sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:タクシー運転手

2018-06-16 | 映画


光州事件を描いた映画です。
1980年5月、軍事独裁政権がが民主化を求める大規模なデモを武力弾圧した事件。
死傷者多数。(市民164人、軍人23人、警察4人が死亡したそうです)

わたしは小さい頃、1970年ごろから毎年夏に韓国の釜山から1、2時間の馬山の
祖母や親戚のところへ訪ねて行ってたので、この年もやっぱり行ってたはずです。
中学生か高校生だった頃ですね。
大学に入る頃までは、軍事機密の問題で?釜山の空港を降りる時には
飛行機の窓は全部閉めないといけなかった。
田舎へ行くと、いつものんびりしたものでしたが
空港あたりはちょっと緊張した感じがしたこともあったのをおぼろげに覚えています。

その後、大学を出てソウルに1年留学したのは、学生たちの民主化デモの激しかった年で、
さらに帰国後の、中国の天安門事件で、市民に銃を向ける警察や軍隊の政府を見て
なんてひどいことだろうと思ったんだけど、
その10年近く前に光州事件に対しては、そういうことがあったな、くらいの認識だった。
今回この映画で、当時のニュースや新聞の映像をかなり忠実に再現していると言われて
ああ、こういうことが起こっていたのかと、初めて身にしみて分かった気がします。
大規模なデモやそれに対する軍や体制の弾圧って
世界ではたびたび起こっていることだけど、日本にいると世界が遠い。
それをかなり身近に思わせてくれる映画でもあるなぁ。

主人公はしがないタクシー運転手。
妻に先立たれ小さな娘一人を育てるシングルファーザー。
元々優しい人なんだけど妻の治療での借金もあって、お金がなくてセコセコしてる。
自分の生活にいっぱいいっぱいで、世の中に関心がなく、
学生のデモを見ても、渋滞になると迷惑だからいいかげんにしろくらいの感想しかない。
社会を知らない頭でっかちの甘やかされたサヨクの坊ちゃんたちのわがまま、とか思ってる。
そこに光州事件を取材したいドイツ人が現れ、その報酬の大きさに
人のお客だったのを横取りして往復することになるのですが、
なんとか入った光州で主人公が見たものは・・・というお話。
実話ベースだそうで、運転手も、ドイツ人記者役のユルゲン・ヒンツペーターも
どちらも実在した人物だったそうです。

運転手のソン・ガンホは、いいですねぇ。
顔のでかい骨太の寅さんっぽい感じですが、おかしさはもちろん、優しさも切なさも怒りも
全部一度に表現できる素晴らしい俳優です。
そして光州の公安側の悪役の感じの悪さも最高!
あの悪役がこの映画のすべてを支えているんだなぁと思う。
本当に、こういう憎たらしいいや〜な役が似合う俳優さんです。

しかし軍隊というものはロクでもないものだな。
体制を守り敵を殺す集団であって、市民を守るものではないのね。
例外を探そうと思ったけど、日本の自衛隊もそうなりつつあるようで愚かだなぁ。

この映画を見て、韓国の民主化運動についてというか、
そもそも人々の政治への意識の強さを改めて感じたけど、
なんかわたしは、手放しでは褒めたくないんだよな。
このような民主化への強い意識の一方で女性差別や抑圧は依然としてとても酷くて
民主化の中でも女性差別は温存されたままだったはずなんだけど、
そういう別の顔がなかったことにされるのがいやなのです。
映画を見てその頃のことを思い出すと、民主化意識の高さに反して、
その頃でも、女は嫁に行って家を守り子を産み家族に尽くすべき存在として
抑圧されっぱなしだったんだもん。全然民主的じゃないよね。
儒教の教え。ああ、大嫌い。
わたしは個人的に韓国のそういう部分に、人生の何十年かをダメにされたので、
死ぬまで恨むくらい恨んでいるし、絶対忘れない。
女性への差別や抑圧に対しては、日本もひどいけど、酷さ比べならいい勝負と思う。
ただ、今では韓国もすっかり変わって
日本よりもずっと女性の権利が認められてきているという話はよく聞くので
そうなのかなぁ。30年あれば何もかも変わる、ってこともあるけど
人の意識もそんなに変わったんだろうかなぁ。そうならいいけど。よく知らない。

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2 コメント

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やっと(笑 (노래)
2018-06-17 01:46:48
sighさんがいつこの映画を紹介してくれるのか待ち遠しかったです(笑

うんうん(^.^)
>noraeさん (sigh)
2018-06-17 10:23:49
映画について細々書き始めると長くなるので、自分の事しか書いてません。笑

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