Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎 夜の部』 1等1階後方花道寄り

2014年11月22日 | 歌舞伎
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎 夜の部』 1等1階後方花道寄り

『御存鈴ヶ森』
権八@菊之助さん、相変わらずクールビューティ。安定感があります。

長兵衛@松緑さん、少し余裕が出てきたかな。

全体的に立ち回りが締まってきて見応えがありました。

歌舞伎十八番の内『勧進帳』
弁慶@染五郎さんがますます弁慶だった!そして役に膨らみが出てきていた。感情の揺れのなかで弁慶としての決断力の早さや決意、そして素直な優しさ懐の深さなどがもっと明快になったというか。そこに弁慶としての大きさがみえた。それを観ることができてとても嬉しいし幸せ。

弁慶@染五郎さん、台詞の調子を評論家に褒められていた。これはかなり嬉しい。この段階で少し荒れ気味なとこがあったとはいえ声がかなり保ててるし、だいぶコントロールもできてた。友人と弁慶@染五郎さんの台詞が昨日は特に音のど真ん中に入ってたね~と感想を言い合う。単なる台詞劇から一歩進んだかな。そこに弁慶の感情も大きく膨らんで現れるのだなと思ったり。にしてもやはり今月の染五郎さんの弁慶は先人たちの弁慶が重なっているかのよう。ようやく弁慶が身体に馴染んできたかな?という段階だし体現しきれてない部分は多々だけど方向性はしっかりある。そして、そのなかですでに染五郎さんがつくりあげようとする、体現しようとする弁慶がそこにあった。

『義経千本桜』「すし屋」
菊五郎さんの「すし屋」は初めて拝見するかも。重くなりすぎず、かといって情が薄いわけではなく十分に権太の情を伝えていく音羽屋ならではのバランスの一幕。芝居全体を通して菊五郎さんが出ると華やかに浮き立つのが印象的。また幸四郎さんが梶原平三景時で付き合うので、二人のやりとりの場面に大きさと濃さがありました。さすがというところ。

権太@菊五郎さん、憎めない小悪党然とした登場からたっぷりとした華があり惹きつけていきます。非常に自然体にそれでいてくっきりと権太という人物をみせていく。ほんとに見事だなあとしみじみ感心。さりげないのに所作のひとつひとつが印象的。また台詞もさらりとした味わいに巧さを感じさせました。

維盛@時蔵さんは丁寧に演じていきます。鷹揚としたところがらしい。お里@梅枝さんとの息がぴったり。

お里@梅枝くんはとにかく巧い。声もよく台詞廻しも丁寧でお里というキャラを丁寧に活写。巧すぎて少し洗練されすぎているかも。田舎娘の哀れさがもう少し欲しいかな。

梶原平三景時@幸四郎さん。白塗りでの登場で清濁飲み込んだ人物として演じていきます。さすがに舞台に大きさがでます。またやはり華やか。