そば実践 素庵覚え書き

庵主のホビーライフをそば打ち・そば屋さん・出前サロン・陶芸・釣りなどを通してご紹介します。

ハンドブック「江戸ソバリエ」のこと

2019-10-05 | 教室・会合

8月に「江戸ソバリエ認定講座」に参加してから、以前購入している本の中に「江戸ソバリエ」のハンドブックがあることに気が付き、再読してみました。
この本は、江戸ソバリエがスタートの時に出されたもので、NPO神田雑学大学が主催で神田雑学大学+吉田悦子さん編著、藤村和夫監修となっています。
最初の認定講座のカリキュラムは、①耳学(講義)は玄蕎麦と蕎麦粉、食器と蕎麦打ち道具、江戸蕎麦、蕎麦の薬味、世界の蕎麦文化、日本の食文化と蕎麦、②手学(実技)は蕎麦打ち体験、③舌学(実技)は蕎麦屋の食べ歩き、④脳学はまとめで、耳学では、江戸蕎麦を学ぶということで、日本の食文化と蕎麦(高瀬礼文さん)、江戸蕎麦の神髄(藤村和夫さん)などのお話がありました。

この時には第一回目の認定講座ということで、特別カリキュラムの形で、「老舗の旦那衆が語る江戸蕎麦の文化」の名前で、巴町砂場四代目店主、元有楽町更科四代目店主、神田まつや三代目店主、かんだやぶそば四代目店主の皆さんが、「屋号と店の成り立ち」、「三たてが必ずしも美味しいとは言えない」、「蕎麦は音を立てて食べるもの」の真偽などをテーマにお話がありました。

藤村和夫氏は元有楽町更科四代目店主ですが、氏以外は現役の老舗の旦那ということで立場をわきまえての話でしたが、藤村氏は現役を退き、お店がないということで、自由闊達な率直な話がありましたので面白く、ピックアップしてご紹介します。

①更科というのは屋号ではなく、「信州更科蕎麦処 布屋源三郎」が屋号。砂場は明治の頃、商標登録していたが更科はしていない。更科のおそばは、蕎麦の実のなかの15%以下しか蕎麦にしない。
ところがやぶそばは、蕎麦の実の90%くらいをそばにしちゃうから(挽きぐるみ?)、口当たりがごそごそします。

②そばの3たて〈挽きたて、打ち立て、茹で立て)について、同じ粉を使っても、職人の腕次第で美味しくもまずくもなる。
お蕎麦屋がいちいち、挽きたての粉をすぐに使って、打ち立てで、茹でたてを出していては「そんなことをやっていたんじゃ、商売は出来ません」。
(神田まつや三代目):打ち立てというのは水の回りが万遍にいかず、お湯がに立っているところに打ちたてのお蕎麦を入れると、浮いていまいなかなか潜らない。
料理は必ずしも新しければ美味しいとは限らない。お蕎麦は茹でたあと、冷たい水で晒します。それをざるにとって器に盛るわけですが、水がびしゃびしゃしている状態は、麺のもとが水の衣をまだかぶっているわけで、それが水がちょっと切れてくると、蕎麦と空気がじかに触れて、香りも立ちやすくなるということがある。
③本当に美味しいお蕎麦の条件 「こしがある」「みずみずしい」「のど越しが良い」「香りが良い」などについて。
「こしがある」ということは、お蕎麦を盛った時、お蕎麦がピンと立っていなければならない。お蕎麦を盛った間をハエが通り抜けられなくてはいけない、と昔から言います。
「のどごしがよい」ということを考えると、たぐり込む食べ方をするか、噛んでたべるかという、お蕎麦の食べ方の話になります。
江戸のお蕎麦屋はつまようじをださないことでも判るように、奥歯で噛まない。
だから、お蕎麦に芯があって固いと、つるっと飲んだ時に、のどに引っかかって窒息しちゃう・ですから「お蕎麦の煮すぎは恥ではない」というようによく茹でて表面を締める。
そうすることによって、お蕎麦の角が、口に中で一本一本感じられて、のどの奥できゅっと締めた時に消える。
こういうお蕎麦が美味しい。
のどごしがよい、のどでも切れるお蕎麦を作ることが出来ないと、老舗の蕎麦屋とは言えない。

お蕎麦のひとつまみを掌の上にポンと乗っけて、口にほおり込んじゃう。
おつゆも何もつけない。
これが一番おいしい。
自分が一番おいしいと思う食べ方でよい。

 

江戸ソバリエ 神田雑学大学∔吉田悦子編著 藤村和夫監修(マキノ出版)@1300+消費税

藤村和夫 昭和5年東京生まれ 元有楽町四代目店主。60年隠居。「蕎麦屋のしきたり」(NHK出版)「蕎麦なぜなぜ草紙」(ハート出版)「そばの技術」(食品出版社)など多数

 

ともかく藤村氏の経験に基づいた著作は、生きた知識として身に付き、本当に参考になります。

 

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