静電誘導の原理を利用すると、物体の帯電の正負や程度を調べることができます。そのための装置がはく検電器(箔検電器)です。
上部の金属板に帯電体を近づけると静電誘導が起こり、前項で説明したように帯電体に近い金属板には異種の電荷が、遠い金属はくには同種の電荷が現れます。はく同士は同種の電荷なので反発して開きます。帯電体の電気量が大きいほど、はくは大きく開き、帯電体を遠ざけると、はくは閉じます。
はく検電器の利用方法を以下で説明します。
(1)はく検電器を正または負に帯電させる方法
(a)用意した帯電体が正に帯電していて、はく検電器を正に帯電させたいとき
(b)用意した帯電体が負に帯電していて、はく検電器を負に帯電させたいとき
(c)用意した帯電体が正に帯電していて、はく検電器を負に帯電させたいとき
(d)用意した帯電体が負に帯電していて、はく検電器を正に帯電させたいとき
(a)の場合は、帯電体を金属板にこすりつけてしまいます。(b)の場合も同様です。
(c)の場合は、帯電体を金属板に近づけたあと、金属板をアースします。(あるいは、金属板をアースしながら帯電体を金属板に近づけます)。アースとは電荷を逃がして追いやることです。アースは地球の Earth からきています。金属板に手を触れることにより、電荷を手から胴体、足を伝わって地球に逃がしてやるのです。地球はあまりにも大きいので電荷をいくらでも吸収します。アースすることを別名、接地する、ともいいます。記号で書くと です。
アースすると金属はくに電荷がなくなり、金属はくは閉じます。金属板をアースしている最中も、金属板の負電荷は帯電体の正電荷に引きつけられて動きません。帯電体と手を遠ざけると負電荷は、はく検電器全体に広がり、再び金属はくが開きます。こうしてはく検電器を負に帯電させることができます。(d)の場合もこれと同様です。
(2)帯電体の電気の種類(正なのか負なのか)の判定方法
近づけていく帯電体の電気の種類が分からないとき、それを判別する方法を説明します。
まず、はく検電器を帯電させます。上の(1)の方法で正か負に帯電させます。たとえば、負に帯電させたとして説明すると。(正に帯電させても逆転して考えればいいので同じことですが。)
はじめに開いていた金属はくがさらに大きく開いたとすると、それは金属板上の負電荷が下に追いやられて、金属はくが大きく開いたのです。金属板上の負電荷が下に追いやられたということは、近づいてきた帯電体も負に帯電していたということです。
逆に金属はくが閉じたとすると、それは金属はくの負電荷が上に引きつけられて、金属はくの電荷が無くなって金属はくが閉じたということです。上に引きつけられたということは、近づいてきた帯電体が正に帯電していたということです。
(3)はく検電器が帯電しているときのその電気の種類(正なのか負なのか)の判定方法
近づけていく帯電体が負に帯電しているとすると、(正に帯電していても逆転して考えればいいので同じことですが、)
少し開いていた金属はくが大きく開いた場合、電荷が下に追いやられたということだから、電荷は近づいてきた帯電体と同じ負電荷ということになります。つまり最初は、はく検電器は負に帯電していたということです。
少し開いていた金属はくがいったん閉じてから開いた場合、電荷が上に引きつけられて、金属はくの電荷が無くなって金属はくが閉じて、その後、電荷と逆の電荷が降りてきて、金属はくが開いたということだから、電荷は近づいてきた帯電体と逆の正電荷ということになります。つまり最初は、はく検電器は正に帯電していたということです。
【電荷が動く様子の説明】
正電荷、負電荷が動くことの説明をもう少し詳しく行います。特に正電荷がどうして動くのか、あるいは動くとみなしてよいかを説明します。
前項のように以下の3つのイラストを用いて説明します。
金属の棒(導体)に正に帯電した帯電体が近づくと、金属の棒の一番上の原子の中の電子(負電荷)が引きつけられます。
すると次に、金属棒の一番上の正電荷になった赤い部分が二番目の原子の中の電子を引きつけます。
これが次々に起こり、金属棒の上の方は負に帯電し、下の方は正に帯電します。
このとき実際に動いたのは電子(負電荷)ですが、同時に正電荷が動いたようにも感じます。負電荷が上に動くことは正電荷が下に動くことと同じなのです。
さらに金属棒に手を触れ、アースした場合は左図のようになります。
地球から金属棒に電子(負電荷)が移動したのですが、このことは金属棒から正電荷が地球に逃げたともみなせます。(左図において、金属棒上部の2つのは、その上の帯電体と引きつけ合って動かずにいます。)
アースしたことによって地球は正に帯電することになりますが、地球の持ってる電荷は無限とみなせるので、地球の電荷は変わらないとみなせます。
このように、負電荷の動きは、正電荷の逆の動きとみなすことができます。このことは次項で説明する電流の向きが電子の動きの向きと逆であることの説明にもなります。