メランコリア

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『21世紀の平和を考えるシリーズ4 飢餓』(ポプラ社)

2013-10-10 11:33:40 | 
『21世紀の平和を考えるシリーズ4 飢餓』(ポプラ社)
大貫美佐子/監修 国連世界食糧計画/文

たくさんの食べ物を捨てている日本と比べて、同じ地球に住む人間同士とは思えない日常生活の違い。
世界中の人たちが充分に食べる食料はあるのに、国の貧富の差が問題。
貧困や飢餓は、資金、物資を援助するだけでは根絶できない。
自然環境破壊などが複雑にからみあった背景を知って、
政治、教育、地元での産業など総合的に見る必要があることが分かる。


【内容抜粋メモ】
約62億人の人口のうち、約80%が貧しい途上国で暮らし、約8億人が飢餓で苦しんでいる。

飢餓の原因のひとつに環境破壊による自然災害がある。
その他、人口増加、人口の都市集中、輸出作物と食糧農産物のアンバランス、紛争、貧困、教育、外交問題など、
貧しい国が、なぜ貧しさから抜け出せないのか? その背景をさぐることが必要。

栄養不足人口は、世界で8億人。アフリカ、南アジアで増える傾向にある。
「世界食糧サミット5年後会合」では2015年までに半減させる目標を採択した。


****************************飢餓が起きるわけ

●自然災害
・干ばつ
・大洪水
・バッタなどの病害虫の大量発生によって、何万トンもの農作物が食べられてしまう。

●人口増加
過放牧:遊牧民の人口増加により、家畜数も増加。牧草が食べつくされ→雨が降らなくなる→砂漠化の悪循環。
・森林伐採:日本などの先進国が家を建てたり、紙の原料であるパルプをつくるのも大きく影響している。

●人口の都市集中
フィリピンでは、ゴミの山から金属のかけら、空き缶などを集めて換金している。

●輸出作物と食糧農産物のアンバランス
自分たちの食糧より、コーヒー、お茶、カカオ、綿花、ピーナッツなどの
「換金作物」(輸出するための農産物)を優先させている地域が多い。
国の財政を支える収入源となるが、自給用の食糧がなくなり、森林伐採の問題もある。

●内戦・紛争
コソボ自治州では長い紛争で内戦状態になり、難民生活を強いられている。
故郷に帰っても、地雷などが残り、財産もないので食べていけない。


****************************世界の飢餓事情

●エチオピアの干ばつ
 
約1000万人が飢餓に苦しんでいる。
農作物は枯れて収穫できず、家畜も食べるものがなくて死んでしまう。


●援助食糧
NGOなどが小麦、大豆、トウモロコシなどを支援している。
なるべくその国の食習慣を考慮にいれ、あらかじめ調理されているため、簡単に食べることができる。

 
鍋の中身は「リクニパーラー」という混合食糧


●飲み水がない

降水量が非常に少なく、灌漑施設、井戸が不足し、干上がってしまうため、水も配給に頼っている。
水が澱んでいるため、マラリアの病原体を運ぶ蚊や、ツェツェバエなどの危険な害虫の発生源になってしまう。
人間は、水があれば1ヶ月は生きられる。水なしでは1週間も生きられないと言われる。


●キャッサバ

アフリカ、アジア、中南米などでは、干ばつに強いタロイモの一種が食べられている。
よく水洗いしないと毒素で体がマヒしてしまうが、水もないため、毒素の強いキャッサバを食べて
半身不随や全身麻痺になる人も大勢いる。

アフリカ北東部では、トウモロコシや「テフ」という穀物が食べられている。

途上国では、薪が主要な燃料。
干ばつで森林が枯れ、枯れ木を燃やしてしまうと、もう木がはえてこない。


●学校給食と教育

貧しい家庭では、子どもは重要な労働力。学校に行けない子も多い。
ネパール、パキスタンなどでは、とくに女の子は学校に通わせてもらえない。
小学校を卒業せず、識字率も低いことが、将来の生活、雇用、貧困にも影響している。

