東京・文京区の本郷地区は、多数の学校が集まる指折りの文教地区で、“桜”を巡る受験物語の舞台になった。テレビドラマの原作になった「下剋上受験 両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した!」に登場する桜蔭学園は、江戸幕府転覆を図った慶安事件(1651年)の首謀者、丸橋忠弥の名を取った忠弥坂を上った所にある。
同校は女子校として、長く東京大学合格者数日本一を誇る、私立の中高一貫校。女子学院(千代田区)、雙葉学園(同)と合わせて「女子ご三家」と呼ばれている。学校周辺の電柱広告には、医学部専門塾などの文字が並んでいる。
忠弥は浄瑠璃や歌舞伎の登場人物としても知られているが、中学受験界では「桜蔭坂」の方が通りがよい。毎年2月1日に中学入試が行われ、狭き門を突破しようとする受験生と保護者たちが長蛇の列を作る。
安田講堂や三四郎池でおなじみの東大本郷キャンパス方面に向かって北上すると、本郷3丁目交差点のそばに、菅原道真を祭った桜木神社が現れる。
落ちこぼれ生徒が東大合格を目指す受験漫画「ドラゴン桜」で、センター試験当日の朝に生徒2人が参拝。また、主人公の桜木先生と同じ名であることから、今なお多くの受験生に人気の神社だ。
本郷が江戸の街の北限であったことを伝える古川柳、「本郷も かねやすまでは 江戸の内」で知られる小間物店「かねやす」もこの地にある。
享保年間(1716~36)に、歯科医の兼康祐悦が「乳香散」という歯磨き粉を売り出したところ、大当たりして店は大繁盛。大火や震災、戦災をくぐり抜け、300年を経た現在も、7階建てのビルの1階で営業を続けている。
【メモ】桜蔭学園の卒業生には、女優の菊川怜さんらがいる。