なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

低ナトリウム血症

2023年08月05日 | Weblog

 7月25日に83歳女性が意識障害で救急搬送されてきた。

 4月から6月まで約2か月間当院の整形外科に腰椎圧迫骨折・腰部脊柱管狭窄症で入院していた。その後は市内の整形外科クリニックに通院していた。

 当院退院後は歩行器で自宅内をやっと歩行するくらいで、ベットに寝ていることが多かった。娘と同居しているが、日中は不在になる。他県の妹さんが来て、介護していたが、そろそろ帰る予定だったという。

 3日前からさらに動かなくなっていた。その日は下肢のしびれを訴えるので、二人して(娘と妹で)車に乗せて、整形外科クリニックに出かけた。

 クリニックで診察すると、意識障害があり、しびれどころではないと当院内科に連絡が来たのだった。搬入時、閉眼して動かない。大声で呼びかけると(かなり難聴)薄目を開けるが、また閉眼する。

 その後しばらくすると、両下肢を動かして、上肢を挙上されるとちゃんと保っていた。発語も出てきて開眼するようになった。

 糖尿病があり、救急隊でも血糖を測定していて、178mg/dlで問題はなかった。発熱はなく、バイタルとしては問題がない。左右差はないが、脳血管障害かどうか確認を要する。

 頭部CTでは頭蓋内出血はなく、明らかな新規の脳梗塞はなかった。頭部MRI検査を開始したところで、検査室から「血清ナトリウムが109です」と連絡が入った。低ナトリウム血症による意識障害だった。(頭部MRIは動いてしまうので、拡散強調画像だけで中止したが、脳梗塞はなかった)

 整形外科に入院していた時の血液検査でも、血清ナトリウムは117~129と低めだった。そこからさらに低下している。整形外科での入院なので、特に問題にはされなかったようだ。

 内科医院から降圧薬が処方されていて、ARBと降圧利尿薬の合剤があり、ヒドロクロロチアジド12.5mgが入っている。その影響もあると思われるが、それだけではなさそうだ。

 高張ナトリウムではなく、低張性脱水として生食の点滴を開始したが、血清ナトリウムは109~111となかなか上がってこない。

 鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(mineralcorticoid-responsive hyponatremia of the elderly:MRHE)疑いとして、フロリネフ0.05mg/日を開始すると、血清ナトリウムは114~123~129と上昇してきた。

 検査結果は、血清ナトリウム低下・尿中ナトリウム上昇、血漿浸透圧低下・尿浸透圧上昇、血漿バゾプレシン濃度の抑制なし、副腎機能正常(甲状腺機能正常)で、SIADHの検査の検査所見を全部満たす。

 しかしそもそも脱水があり、水制限で改善する状態ではない。血漿レニン活性の低下もなかった。MRHEもSIADHの検査所見を満たすわけで、MRHEと判断した。

 

 入院1週間後に尿路感染症による高熱・血圧低下も見られたが、抗菌薬投与と補液増量で回復した。認知症・難聴があり、「どうして入院しているんでしょう」などの発言もあるが、不穏で困るというほどではない。

 

 

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