2000年には54カ国で1200万人の小学生に学校給食が行われた。
登校した子どもには月3Lの食用油が配られるようになってから、
学校に通わせる親が増えたことで教育が受けられるようになった。
「学校で学ぶだけではなく、地域に根ざした生活を大切にする教育もある」とタンザニア元大統領ニエレレさんは言う。


●栄養不足と発育の関係
栄養が不足すると、人は無気力になり、集中力低下、注意力散漫、学習能力低下、仕事の能率も下がる。
子どもはお腹にいる時から3歳までが栄養不足の影響をもっとも受けやすい。
幼い頃に飢餓状態にあると、脳の発達が損なわれ、精神的な影響も大きい。
栄養不良の赤ちゃんの脳をMRIで調べた結果、脳が縮んで異常が見られた。
90日間の栄養補給後、ふたたび調べたら、ほとんどの赤ちゃんの脳が回復していた。

栄養不良=エネルギーやたんぱく質などの栄養素がひどく不足している状態。内臓機能低下、下痢を起こしやすくなる。

<外見にあらわれる症状>
・顔がむくむ
・唇や頬がカサカサになる
・お腹がふくれる
・髪の色が褪せる
・目がうつろになる
・ひどく痩せる
・皮膚にハリがなくなる
食糧が充分あっても、親が面倒をみることができない場合も起こる。


栄養不良のために肌の色素が抜け落ち、体がむくんでいる

「クレチン症」
ヨウ素不足により罹る病気。甲状腺の機能低下、体が小さく、皮膚がむくみ、知能に影響がでる。


年に2回ビタミンAのカプセルを配布している


水田づくりに取り組むコートジボワールの人々(日本の水田風景と全然違うなぁ
水田開発に詳しい日本の技術者が指導している。


●飢餓による被害を受けやすい人

・都市部より農村部
エチオピアは数年にわたる干ばつで、農産物の90%がダメになった。

男性より女性
社会的に弱い立場で、妊娠・出産により肉体的・精神的にも負担が大きい。

・大人より子ども
体力のない子どもは、心にも体にも飢餓による影響が大きい。


****************************対策

●教育/識字力をあげる

アンゴラでの識字教育のようす

文字の読み書きができないために、騙されて土地や家を売ったり、低賃金で働かされたり、
数字や計算が分からずに借金を背負ったりするため、国連機関などは社会的自立のプログラムを実施している。


●植林活動
●治水活動
●農業指導
お金を使って田畑を作ってあげるのではなく、農家が自分でつくるのを支援する。
1日の労働とひきかえに3kgの米を援助する。
アフガニスタンの工場では、約660人の女性がパンづくりを学んでいる。その間、1人1日2.5kgの小麦がもらえる。


●人口抑制対策
アフリカでは、子どもは貴重な労働力とみなされ、乳児死亡率も高いため、人口が急激に増加している。年平均3~4%増。
エチオピアでは、2025年までに出生率を女性1人あたり7.7人→4人に減らすことを目指している。

●働く場の確保/職業訓練

バングラデシュでは、養殖池建設を行い、魚でお金を得ることができる。
女性には裁縫、民芸品づくり、野菜栽培などの職業訓練が行われ、
西アフリカのリベリアでは、紛争中に兵士だった若者の社会復帰のために大工などを教えている。

●技術援助
アフリカは農業革新から取り残された。各国の学者、技術者が開発・普及に協力している。

いま、世界では、世界の総人口が必要とするのに充分な食糧がある。
豊かな国と、貧しい国の差が大きい問題を解消しないと、飢餓もなくならない。


****************************飢餓に関連する法規・団体

<法規>
「国際連合食糧農業機関憲章(FAO憲章)」
「国際人権規約A規約・社会権規約」
「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」

<団体>
「国連世界食糧計画(WFP)」世界の食糧援助の40%を行っている。
「ハンガー・フリー・ワールド」
「日本赤十字社」


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