興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学者黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

学部時代の専攻は心理学である必要があるのか?

2019-01-22 | アメリカで心理学者になる方法

皆さん、こんにちは。

今回は、eさんから頂きましたご質問にお答えします。

今回頂いた以下のご質問は、実のところ、良く受ける質問です。アメリカの大学院で心理学を学びたい方にとってはとても大切なことですし、せっかくですので、今回はここでじっくりとお答えさせていただきます。

eさん、有意義なご質問をありがとうございます。

以下がeさんから頂いたご質問です:

「初めまして。現在大学学部生で、専攻は経済学です。アメリカの大学院について、質問をさせて頂きたいです。日本で経済学部卒業し、アメリカの大学院で心理学を専攻することは可能なのでしょうか?大学生活を過ごすうち、心理学に興味が沸いてきて、独学で心理学を勉強しようか、通信制で勉強しようか、日本の大学院で心理学を専攻しようかと考え、調べていると、アメリカは心理学最先端の国であり、より機会も多く与えられているということを知りました。また、私自身、現在アジア圏で交換留学中であり、英語で授業をとったり、日常会話の英語はある程度は問題ありませんが、ネイティブと話しているうちに実際に英語圏に行って英語に触れたいという思いが強くなりました。現在の専攻が、心理学ではないため、新しく学ぶ心理学を英語で学ぶとなると大変だとは思いますが、その前にそのような選択が可能なのかをお伺いしたいです。ぜひ、宜しくお願い致します。」

まず、一番大事なところ、「日本で経済学部卒業し、アメリカの大学院で心理学を専攻することは可能なのでしょうか?」ですが、結論からお話しますと、答えはイエスです。アメリカのほとんどの私立の臨床心理学の大学院は志願者の学部時代の専攻はそれほど重要視しておりません(脚注1、脚注2)。実際、アメリカの大学院は、実にさまざまなバックグラウンドの人を受け入れています。入学してみるとお分かりになりますが、クラスメイトは実に様々な学部卒の人で構成されています。ちなみに、世代もかなり幅広いです。日本の臨床心理学の大学院とはこの辺りも大きく異なります。学校によって異なるものの、かなり多くの方が、一度社会に出て心理学とは全く異なるフィールドで社会経験を積み、何らかの理由で心理カウンセリングの分野に興味を抱いて心理学の大学院に入学してきます。そういうわけで、アメリカの臨床心理学の大学院は、そうした多様な背景の人たちが無理なく臨床心理学を学べるように、一年次には、心理学入門や生物心理学、行動心理学、認知心理学などの学部でも学べる基礎的なクラスを用意しています。この辺りは心配要りません。

大学生活を過ごすうち、心理学に興味が沸いてきて、独学で心理学を勉強しようか、通信制で勉強しようか、日本の大学院で心理学を専攻しようかと考え、調べていると、アメリカは心理学最先端の国であり、より機会も多く与えられているということを知りました」

やはり本格的に臨床心理学を学びたいのであれば、通信ではなくて、実際のスクーリングのある大学院がよいと思います。というもの、臨床心理学という学問の学びは、文字通り、実際の臨床を通して学ぶところが非常に大きいからです。そして、院生時代の実習経験の機会という観点では、アメリカの大学院は、日本の大学院と比べて圧倒的に有利です。

ただ、ひとつお話しておかなければならないことがあります。確かにアメリカの臨床心理学者は精神科医に匹敵するような権限が与えられており、とても幅広い機会がありますが、学位取得後にアメリカでライセンスを取得してアメリカで本格的に働くことは、現在、移民法の問題で、非常に困難であるということです(もしあなたがグリーンカードや市民権などをお持ちでしたら全く問題ありません)。実際、アメリカで本格的に働くためには、スポンサーになってくれる雇い主を見つける必要があり、そこには労働ビザ取得のための高額の弁護士費用が掛かります。そして、アメリカ市民の雇用を最優先している移民局に対して、どうしてアメリカ市民ではない自分をその雇用先が雇うのか、その正当性を証明しなければなりません。つまり、アメリカ市民の心理学者と同等以上であり、平均的なアメリカ人の心理学者にはないものを持っている、ということを客観的に示す必要があります。

また、私自身、現在アジア圏で交換留学中であり、英語で授業をとったり、日常会話の英語はある程度は問題ありませんが、ネイティブと話しているうちに実際に英語圏に行って英語に触れたいという思いが強くなりました。現在の専攻が、心理学ではないため、新しく学ぶ心理学を英語で学ぶとなると大変だとは思いますが、その前にそのような選択が可能なのかをお伺いしたいです。ぜひ、宜しくお願い致します」

素晴らしい志だと思います。確かに大変かもしれませんが、現実的なプランです。

ただここで、もうひとつだけ、老婆心をお許しください。

ご存知のように、今年から日本では、「公認心理師」という4年制大学の学士号レベルの新しい国家資格ができました。

これから4年ほどは移行期間であり、様々な背景の人の資格取得が可能ですが、その後は恐らく日本の4年制大学で心理学を専攻していることが条件となってくるようです。こうなると、海外の大学院卒の人がこの資格を取得することがかなり難しくなるともいわれています(この辺りは私もあまり詳しくないので、該当機関に連絡して実際のところどうなのか、お確かめになってください)。

そういうわけで、eさんが大学院で学位を取得後に、どのようなキャリアをお考えなのかによって、アメリカの大学院が最善であるかどうかが、決まってくると思います。いずれにしても、アメリカの大学院での学びは、他では得られない、掛け替えのない貴重な経験となりますし、eさんのようなバックグラウンドの方にはピッタリだと思います。それぞれの選択にはメリットとデメリットがありますが、この回答が少しでもeさんの最適な進路選択のヒントになればと思っております。



脚注1: 州立大学の大学院などの研究機関では、原則として、学部時代に心理学を専攻している必要があります。ただ、州立大学の大学院が求めているのは、心理学専攻そのものよりも、大学院に入る段階で取得している必要がある必須科目(prerequisite)であり、たとえば志願者が心理学を副専攻していてその条件を満たしていれば、応募資格があります。

脚注2: 心理学を学部で専攻していた学生のメリットももちろんあります。たとえば、それ以外の学生が取らなければならないいくつかのクラスが免除されて学費が安くなる可能性もあります。それから、学部時代から心理学を勉強していると、当然ですが、大学院の授業の理解力という面においても有利です。



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