政治・経済に関する雑記

なるべく独自の視点で、簡潔・公平に書きたいと思っています。

輸出戻し税で大企業が儲けているのか

2010-06-23 09:56:58 | 税制・補助金
消費税と海外取引の関係を調べてみたら、インターネットでは輸出戻し税がなかなかホットに議論されていることを知った。そこでまずはこれについて考えてみた。

輸出戻し税で大企業が儲かりすぎているという議論が圧倒的だ。だが冷静な議論に限ると輸出戻し税は必要だという意見も多い。本当はどうなのか。

私が理解したところでは、輸出戻し税で儲けられるのは、自国の消費税率(付加価値税)が相手国のそれより高い場合に限られる。消費税の低い日本の輸出企業・大企業は、輸出戻し税で儲けているというより、その程度では足りなくてむしろ損をしている

具体例で考えよう。税別価格60で仕入れた商品を税別価格100で日本国内に販売した場合、その会社は40×5%=2の消費税を払う。これに対して、60で仕入れた商品を100で輸出すると、仕入にかかる60×5%=3の消費税が戻ってくるが、輸出先で100×5%=5の消費税を払うので、結局、差し引き2の消費税を払うことになる。国内販売でも輸出でも、支払う消費税は同額だ。

だが、これは輸出先の消費税が日本と同じ5%だった場合である。普通外国ではもっと高く、たとえば15%くらいあるだろう。そうすると合計の消費税は-3+100×15%=12となり、輸出での負担は国内販売の6倍となる。

(輸出先での消費税は輸出企業ではなく外国の輸入業者が払うのだから輸出企業の負担ではないとの異論があるかもしれないが、そうではない。消費税を実際に納税するのがお店であるからといって、消費者は消費税を負担していないとはいえないのと同じである。取引にかかる税を当事者のどちらが負担しているか論じても無意味だ。)

輸出先の国内で同様の商品を仕入れて販売する外国企業はどうか。その企業が税別価格60で仕入れた商品を税別価格100で国内販売すると、40×15%=6の消費税を払うことになるだろう。これと比べても日本からの輸出には2倍の消費税が課されている。

最後にその国の外国企業が同じ製品を日本に輸出することを考える。輸出戻し税が60×15%=9還付され、日本で支払う消費税が100×5%=5なので、差し引き4の消費税を貰えるだろう。これなら本当に儲かっている!(だから実際には、消費税が高い国では輸出戻し税を全額は認めていないこともある。)

以上は輸出先の消費税課税制度が日本と似ている前提での話だが、いずれにせよ、輸出戻し税によって輸出企業が儲かるのは、自国の消費税が輸出先より高い場合といえそうだ。日本は逆で損する側である。

日本は諸外国に比べて、法人税が高く、消費税が低い。日本の輸出企業は、高い法人税を払いながら生産した製品を、今度は高い消費税のかかる外国で売らねばならない。外国企業が日本に輸出するときは反対に、低い法人税で生産した製品を低い消費税で売ることができる。

日本の輸出企業が外国企業と比べて過重な負担を強いられていることは否めない。現在の日本の法人税率41%がそれ自体で高いかどうかは、人によっていろいろな見方があるだろう。だが、現在の国際環境で自国だけ高い法人税と低い消費税を維持するのは、やはり愚かな選択といえそうである。


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2 コメント

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輸出戻し税をやめて、輸出下請け企業消費税免除をすればいいのでは? (輸出戻し税廃止派)
2012-07-14 20:46:09
日本の企業である以上、日本国の恩恵を受けているので、法人税が高いのは当たり前だと思います。
アメリカ、ドイツ、中国、フランス等、日本以外の輸出額の多い国も比較的法人税は高い気がします。

輸出戻し税で儲けているというより、その程度では足りなくてむしろ損をしているなら、香港でもシンガポールでもメキシコでも好きな国へ移ればよいとおもいます。

ネットを見ていると、消費税は下請け企業が支払い、実際は下請け企業は仕入れ側の大企業の言い値で取引させられる為、消費税を価格に転嫁できない。それなのに輸出に消費税がかかったとして、輸出戻し税を大企業が受け取るのが問題であると書かれているような気がします。

輸出戻し税をやめて、輸出下請け企業消費税免除をすればよいと思うのは私だけでしょうか。
でもやっぱり... (soejima41)
2012-08-11 01:41:09
コメントありがとうございます。

日本の輸出企業は、日本の消費税は免除される代わり、輸出先の国でもっと高い消費税(や付加価値税)を払わねばならないので、結局、日本の下請け企業に比べて多くの税金を払っていると思います。そのうえ輸出先国の企業と違って日本の法人税は高いので、踏んだり蹴ったりだと思うのです。(挙げていただいた国の中で法人税が日本並みに高いのはなのはアメリカくらいだと思います)

「好きな国へ移ればよい」というのはある意味そのとおりで、実際それで産業の空洞化が生じつつあるから困るわけですよね。

消費税が上がると転嫁が難しいというのは、同感です。私もそのような零細企業にいます。ただ正直なところ、転嫁しにくいのは、根本的には商品・サービスの競争力がないからかなとも感じます。

むしろ外税表示が多い元請け企業への販売より、内税表示の消費者向け販売のほうが消費税の値上げを転嫁しにくいかもしれません。端数が出たとき切り上げにくく、切り捨てるばかりになってしまうのではないかと思います。

余談ですが、私が一番問題だと思うのは、年間売上1000万以下の事業者が消費税を免除されていることです。消費税が上がればこの問題は拡大します。みなし仕入率も問題がありますし、住宅の家賃等が非課税なのも根拠に乏しいと思います。このうえ食料品の軽減税率などが導入されて不公平と利権が拡大しないことを願っています。

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