インターネットの憂鬱

仮想空間と現実の狭間で

ネットビジネスの虚構

2012年04月18日 | 雑感

昔、とある会社で通販用ホームページの更新や改良を担当していたのだが、当時の自分は
インターネットビジネスの仕組みや運用ノウハウを、良く分かっていなかった。

例えば、自社商品を競合する商品より有利に販促展開するためには、検索順位を上げることは
基本中の基本だが、そのノウハウが分からない。大事なのはホームページの構造なのか、言葉なのか。
あるいは業者に依頼して細工をすればいいのか。ネット広告を打てばいいのか。
とは言え、予算がないから社内で作業しているのであって、“金を使えない”状況だったから
自分で何とかするしかなかったわけだが、正直言って素人の自分はお手上げだった。

なにしろ、簡単にホームページが作れる今と違って、文字を変更するにもhtmlのタグ付が必要だったし、
便利なテンプレートやプラグインもなかった(あったにはあったが、使いこなすレベルではなかった)。
結局、大手通販サイトが有料で提供する原始的な作りのホームページでなんとか形にしたものの、
さらに課金されるサービスに加入しないとランクアップは望めないのが実態だった。

もうひとつ。商品ページや口コミサイトに書き込まれる口コミには、誹謗中傷や罵詈雑言が存在すると同時に
どう考えても“おためごかし”レベルにまでその商品を不自然に持ち上げるコメントが存在していた。
その両極端な評価の隔たりにものすごい違和感を持っていたら、ホームページのアップをチェックしていたとしか
思えないタイミングで、“そういう商売”の営業電話が来たのだ。10年近く前から“ヤラセ”は正々堂々と行なわれていたし、
下手をすれば通販サイトとその“業者”は裏でつながっているのではないかとさえ感じた。

今はどうか。

頑張れば素人でも、ちゃんとしたレベルのホームページができるようになったことや、制作業者が増えたことによる
実勢価格の引き下げと情報開示によって、バカ高い制作費を吹っかける業者はさすがに減った。
でも、今度は月々の保守管理料で儲けようと目論でいるらしい。レンタルサーバーの利用だったら、
せいぜい月々数千円程度の使用料だが、大したこともせずに月に万単位の契約を迫ってくるとか。

検索順位を上げるSEO対策も、ずいぶんと業者が増えて、やはりノウハウの開示や料金の引き下げが進んでいる。
それでもまだ、ブロガーにヤラセ記事の作成依頼をしたり、バックリンクを1件500円×20件のセットで売る業者がいる。
商品紹介に特化したブログや、ランキングサイトなどに不自然な内容のものが目立つのは、そういう背景があるからだ。
アウトソーシングのマッチングサイトには、「商品紹介記事を1本300円で10本書いて下さい」なんて案件がゴロゴロしている。

ちょっと前に流行った“見積もりサイト”にも怪しい輩が取り巻いていて、見込み客を1人紹介したら5,000円だと言う。
それはあくまでも見込み客であって、成約してくれる保証はどこにもない。それをひと月に何十人も紹介してくる。
「誰も知らないノウハウ」とか「いますぐ売り上げが10倍に」とか「これでモテモテ」なんていう、情報商材も相当怪しい。
今の流行は「フェイスブックで販促するヒミツ」と言ったところだろう。

ハッキリ言って、今の世の中に秘密なんてものは、そうそう存在しない。

本人がその情報を知らないだけか、知っていてもその情報を効果的に使いこなせないだけではないのか。
あるいは、情報の取捨選択ができないだけではないのか。ホームページ制作も、SEO対策も、見込み客の集客も、
情報商材の“特別な”内容も、必ずどこかで情報は開示されている。誠実な代行業者なら、その仕組みやノウハウをきちんと説明し、
顧客が実行できない部分を適正な価格で請け負うものではないかと思う。

「インターネットの業者に騙された」「高い金を払ったのに結果が出ない」という話をよく耳にするが、
今よりさらに無知だった頃の自分の、当時の心境が思い出される。何が正しくて、何が間違っているのか、
基礎知識もなく、的確な助言者もいないから、選択を迫られる場面でジャッジできない。そして、その時の気分や感情、
あるいは投機的な勢いで物事を決めてしまう。その結果、失敗するという図式がそこにある。

顧客をサポートするサービスをビジネスにしているのなら、そこで誠実なアドヴァイスをするはずだ。
例え、結果的に発注が獲れないとしても、顧客の利益に繋がらないのならダメな物はダメだと止めるべきだと思う。
そうはしないで、高いサービスを売り込めればそれでOK、後のことは知らない。あるいは違法行為ギリギリの方法で
無理矢理に成果を出すスタイル。さらには刑務所の塀の上を歩くがごとくの手口。そんな連中が少なくないのが
ネットビジネスの実態だと思っている。

いつの世も、無知に付け込む商売はなくならない。電気信号で成り立つインターネットという仮想区間だからこそ、
そのロジックや方法は欺瞞と虚構に満ちていると言ってもいい。

明日は、そういう業者の食い物にされているらしい、顧客のところへ出向くことになっている。











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