興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学者黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

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2020-09-12 | プチ臨床心理学
カップルの関係性の問題は、コミュニケーション不全が原因になっている事が多いですが、ここで意外と多いのが、2人が共通認識であると考えるまでもなく前提にしている事が実はそうではなかったという事です。

共通認識である事が前提であり、土台となって展開する対話の前提が異なっていたら、その後の対話が良い方向に展開していく事は望めません。

実際、カップルセラピーの初期段階で私がほぼ必ず行うのは、そのカップルの2人のクライアントのコミュニケーションの質の改善のためのエクササイズです。

2人が確実に互いの言っている事を理解しながら進めていく対話の練習です。

というのも、問題を抱えているカップルは、自分の話が相手にうまく伝わっていない事に気づかずに相互理解を試み続けて、なぜ伝わらないのか分からずにフラストレーションが溜まっていき、口論がエスカレートしがちです。

このプロセスでしばしばお話するのは、2人が対話に使っている共通言語(日本では多くの場合日本語)の語彙たちの意味合いや定義が時として一致していない可能性を意識する必要性です。

例えば、「話し合う」という日本語ですが、「話し合う」とはどういう事なのかは、実のところ、私たち一人ひとりの生まれ育った家庭環境によってだいぶ異なります。

ある家庭では、話し合うとは、親と食卓で向かい合って、互いに腹を割って、それぞれの思いの丈を、互いに納得するまで数時間でも話し続ける事かもしれません。

別のある家庭では、誰かが他のメンバーに一方的に何かを宣言する、会話のキャッチボールがあまり伴わない、1分も掛からないものが「話し合い」かもしれません。

こうした感じで、家族との「外食」、「旅行」、「一緒にスポーツをする」、「お出かけ」、「バーベキュー」、「お正月」、「喧嘩」、「仲直り」、などの事物のイメージが異なれば、「躾」、「教育」、「優しさ」、「怖い」、「仲良し」、「不仲」などの意味も家庭環境によって大きく異なったりします。

実際、カップルセラピーで、一人が「もう話し合った」、「もう済んだ話」、と言い、もう一人が「まだ全然話し合ってない」、「未解決の問題」、と主張する事もしばしばあります。

こうした場合、「何をもってして話し合いが完了したのか」、「問題が解決したとはどういう状況なのか」、2人の認識が大きくズレている事に気付いていないカップルは多いです。

ここでお勧めなのは、お二人が冷静な時、比較的仲が良い時に、例えば、「話し合い」とはどういう事なのか、二人で話し合ってみることです。

互いのゴールやイメージが明確になれば、互いに寄り添う事もしやすくなりますし、誤解やすれ違いも減っていきます。

これは一種の「メタコミュニケーション」(meta communication)と呼ばれるもので、「コミュニケーションについてコミュニケーションする事」で、ちょっともつれた人間関係の突破口になります。対話する自分たちをちょっと客観的に俯瞰して、コニュニケーションのパターンについて対話をするのです。

互いに英語で対話しているアメリカ人同士が、分かり合えない時に、 “We don’t speak the same language” と言ったりします。 “speak the same language”とは、「考えが一致している」、「気持ちが通じ合う」、という意味合いの慣用表現ですが、直訳して「同じ言語を話している」事が、「通じ合う」、という意味であるのは、多文化社会、多言語社会のアメリカらしい表現だと思います。

皆さんは、大切な人と同じ言語で話していますか?

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