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忘れられない選手(走り高跳び・杉岡邦由選手)

 オリンピックに4回も出場した名選手なのに今はあまり語られない選手に、走り高跳びの杉岡邦由(すぎおか・くによし)選手がいる。ローマ、東京、メキシコ、ミュンヘンと出場し、ジャンプのスタイルも正面跳び、ベリーロール、背面跳びと三種類の変遷を経ながら、常に日本のトップクラスの実力だったという、信じ難い能力を持った選手だった。私が陸上に夢中だった中学・高校の頃はベリーロールで跳んでいた。

 以前の国立競技場で実際に見た杉岡選手のジャンプは迫力があった。当時の日本記録は2m10センチ台だった。高跳びの予選前に1m80位にバーを設定して、各選手が調整のジャンプを行う。この高さだから落とす選手は少ないが、杉岡選手のジャンプは別格だった。

 杉岡選手の特徴は、フォーム全体のリラックス感と、それとは対照的なジャンプの瞬間の切れ味の鋭さである。まるで着流しでも着た長身のアンちゃんが、無造作に手首を脱力したままゆっくりと走り出すような感じで、しかしジャンプの瞬間、それは目にもとまらぬ速さで完了する。そして次の刹那、体はバーの20㎝以上上を、あざ笑うかのように越えて行くのである。フォームも適当に力を抜いた感じで、まだ本気を出すまでもない、といった印象を与える。

 これには痺れた。「かっこいいなあ!」と本気で思った。自分もあんなふうに跳びたいなあ。

 だからそれを真似た。しかし私のジャンプは杉岡選手と比較にならない低空飛行である。私の記録は1m77が最高で(いちおう1m80に掛けてあったのでそう言ってもいいのだが、念のためと思ってバーの中心地点の高さを測ったら1m77だったのである。あとで「測らないでおいて、1m80を越えた、と信じていればよかったと後悔した」、あの予選のバーも越えられないのである。

 その杉岡選手の映像は、残念ながらネットにも発見できない。どこかに残っていないだろうか。イラストは、当時の雑誌の連続写真で見た、杉岡選手の踏切の瞬間を、記憶をもとに描いたものである。雰囲気が伝わるとよいのだが。

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