ロンバケ

2006年03月15日 | 大滝詠一

2001年3月21日に『ロンバケ』がデジタル・リマスタリングを施し、『20th Anniversary Edition』としてリイシューされた。『ロンバケ』91年盤はアナログの音に近づきはしたけれど凌駕するものではなかったそうだ。かなりの試行錯誤の中でようやく完成した『20th Anniversary Edition』。デジタル・オーディオの新しい面が出ないのであれば91年盤のままでいいんじゃないか、大滝詠一はそう思ったいたらしい。

萩原健太「とすると、今回のリマスターは?」
大滝詠一「天守閣の復元がどうだ...っていうことみたいなことなんだよ、どうやら。どうも、こうだったようだ、と。アナログを聞いたり、10年前のCDを聞いたりして想像はできるけれども、もう一度、20年経った復元図ってことなんだよ。架空のものなんだよ。もはやないのよ。そこがポイントなんだけど」
萩原健太「20年前の精巧な復元になったんですか」
大滝詠一「いや、あれはあれ、これはこれになった。そうならなければやめようと思った。『ロンバケ』のアナログ盤が出て、'82年にCDになった時、CD自体のレベルの問題があってね。デジタルのピークをマイナス20デシベルに抑えたとき、VUのマイナス0に抑えられるくらいのものが当時のオーディオだったのよ。それ以上にでかいとスピーカーが飛んだ。というか、当時マイナス20に抑えても飛んだっていう話があって。それが『イーチ・タイム』を出した時にマイナス16になって。その次の『ビーチ・タイム・ロング』(85年)の時に14にして、91年の"CD選書"で12にした。で、今回は8。もちろん、20でも自分で20デシ上げて聞けばちょうどいいんだよ。理屈から言えばね。数値的には同じになる。でも、同じ音はしないよ。同じものでも等価じゃないところがオーディオの面白いところなんだけどさ。そういう時代の流れがあって、マイナス20、16、14、12ってなっていって。"選書"のときから10年間いっさいリマスタリングしてなかったの。でも、世の中では12から徐々に上がっていて。時々ラジオでかけられると、俺の音だけが下がってるのよ。レベルが。でも、今日の日があるために待ってたの。10年間。しないで。チャンスはないことはなかったの。95年に旧譜をリマスターして、『ナイアガラ・ムーン』(75年)とか出した時とか。あの時もチャンスだったんだけど、2001年まで待ってたの、10年間も」
萩原健太「ということは、その段階でもう2001年の新作はないぞって気持ちだったんですか」
大滝詠一「どうかな。でも、テンションが全然盛り上がらないのとね、新作アルバムと呼ばれるものは俺の中ではやっぱり、"天守閣の夢よ、もう一度"なのよ。安土城の話なのよ。でも、安土城の天主はもう死んだんだよ。渡り鳥の心情っていうのがあるの。結論めいてるんだけど、渡り鳥っていうのはその時々の自分の気持ち高まりなの。だから今なら今、なの。気持ちの高まりがないものはやらないことにしている。だから...」
レコード・コレクターズ2001年4月号Vol.20 No.4

『20th Anniversary Edition』はオリジナルコンフィデンス(オリコン)のアルバム・チャートで最高位13位、現在までの総売上枚数は約6万6千枚(オリジナルコンフィデンス2001年8月20日号より)。また、2001年の4月よりスタートしたオリコンのカタログ・リイシュー・チャートでは、記念すべき初代1位に輝いている。

1991年にリリースされた同アルバムの選書版は、オリコンのデータで推定6万9千枚売れたことになっているのだが、この10年での売り上げ実数は45万枚なのだそうだ。90年代に何もなかったといわれる大滝詠一だが、『ロンバケ』だけでもそれだけ売ったのだと反論する。近頃は宇多田ヒカルが700万枚売ったとかいわれているけれど、三橋美智也は1億枚以上売ってるし、美空ひばりだって8000万枚以上だ。発売時1週間に45万枚売れるのと、10年で45万枚を売り上げるのと、数値が同じなら、数値の評価は1週間であろうが10年であろうが同じであるべきだと。

これまで17年新譜を出してない大滝詠一。それは新たな(休止期間の)記録になるのではないかと騒がれている。が、しかし新譜を出せなくなったり、そのまま消えてしまった人もいるわけで、休止期間の記録を作るには新しいアルバムをリリースしなければ駄目らしい。

「なんか対策を考えなければならないね。今日インタビューして良かったね。危うく記録を逃すところだった。それでは記録達成を目指すことにします。素晴らしい指摘ありがとうございました」
大滝詠一(オリジナルコンフィデンス 2001年8月20日号より)。

■A Long Vacation 20th Anniversary Edition
チャート最高位13位

君は天然色
Velvet Motel
カナリア諸島にて
Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語
我が心のピンボール
雨のウェンズデイ
スピーチ・バルーン
恋するカレン
FUN×4
さらばシベリア鉄道
Bounus Tracks-Instrumental-
君は天然色
Velvet Motel
カナリア諸島にて
Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語
我が心のピンボール
雨のウェンズデイ
スピーチ・バルーン
恋するカレン
FUN×4

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3月21日(火)に大瀧詠一、山下達郎、伊藤銀次のコラボレーション作品『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 30th Anniversary Edition』がリリース。
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