なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肝転移、骨転移

2024年06月07日 | 呼吸器疾患

 6月5日(水)に市内のクリニックの先生から肝機能障害・食欲不振の患者さん(60歳代前半の男性)を診てほしいと連絡が入った。

 肝機能障害があり、特にLDHの上昇が目立つので癌が疑われる、という。地域の基幹病院に連絡したが、肝臓専門医が退職していないということで断られたそうだ。肝臓癌や転移性肝癌は当院では診れないので、検査だけして高次医療機関に紹介することになるが、来てもらうことにした。

 

 3週間くらい前から嘔気が続き、食事摂取低下・倦怠感が続いていた。水分はとれて、果物やパン・ヨーグルトなどは食べられるという。

 症状が出た2日後に市内のクリニックを受診したが、異常なしといわれたそうだ。当院受診時でも胸部・腹部に異常がなく、表在リンパ節も触知しないので、診察だけでは異常を指摘できない。

 その9日後に今回紹介してきた別のクリニックを受診した。高血圧症を指摘されて、降圧薬が処方されて、胃腸薬も処方された。当院紹介となった日は、食欲不振が続いていると家族から連絡が入って、肝機能障害を確認したようだ。

 

 5日前から右頸部の痛みがあり、続いている。両上肢の脱力やしびれはなかった。(CT撮影後に訊いたが、右骨盤部にも痛みがあった)首にタオルを巻いていて、安定させようとしている。

 点滴を開始して血液検査を提出した。検査室からCEAが1500以上の高値ですと連絡が入った(希釈して3876と判明)。CA19-9 とAFPは正常域だった。

 肝機能障害があり(AST 144・ALT 43・LDH 1192・ALP 447・γ-GTP 592)、確かにLDHの上昇が目立つ。Dダイマーが18.2と上昇していたが、塞栓症を来したようには見えない。胸部X線で左肺門部に腫瘤を認めた。

 頸部から腹部までの造影CTを行った。左肺門部の腫瘤は腫大したリンパ節が一塊になっているようにも見える。原発ではないかもしれない。

 肝臓全体に大小の腫瘤があった。これは転移で間違いない。膵臓・腹部大動脈周囲のリンパ節腫脹もある。

 右骨盤(腸骨)に溶骨性変化があり、周囲の軟部組織が腫脹している。上位頚椎の右側も変形して異常だった。右頸部の痛みも骨転移かもしれない。

 盲腸も壁肥厚があるが、腫瘍とはいいきれない。消化器科医に相談したが、やはり否定できないが腫瘍とは決め難いという。肺門部の腫瘤がリンパ節腫脹で原発巣でない可能性があるが、骨転移があると消化器癌よりは肺癌を考えたい。

 妻に病状を説明して、本人に検査結果をそのまま伝えることの了解を得た。患者さんに説明したが、案外淡々としていた。事の重大性を把握していない印象もあった(重大なことと思いたくない?)。

 がんセンター紹介を同意してもらった。連絡すると翌日の外来受診が可能だった。診療科をどうするか迷ったが、肺癌疑いで呼吸器内科にした。診療情報提供書には肺原発ではない時は、院内でのご高配をお願いしますと記載した。

 呼吸器内科、消化器内科での検討になると思うが、頸椎の問題があると、それよりも整形外科の対応が優先されるか。整形外科の先生に相談して、頚椎カラーをつけてもらうことにした。

 

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