興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学者黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

ザリガニとカブトムシ

2021-07-19 | 戯言(たわごと、ざれごと)
夜。

息子がベットルームに行く直前、ふと、リビングにあるカブトムシの飼育ケースを見て、

「あ、カブトムシでてきたね。よるになったらかつどうするの?」

と聞いてきた。

嫌な予感がした。今夜はもう遅いし、せっかくお風呂に入って清潔になって寝る直前にまずいタイミングだなあ、と思いつつ、そうだね、夜になったから出てきたんだね、と答えた。すると案の定、

「カブトムシさわりたい」

というので、どうしたものかと考えあぐねた。

触らせてあげたい,特に、彼のカブトムシはそろそろ寿命が近づいてきている。まだ元気だけれど、体力の衰えを感じる。

生きているうちに触らせてあげたい、でも始まったらまた時間が掛かりそうだ、寝るのがさらに遅くなる、しかもその後の手洗いでまた一悶着、でも仕方ない、触らせてあげよう、と決断すると、彼は今度は隣接するザリガニの水槽に目をやって、

「ザリガニはながくいきていけるの?」

というのでドキっとした。まるでこちらの葛藤が見透かされているような気がしたのだ。

「そうだね、ちゃんと育てれば、ザリガニは長く生きていけるよ」

と、我が家にやってきて1年になるザリガニを自分も見つめながら答えた。すると彼は、

「カブトムシもちゃんとそだてればながくいきていけるの?」

と言うのでその論理づけにハッとする思いがして,感心しつつもなんだか悲しくなった。

このカブトムシは我が家では幼虫から育ててきたのだけれど、成虫になった時点で、カブトムシの短命について何度か彼に説明していたのだ。

「カブトムシはね…ちゃんと育てても、長くは生きられないんだ」

「どうして?」

「うん、ザリガニもカブトムシも,それぞれどのくらい長く生きられるか、だいたい決まっているんだ」

「カブトムシは、みじかいいのちなの?」

「うん,そうなんだ」

息子は私の膝の上に乗って、私の胸にもたれながら、何かを考えるようにじっとザリガニを見つめていた。

ザリガニはマイペースで相変わらず面白い動きをしている。しばらく2人で無言でザリガニを見つめていて、妙に静かだなあ、と思ったところ、妻がドアを開けて入ってきて、小声で、

「寝てるよ」

と言うので、またハッとして息子の顔を覗き込んだら確かにスヤスヤと寝ていた。

息子を抱き抱えると、熱くなった小さな体でギュッとしがみついてきた。短期間ですごい深い眠りに入ったようだ。首にかかる温かい寝息がなんとも愛おしい。カブトムシさっさと触らせてあげれば良かったと罪悪感を感じながら,リビングを出て、ずいぶん重くなった彼を抱いて蒸せるように暑い階段を上った。

先日は父の13年目の命日で、今日は遠方から訪ねてきてくださった叔父叔母と一緒にみんなでお墓前りに行ってきたのだ。ちなみに息子は父のちょうど10年目の命日に生まれてきて皆を驚かせた。

お墓参りだったので、息子が会った事のない祖父について彼にいろいろ聞かせたものの、そのやりとりから、まだちょっと理解に難しいかな、と思った。でも実は彼なりにいろいろ感じているのかもしれないと、今宵のやり取りからふと思った。
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