心おだやかな田舎ぐらし

2013年09月02日 | Weblog







 研究所のHPでお知らせしただけで、このブログには書いていませんでしたが、思うところがあって、今年3月で3つの大学すべてを辞め、7月末に香川県に引っ越しました。写真のようなとてものどかなところです。

 引越しの準備と片づけに時間を取られて、記事を更新できませんでしたが、ようやく片づけも目途がついて落ち着いてきましたので、そろそろ少しずつ再開しようかなと思っています。

 手始めに今日は、引越しの動機の一部と重なるような漢詩を引用・紹介することにしました。

 知る人ぞ知る田園詩人・陶淵明(とうえんめい)の代表作の一つです。

 
   園田の居に帰る

    其の一

 少きより俗に適うの調べなく わかきよりぞくにかのうのしらべなく
 性 本と邱山を愛せしに   せい もときゅうざんをあいせしに
 誤って塵網の中に落ち    あやまってじんもうのうちにおち
 一たび去りてより十三年   ひとたびさりてよりじゅうさんねん
 羈の鳥は旧の林を恋い    たびのとりはもとのはやしをこい
 池の魚は故の淵を思う    いけのさかなはもとのふちをおもう
 荒を南野の際に開かんとし  こうをなんやのさいにひらかんとし
 拙を守って園田に帰る     せつをまもってえんでんにかえる
 方宅 十余畝          ほうたく じゅうよほ
 草屋 八九間          そうおく はちくけん
 楡柳 後簷を陰い       ゆりゅう こうえんをおおい
 桃李 堂前に羅る       とうり どうぜんにつらなる
 曖曖たり 遠人の村      あいあいたり えんじんのむら
 依依たり 墟里の煙      いいたり きょりのけむり
 狗は吠ゆ 深巷の中     いぬはほゆ しんこうのうち
 鶏は鳴く 桑樹の巓      とりはなく そうじゅのいただき
 戸庭 塵雑なく         こてい じんざつなく
 虚室 余あり        きょしつ よかんあり
 久しく樊籠の裏に在りしも   ひさしくはんろうのうちにありしも
 復た自然に返るを得たり   またしぜんにかえるをえたり


   私訳

 若い時から世間に合わせられるような性格ではなく
 もともと性質からして丘や山が好きだったのに
 まちがえて塵だらけの(世間という)網に落ち込んでしまって
 いったん(丘や山から)遠ざかって十三年も過ぎてしまった
 だが、旅にある鳥がもといた林を恋しがり
 池の魚がもといた淵のことを思うように
 雑草が茂って荒れた南の野を開墾しようと
 世渡りの下手な性格を変えることなく田園に帰ってきた
 宅地は十畝あまり
 草ぶきの家で部屋は八つか九つ
 楡や柳が裏の軒を覆っており
 桃や李が座敷の前に並んで生えている
 遠くに村が霞んで見え
 里の煙がなつかしい
 村の路地の奥で犬が吠え
 桑の木のいただきで鶏が鳴く
 庭はせいせいとしていて
 人のいない部屋にはゆったりと余裕がある
 長い間鳥籠のようなところにいたが
 もう一度のびのびとしたところに帰ってくることができた


 私の場合、21年もサラリーマン生活を送り、その後もまあ社会にそこそこ適応してきたつもりなので、「少きより俗に適うの調べなく」というのはありませんが、しかし「性 本と邱山を愛せしに 誤って塵網の中に落ち」という思いはずっとあって、今、「復た自然に返るを得たり」というのが実感です。

 これから、今までより少しペースは落としながら、しかしいい仕事をしたい、できるのではないか、と思っています。

コメント (4)
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