仕事の合間を見つけながら、ようやく『ニルスのふしぎな旅』4巻を読了しました。
動物たちにいじわるだった少年が、小人にされてガンやガチョウとスウェーデンを南の端から北の端へと空の旅をし、さまざまな冒険をし、いのちの意味、いのちを守ることを学んで、また南の故郷に帰って、人間に返る物語。
スウェーデンの風土の美しさや厳しさ、人々の素朴で営々たるいとなみ、人と自然との関わりなど、なぜスウェーデンが世界の先頭を切って「緑の福祉国家」を目指せるのか、その精神性が少しわかってきたような気がします。
特に、旅の終わりに、ガンの群の隊長アッカとニルスが交わす会話が印象的でした。
*
「もっと早く、あんたに話しておかなければならなかったことが、ひとつあるのだよ。だが、あんたが家に帰らないというものだから、別にいそぎでもないと思っていたのだがね、今はいってしまってもかまわないだろう。」
「アッカの母さん、ぼくはあなたのいうことは、よく守るということを知っているでしょう?」
「あんたがわたしの生活で、何かよいことをおぼえたとしたらだね、人間はこの世の中に自分たちだけで暮らしているのだと思ってはいけないと考えるだろうね。あんたがたは大きな土地をもっているのだから、少しばかりの裸の岩礁や、沼や、湿地、さびしい山や、遠くの森などを、わたしたちのような貧しい鳥や獣が安心していられるように、わたしたちにわけてくれることは、じゅうぶんできるのだ、ということを考えてもらいたいのだよ。わたしはこれまで、ずっと追われどうしだったのだよ。私のようなものにも、安心していられる場所があればいいと思うのだよ。」と、アッカはおごそかにいった。
「ぼくもお手伝いができたら、ほんとうにいいのだがなあ。だけど、ぼくには、人間たちにそうさせるような力はないんだ。」
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「ぼくもお手伝いができたら、ほんとうにいいのだがなあ」というニルス少年の願いは、心あるスウェーデン国民の願いでもあったのでしょう。
少年の「ぼくには、人間たちをそうさせるような力はないんだ」という言葉にもかかわらず、『ニルス』(1906~7年)が書かれて約百年後、スウェーデンは国家の指導者(権力者・力を委託された人)たちが本気・本音で(建前ではなく)、「エコロジカルに持続可能な社会」を創り出そうとしているようです。
そういうのをほんとうに「美しい国」というのではないでしょうか。
もちろん、日本も――安部首相の言うのとは別の意味で*――ほんとうに「美しい国」にしたいものです。
*シンポジウム「日本も〈緑の福祉国家〉にしたい!――スウェーデンに学びつつ」の趣意書、参加募集の記をお読みいただけると幸いです。
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