地図があったので迷いはしなかったが、以前は辻々に「こっち」と矢印の入った立て看が出ていたのが一つもなく、当のマンションの入り口にすらポスター1枚貼られてなくて、「え、もしかして場所が移った!?」とちょっと焦った(こういう劇団の公演は雑居ビルの地下空間や廃業した銭湯など普通じゃない場所が劇場になっていることがあって、探し当てるのに苦労することが少なくない)。


──その世界で雪子はガラス工場に務めていて、上司である主任と結婚することになっていたが、その主任、フランケ醜態博士は雪子のワギナをガラス製のものに改造しつつあった。彼の脳裏をよぎるのは、満州で彼一人を置いて「オテナの塔」を目指して姿を消した連隊の姿だ。田口は妹がガラスの女に変えられようとしていることを知って驚き、何とかそれを止めさせようとするが、一方、病院ではビン子が有田と田口との関係、というより有田と奇形嚢腫(=雪子)との関係にただならぬものを感じ、雪子が現実世界に生まれ出るのを阻止しようとする。そして、その先には悲痛な結末が待っていた!


私は『少女都市からの呼び声』を、一度目は下町唐座(今の唐組の前身)の旗揚げ公演、二度目は新宿梁山泊による新人たちver.とベテランたちver.の連続公演のうちの新人たちver.で見ていて、今回が三度目だ。唐十郎の書く芝居は現実と妄想とが地続きになっていて、しかもその妄想は時として現実よりも魅惑的で、ヒリヒリするような危険な躍動感に満ちている。だから気がつくと妄想の世界に半身を取られてしまっているのだが、それはむしろ甘美な体験でもある。加えて今回の演出はとても叙情性が強く、以前見た『少女都市~』とはかなり違って見えた。

途中、柱時計が鳴り響くシーンが二回あったが、そこでなぜか夢野久作の『ドグラ・マグラ』の冒頭と最後の時計の音を思い出してしまった。『ドグラ・マグラ』では冒頭と最後の時計の音は実は同じもので、それによって物語全体が終わりのない円環構造をしていることがわかる仕組みになっている。では『少女都市~』の中の時計の音は…?

新宿梁山泊の舞台と芝居砦・満点星の雰囲気がわかる動画あったので貼っておく(『少女都市からの呼び声』ではなく『吸血姫』から。これも見に行ったな~)


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