時々刻々現社的学習2009

「現代社会」の授業用ブログ

IAEAと北朝鮮核問題

2009-07-05 23:37:44 | 日記
先週、IAEA(国際原子力機関)の次期事務局長に日本人の天野之弥氏が選出されたというニュースがあった。

■「核兵器拡大を全力で阻止」IAEA事務局長に当選の天野氏
2009.7.3 00:58(産経新聞記事から)

 国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長選挙で当選した天野之弥ウィーン国際機関代表部大使は2日の選挙後、集まった報道陣に「原子力の平和利用を実現する日本の姿を世界に伝えたい」と12月の事務局長就任に向けた抱負を語った。

 赤いネクタイに紺色のスーツ姿の天野氏は「多くの国に感謝の気持ちでいっぱいだ」と笑顔を見せる一方、イランや北朝鮮の核問題など早急に対応を迫られる課題に「核兵器の拡大を全力で阻止する」と表情を引き締めた。(共同)

■IAEA:新事務局長・天野氏、結束訴え 多難な船出

 【ウィーン中尾卓司】国際原子力機関(IAEA)の事務局長選で2日、日本の天野之弥(ゆきや)ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選したことに対し、疑問をはさむ声がくすぶっている。天野氏を「先進国の代表」とみなして反発する途上国もあるとみられ、天野体制は基盤が脆弱(ぜいじゃく)なままの船出を強いられる。天野氏は同日、「あらゆる国から協力を求める」とさっそく加盟国の結束を呼び掛けた。

 2日の出直し選挙では、当選に理事国(35カ国)の3分の2(24票)以上の支持が本来必要だったが、天野氏は23票しか取れなかった。6回目の投票となる天野氏への信任投票で、棄権票が1票出て、当選ラインが下がり、ようやく決着した。

 だが、欧州の外交官によると、「結果が公表された瞬間、多くは浮かない表情だった」という。微妙な決定に「受け入れがたい」と語る外交官もいる。そのため、3日に予定される理事会の任命手続きが無事終了するかどうかにもなお懸念が残っている。

 選挙は秘密投票であるため、選出の途中経過は明らかにされず、棄権1票を投じた国名は不明だが、「議長国アルジェリアの判断では」(外交筋)との見方も浮上している。立場の異なる国々が一致して推せる候補者が現れないため、「長引く選出プロセスを早く終結させたかったのだろう」との観測も飛び交っている。

 IAEAが直面する難題は、イランや北朝鮮の核問題だけではない。原発新興国に対し、原発燃料の安定供給を目指す「燃料供給保証」の論議では、燃料が一括管理されることで、発展途上国の自由な利用が制限されるのではないかとの警戒感がある。核技術をめぐる「持つ国と持たない国」の格差は深刻だ。天野氏は2日、報道陣に「南も北も西にも東にも」立場の違いを超えた連携を求めた。

 ロイター通信によると、英国際戦略研究所のマーク・フィッツパトリック上級研究員は「核を持つ国と持たない国の分断は深刻だ。両者の違いを橋渡しできる指導者の存在が重要だ」と語り、新事務局長に「南北」の溝を埋める重要な役割があると指摘している。
(毎日新聞記事から引用)


■天野IAEA次期事務局長、北朝鮮核問題「検証で役割果たす」

 【ウィーン=岐部秀光】国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長に当選した在ウィーン国際機関日本政府代表部の天野之弥(ゆきや)大使は3日夜、日本メディアと記者会見し、「核不拡散や原子力の平和利用で日本の経験を世界と共有するのは意味のあることだ」と抱負を語った。北朝鮮の核問題については「IAEAは検証で重要な役割を果たすだろう」と述べた。

 天野氏はIAEAの役割について「核の番人という(核拡散防止の)一つの側面だけでなく人類の福祉の向上、開発の実現などに取り組みたい」と述べた。「日本は戦後、核不拡散で最大限の努力を行っただけでなく、発電、工業、農業、医療などさまざまな分野で原子力平和利用を進めてきた」と指摘、唯一の被爆国としての日本の経験の世界との共有に意欲を示した。

(日経新聞記事から引用)


■イランが核開発目指している証拠ない=IAEA次期事務局長

[ウィーン 3日 ロイター] 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)次期事務局長は3日、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示した。

ロイターに対して述べた。

 天野氏は、イランが核兵器開発能力を持とうとしていると確信しているかとの問いに対し「IAEAの公的文書にはいかなる証拠もみられない」と答えた。

 11月に退任するエルバラダイ事務局長は前月、英BBCに対し、イランが核兵器開発能力の取得を目指しているという「直感」があると述べていた。

 天野氏はイランやシリアといった国々への対応について、穏健な事務局長にも強硬な事務局長にもならない、と語った。

(ロイター配信記事から)



※<解 説>

今年で任期が切れるエルバラダイ事務局長の後任に日本人が選出されたことは朗報であるかもしれないが、「北朝鮮の核問題」「イランの核開発問題」など難問が山積しているこの時期に「核の番人」と呼ばれるIAEAのトップに就任することは手放しでよろこべない。事務局長選挙の当選に必要な3分の2の票を最後までクリアできなかったという背景には、途上国を中心に先進国への不信があるといわれる。(ちなみにエルバラダイ氏はエジプト出身で、先進国に対して中立的な立場を貫いたといわれるが、日本人の天野氏は最初から米英などの先進国寄りとみなされている。)
国連事務総長が韓国人のパン・ギムン氏であり、国連のもう一つの重要ポストに東アジア人が着任するのは、国連機関の運営を難しくする可能性もある。特に、北朝鮮の核問題に関しては、韓国も日本も当事国であり、いままで以上に難しいかじ取りが要求される。

※<用 語>

IAEA(国際原子力機関)
(1)IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする。

(2)IAEAは、次のような権限を有する。

(イ)全世界における平和的利用のための原子力の研究、開発及び実用化を奨励し、援助する。加盟国間の役務、物質、施設等の供給の仲介や、活動又は役務を行う。

(ロ)平和的目的のための原子力の研究、開発及び実用化の必要を満たすため、開発途上地域における必要を考慮しつつ、物資、役務、施設等を提供する。

(ハ)原子力の平和的利用に関する科学上及び技術上の情報の交換を促進する。

(ニ)原子力の平和的利用の分野における科学者及び専門家の交換及び訓練を奨励する。

(ホ)原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止するための保障措置を設定し、実施する。

(ヘ)国連機関等と協議、協力の上、健康を保護し、人命及び財産に対する危険を最小にするための安全上の基準を設定し又は採用する。

◆北朝鮮核問題

2006年10月9日 北朝鮮、地下核実験を実施と発表(一回目)

2009年5月25日 北朝鮮、核実験を実施と発表(二回目)


(設問1)北朝鮮の核実験は国際社会にどのような問題を引き起こしたのか?

(設問2)北朝鮮の核保有は日本の安全保障に脅威となると思うか?

(設問3)日本も安全保障のために「核武装」する必要があると思うか?

(設問4)北朝鮮による核攻撃などを想定して「先制攻撃」を可能とするべきであるか?