スカーレット手帖

機嫌のいい観客

おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』

2016-01-17 | 観劇ライブ記
最近、自分の感情の調節がうまくいかないことが多く、落ち込んでいる。

特にイラつきの調整が突然難しく感じられて、
夫に向かってギャーギャー叫びながら、
「ああ、これがヒステリーというやつだな」と淡々と思っていることもよくある。
いい年なのに情けない。しかしその情けなさにまたイライラしてきて、止められないのだ。

ーー

とまあ、こんな情緒不安定な状況で「おん・すてーじ 真夜中の弥次さん喜多さん」を観覧へ。
行きがけにまた1ヒステリーを起こしながら向かいました。アップは十分だ。

恋人同士の弥次さん喜多さん(喜多さんはヤク中)が
ぺらっぺらのお江戸を抜けてリヤルを探すお伊勢参りへの旅路のお話。
まあミーハーなので2005年の映画版で作品の存在を知った派です。漫画もチラ読み。
お話全体、起承転結が特にない支離滅裂の無限ループ地獄のようなところがあり、
原作しりあがり寿なのでなんかこう、全体的にいい意味で阿鼻叫喚な感じもあり、
そこが魅力とも言え、入り込むのに難しい部分とも言えると思う。

そんな感じなので、
今回の舞台でも登場人物が全員情緒不安定でした。逆に安心しましたわ。


弥次さん:唐橋充さん
この人ネバーランドの時から思ってたけど本当にセクシーですね。
弥次喜多という演目+唐橋さんが弥次さんだから見に来た という感じだったのだけど
来た甲斐あったな、と思いました。

喜多さん:藤原祐規さん
フッキーさん、名前と存在は十分に認知していたものの今回初めて見ました。
地味かと思ってたらこの人もえらいセクシーでした。役柄だけの問題ではないと思う。
そして演技が上手かった。声がいい(声優だ)。
弥次さんと並んだときに若干大柄というのが原作通りでまたよかった。
この人が意外に大柄なのか唐橋さんが意外に小柄なのか。

とにかくまあ、弥次喜多が想像以上に好みなバランスに仕上がってました。これにびっくり。

あとは、
ジャンヌダルク(演:富田麻帆ちゃん)が「ええ声」という感じ、
松本寛也くんは「やりたがり」という感じ。
(途中の茶番コーナーで期せずして客席とコール&レスポンスが発生したところでめちゃくちゃ笑った)
ミカシュンは「技巧派」という感じ、
伊藤修子さんが「スパイス 兼 進行係」という感じなど。

セットは超シンプルで、うずまき柄(しかもえんぴつ手描きみたいな)の可動式襖風壁2枚、
小道具の出し入れは黒いトレーナー着たスタッフが普通に舞台に出てきて行う(これも演出ですね)で、
舞台装置はそんなに金かかってないな、という感じだったし
お話と演出からして、あまり大きな会場向きでもないかなとも思うし、で
実際席もそんなに埋まってなかったのだけど、
その「微妙にそこそこ空席ある」というのがまた、ある意味「弥次喜多っぽい」感じがあった。
「爆笑しに来い」とも言えない、「哲学だ」というほど主張はない、
「シュールです」と看板掲げられるほどでもない、
シアターGロッソマングリーンなど、何回も出て来ていたが、「ややウケ」の連続という感じだった。
常に微妙~に絶妙な間が存在(「絶妙な間!」とは言い切れない)。
ああ、その感じがとてもリヤルですね、というか。
これは失敗なのか、それとも余白なのか、なんなのか という。

私はこの作品見ながら、決していっぱい拍手してはいない。よくわからないところもあった。
あんまり親切ではないと思った。狙い通り仕上がっているのか、つかみづらかった。
でも嫌いではない。そして感想を書いておこう、という気にはなった。
なんとも妙な作品だった。見に行ってよかったどうかと問われれば、うん、良かった。
そして帰ってきてから藤原祐規を検索しまくって居る。

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