興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

感謝の気持ちとThanksgiving

2014-11-28 | 戯言(たわごと、ざれごと)

「ひとつの幸せのドアが閉じるとき、もうひとつのドアが開く。  しかし、わたしたちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気づかない」~ヘレンケラー

 毎年11月第4週の木曜日は、アメリカは感謝祭(Thanksgiving)で賑わいます。これは、多くのアメリカ人にとって、クリスマスにも匹敵する大きな行事で、日本でいうところの年末年始とどこか似ています。とても大切な行事ですので、11月の第4週に入ると、人々は早めの休暇を取ったりして、実家などへ移動をはじめます。他州からホームタウンへと飛行機で移動する人も多く、この時期になると、アメリカの空港はどこも大変な混雑になります。

 このようにして、彼らは家族や親しい者たちで集まってパーティーを開くのですが、この時に、人々は、この一年で自分が何に感謝しているか、そこにいる人たちにお話してシェアし合います。アメリカに移住してきた人たちが、最初の年を越えられた時から続いているこの行事は、アメリカ人にとって、また、様々な事情でアメリカに住んでいる人々にとって、今年もあと1ヶ月となったこの時期に、その一年を振り返り、自分自身を省みて、その一年の恵みについて思いを巡らして感謝の気持ちを大切にする、とても良い習わしだと思います。

 日本にはアメリカのような感謝祭はありませんが、この時期に、自分の歩いてきた一年を振り返ってみて、そこにはどういう恵みがあり、自分は何に感謝しているか、感謝できるか、考えてみるのはとてもよいことだと思います。心理学的にも、感謝の気持ちと、その人のこころの健康は、密接に関係しています。そこで今回は、このブログでは珍しく(笑)、ポジティブ思考に焦点を当てて考えてみたいと思います。

 冒頭のヘレンケラーの引用は、もともとグラハムベルが言ったことを彼女なりにアレンジして言ったことのようですが(脚注1)、非常に困難な障害を乗り越えて人生を全うした偉人ヘレンケラーと、失敗に失敗を重ねながら電話機という大発明を成し遂げたグラハムベル、このどちらから聞こえてきても、非常に重みのある、奥深い言葉だと思います。

 人生は、本当に様々な出会いと別れの連続です。しかし、ひとつの別れは、ひとつの新しい出会いに繋がりますし、ひとつの挫折が、別のところでの成功に繋がります。

 何かを掴みかけていたところで逃してしまい、落胆のなかにいる方もいるかもしれませんし、大切な相手との別離を経験された方もいるかもしれません。お仕事を失われて失意の最中にいる方、温めていた計画が駄目になってしまった方、楽しみにしていたことがふいになってしまった方、何か大失敗をしてどん底にいる方。

 失ったことで、悲しみ、寂しさ、怒り、落胆と、いろいろな辛い感情を経験することは、とても自然なことですし、そういう自然な気持ちは、まずは自分が大切にしてあげることが大切です。辛い感情であるけれど、それは自然なことだし、そのまま受け止めてあげようと。

 そうした自分の気持ちを批判したり、拒絶したり、抑制したり、そこから目を逸らしてはいけません。ただ、こうした中で、私たちが同時に少しずつしていくと良いことは、冒頭のヘレンケラーの引用の、閉ざされたドアを悲しみながらも、実は新たに開かれた、新しいドアの存在に気づいて意識を向けていくということです。

 ひとつのことが、終わってしまった。それは本当に悲しいことです。

 しかし、それで人生一巻の終わり、ということは決してありません。すべてのものごとには理由があります。

 何かが起きたことには理由がありますし、また、何かが起きなかったことにも、理由があります。ひとつのドアが閉まったことには理由があります。

 それはあなたが方向転換をして、今までそこに使っていたエネルギーを、新たに開かれた新しい可能性に注いていくためです。お先真っ暗のように感じているときに、あえて自分が何に恵まれているのかについても考えてみることは、気持ちを少しでも引き上げてくれるし、視野を広げてくれるし、そこから脱出することも助けてくれます。

 感謝できることについては、人それぞれですが、いろいろあると思います。

 それはあなたの健康な体かもしれないし、あなたの大切な人の健康かもしれないし、また、あなたの周りの誰かの存在かもしれません。

 あなたが今までに培ってきた知識や技術、能力かもしれないし、食べ物かもしれないし、きれいな飲み水、電気、車、スマートフォン、ある種の音楽、本、映画といったことかもしれません。

 目が見えて、耳が聞こえて、言葉が話せることかもしれません。

 ある友人が、「私はトイレットペーパーの存在にすごく感謝してる」と言った時には驚きましたが、なるほど私もトイレットペーパーの存在には日々感謝しています。感謝できることは、私たちの周りに溢れています。

 私は毎日、その日にあった、感謝なことについて思いを巡らす時間を持つことにしていますが、とても助けになります。これは、周りでうまく行っている人たちに聞いてみても、やはりみんなやっていることで、興味深く思います。寝る前に床の中で3つ今日感謝できることを考える人もいれば、祈りの中で感謝している人もいて、いろいろなやり方がありますが、やはり、感謝の気持ちは、私たちの人生に好影響を及ぼしてくれるようです。



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脚注1: 

"When one door of happiness closes, another opens; but often we look so long at the closed door that we do not see the one which has been opened for us."
Helen Keller

"When one door closes, another opens; but we often look so long and so regretfully upon the closed door that we do not see the one which has opened for us. "
Alexander Graham Bell


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