Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

2007年観劇総括

2008年01月01日 | 年間統括
2007年観劇総括

歌舞伎43回、舞踊2回、演劇13回、文楽2回、クラシックコンサート3回、計63回です。2007年を振り返って印象に残ったことを。役者の敬称は略。

<<1月>>
1月はもう完全に『朧の森に棲む鬼』に魂を奪われていました。自分でもビックリののめりようでした。友人の死などで精神状態が少々不安定で、「死」が色濃くでてるこの芝居にガッチリ入り込んでしまった感じでもありました。それにしても改めて染五郎って綺麗だわ、と思いました。それと染五郎のオーラって芯の部分が硬質さのある、色を弾く白なんだなと思ったりも。

歌舞伎座『寿新春歌舞伎』も充実してましたがそのなかでもダントツに気に入ったのは勘三郎の『鏡獅子』。これは本当に素晴らしかった。また『勧進帳』、幸四郎の弁慶がほんとに観る度に印象が変わるので楽しくてしょうがなかった。

新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼』


<<2月>>
歌舞伎座での『仮名手本忠臣蔵』の通しがやはり楽しかった。『仮名手本忠臣蔵』はとにかく本が良い。それと役者さんたちのリキの入りようもやはりなんとなく違う気がするのよね。菊五郎の判官と勘平が本当に良かった。菊五郎は受けの芝居のほうが可愛くて色ぽい。あと四段目の幸四郎も良かった。幸四郎は他の段の由良之助はどうもよろしくないけど四段目だけはいつも良いと思う。吉右衛門は完全に由良之助役者に成長したと思う。あと目を引いたのが顔世御前の魁春。この方、主役の華は無いけれど独特の存在感が出てきたと思う。

コクーン『ひばり』も戯曲が良かった。またアヌイのジャンヌを見事に立ち上げた、松たか子も素晴らしかった。大阪まで遠征した『朧の森に棲む鬼』はもう言わずもがな。久々に妄想炸裂してたし…。

歌舞伎座『二月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『二月大歌舞伎 夜の部』
国立小劇場『二月文楽公演 第二部』
シアターコクーン『ひばり』
大阪松竹座『朧の森に棲む鬼』
大阪松竹座『朧の森に棲む鬼』


<<3月>>
歌舞伎座での通し狂言『義経千本桜』が楽しかった。通しで観ると物語が意図するものがよく見えてくるなと改めて思った。菊五郎の熱演が印象的。幸四郎は銀平&知盛の拵えがよく似合う。福助の静御前が可愛らしかった。

歌舞伎座『三月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『三月大歌舞伎 夜の部』
内幸町ホール『ミックス寄席 すずめ二人會・春の巻』
歌舞伎座『第50回 日本舞踊協会公演 第二部』


<<4月>>
『錦之助襲名披露』の月でした。がんばれ~、と心の中で応援しつつの観劇でした。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 錦之助襲名披露 夜の部』
歌舞伎座『四月大歌舞伎 錦之助襲名披露 昼の部』


<<5月>>
演舞場通いの月でした。吉右衛門の大きさと若手、中堅の成長ぶりが見えた月。芝雀の絶間姫の可愛らしさにハマる。染五郎の鳴神の少年ぽさに『鳴神』という芝居に別な意味を見出す(笑)。『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿の場」、福助のお三輪に六世歌右衛門の面影を見る。『法界坊』、襲名後の錦之助が要助でノビノビと存在感ある芝居。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『女形の夕べ 双面トークショー』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』


<<6月>>
歌舞伎座の『妹背山婦女庭訓』 「吉野川」が圧巻だった。藤十郎の定高、幸四郎の大判事、梅玉の久我之助、魁春の雛菊とそれぞれが充実。また脇も揃い、まさしく大歌舞伎であった。仁左衛門、染五郎、芝雀の『御浜御殿綱豊卿』の熱さにも圧倒させられた。役者の熱がここまでダイレクトに伝わってきたのも珍しい。染五郎の『船弁慶』は千穐楽で化けた。静御前の舞のあでやかさのなかの哀の表現に目を見張る。染五郎長男、齋くんに目じりが下がる。コクーン『三人吉三』の面白さに黙阿弥萌え再び。勘三郎、福助の熱演が目に残る。


歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
シアターコクーン『三人吉三』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
江戸川総合文化ホール『松竹大歌舞伎 東コース』


<<7月>>
歌舞伎座『十二夜』での亀治郎の麻阿の飛び道具ぶりが印象に残る7月(笑)

国立大劇場『社会人のための歌舞伎鑑賞教室『野崎村』』
歌舞伎座『七月大歌舞伎 十二夜』昼の部
鎌倉芸術館『松竹大歌舞伎 巡業東コース』昼の部


<<8月>>
国立小劇場『第13回稚魚の会・歌舞伎会合同公演 B班』での『寺子屋』が印象的。私は基本的に芝居は「芸」でみせてほしいタイプの人間なのですが、未熟ながら必死になって頑張る役者の姿に感銘を受けました。パブリックシアター『ロマンス』が小品ながら洒落た楽しい作品で観ていて気持ちのいいものでした。

歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第三部
歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第二部
世田谷パブリックシアター『ロマンス』
全生庵『すずめ二人會-夏の巻-』
国立小劇場『第13回稚魚の会・歌舞伎会合同公演 B班』


<<9月>>
パルコ劇場『シェイクスピア・ソナタ』での岩松了の脚本・演出がツボでした。岩松了の台詞は詩的でどこか哲学的でもある。読み解く難しさと面白さと。歌舞伎座では『阿古屋』の華やかさが目に残ります。玉三郎の完成された美しさ。

池袋サンシャイン劇場『犬顔家の一族 -金田真一耕助之介の事件です。ノート』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 昼の部』
渋谷パルコ劇場『シェイクスピア・ソナタ』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 昼の部』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 夜の部』
歌舞伎座『九月大歌舞伎 秀山祭 夜の部』
国立小劇場『九月文楽公演 第二部』
世田谷パブリックシアター『ロマンス』


<<10月>>
歌舞伎座の『牡丹燈籠』が楽しかった。お露の七之助と乳母の吉之丞の幽霊コンビ、最強。仁左衛門×玉三郎コンビの独特の空気感を堪能。国立の『うぐいす塚』のばかばかしいゆるい芝居にほのぼの。

国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』
歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』
青山劇場『キャバレー』ソワレ
国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』
国立大劇場『十月歌舞伎公演「俊寛」「うぐいす塚」』


<<11月>>
歌舞伎座『傾城反魂香』がアンサンブルの良さで見応えがあった。吉右衛門の又平の完成度の高さと芝雀のおとくは芸格が上がったと感じさせた出来が印象的。『仮名手本忠臣蔵九段目 山科閑居』は大舞台。物語が大きくうねり、非常に密であった。『第12回梅津貴昶の会』夜の部の勘三郎・染五郎での『義太夫 芸阿呆』が素晴らしかった。本興行でかけてくれないものか。クラシックコンサートではツィメルマン&クレーメルの演奏ががサロン風でとても楽しく、ナタリー・デセイのリサイタルでは歌声にノックアウト。

歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部
サントリーホール『パリ管弦楽団』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部
サントリーホール『ツィメルマン&クレーメル リサイタル』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部
東京オペラシティ『ナタリー・デセイ リサイタル』
国立大劇場『摂州合邦辻』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部
歌舞伎座『第12回梅津貴昶の会』夜の部


<<12月>>
さらりとした観劇。師走らしい演目揃いでした。

国立大劇場『十二月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」』
歌舞伎座『十二月大歌舞伎』昼の部
国立大劇場『十二月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」』


<<総括>>
2007年も良い芝居に沢山出会えました。歌舞伎では歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』 「吉野川」がベスト1です。これは一生涯忘れない芝居のひとつになるでしょう。演劇では『朧の森に棲む鬼』です。個人的に様々な感慨込みでやはり忘れられない芝居となりそうです。