なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肝腫瘍

2017年12月05日 | Weblog

 11月に2週目の日曜日に82歳男性が、早朝からの発熱・悪寒戦慄で救急搬入された。その前に週に尿閉で早朝受診して、尿カテーテルが留置されていた。当院の泌尿器科外来は非常勤なので、当直医(大学病院からのバイト医師)は泌尿器科クリニックに紹介した。その後はそちらのクリニックに通院して、膀胱洗浄?をしていたそうだ。 

 尿路感染症からの菌血症を疑って、尿培養・血液培養を提出した。尿検査では尿路感染症と確定できる所見はなかった。といって、肺炎もなく他の部位の感染症もはっきりしなかった。胸腹部単純CTで肝臓内の複数個所に腫瘤があり、肝膿瘍も考えたが、複数個所にできるのか。

 抗菌薬投与で翌日から解熱して炎症反応も改善した。前立腺炎だったかもと思ったが、泌尿器科クリニックからキノロンが処方されていて、考えにくいかもしれない。PSAは正常域で、前立腺肥大はさほどではないように見えた(CT上)。泌尿器科医に相談して、ユリーフを1週間内服してから尿カテーテルを抜去してみることにした。結果は、ちゃんと自尿が出て、カテーテル挿入は不要になった。

 さて肝腫瘍の精査と、造影CTを行った。「肝血管腫(非典型的)に一致する」という読影レポートだったが、「他疾患も否定できず、造影MRIを勧める」とあった。造影MRIを行ったが、読影レポートは肝細胞癌・胆管細胞癌・転移性肝癌も考えられると、かえってわからなくなった。

 ご本人の話では、60歳代に肝腫瘍で精査したことがあるそうだ。ただ検査したことは覚えているが、結果は覚えていない。消化管の悪性腫瘍はなく、肝炎もないし、胆管細胞癌の形ではないような気がする。血管腫でいいんじゃないだろうか。

 検査結果をお話して、癌だとしても年齢と複数か所にあることから、治療はないので経過を見ましょうと伝えた。「年だし、癌でも仕方ないです」ということだった。

 この方は知的な仕事をされていたが、70歳代半ばで離婚(老年?離婚)されて、現在は一人暮らしの身だ。心療内科に通院していた既往がある。現在は子供とも連絡がつかない状態で、兄弟とも疎遠だ。ケアハウス的なところに申し込んで、空くまでは自宅でヘルパーさんに入ってもらって生活する。まあ今回は尿カテーテルが抜去できてよかったということにしよう。

コメント (1)
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