教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

終戦記念日

2005年08月15日 23時55分55秒 | Weblog
 今日は、終戦記念日でした。
 といっても、私は黙とうもせずにふらふらしていた無自覚者ですが。
 昭和20(1945)年8月15日正午、昭和天皇の玉音放送がありました。前日にポツダム宣言を受諾し国家として無条件降伏、翌日15日の玉音放送によって国民に終戦が告げられたわけです。今から60年前の今日は、日本国民あげて太平洋戦争終結を認識した日です。そして、実質的に日本が対外戦争を放棄した日でもあります。
 最近、60年前に終結した戦争を根本的な原因として、憲法9条問題、歴史教科書問題、領土問題、靖国問題などの問題があります。今日、NHK総合にて「日本の、これから」という番組がありました。上記のような問題をふまえて議論する番組で、三部にわかれて合計5時間ちかくの放送時間がさかれていました。町村外務大臣をはじめ、ジャーナリスト、学者、一般の日本人、アジア諸国から50人くらいが集まり、意見発表・交換を行う生放送番組でした。番組名は「日本の、これから」ですが、基本的な進行は、「これからの日本は中国・韓国とどうつきあっていくべきか」という主題に乗っ取って進行されたといえます。このような問題を取り上げた、今まで私が見てきた番組は、コメンテーターや司会者の主張があまりに強すぎて、半ば決裂状態で放送時間終了に陥る番組ばかりだったと記憶しています。しかし、今回の番組は「これから」を考えることが主題であったため、非常に建設的な議論が展開されていた感を受けました。
 「日本の、これから」という番組を見て、思うところがたくさんありました。その中で特に驚いたことを一つ。この番組は生放送中に携帯電話を通して何件かアンケートをとり、5万・6万というすさまじい数の回答数を得ました(すごい!)。そのアンケートの一つに、たしか日中・日韓関係の改善のためにどちらが歩み寄るべきか、という問いがありました(出演者に質問が悪いと責められていましたが(笑))。その回答は、双方が歩み寄るべき、という回答が全体として一番多かったのですが、年齢別の結果を見たときに愕然としました。このデータに関してはほとんど解説がなく、ちらりと見えただけですので、明確な数字は見えませんでしたが、20代・30代の回答は双方が歩み寄るべきという回答が、他の年代に比べて明らかに少なかったのです。しかも、20代の回答は「歩み寄る必要はない」という回答がかなり多く、私の印象では「双方が~」よりも多かったようにも見えました。若い世代に、このような強硬な姿勢を主張する人が多いことに驚きました。これは、最近幅をきかせてきた排他的な国民主義とでもいえそうな風潮が原因なのか、反日デモや「自虐」史観教育の反動が原因なのか、かなり判断の難しい問題でしょう。これからの日本社会を担う若者にこのような強硬な姿勢が多く現れることは、危機感を持つべきではないでしょうか。
 ただ、出演者からは非常に穏健かつ説得力のある発言が多く、安心して見ることができました。最後に出演者全員が、ホワイトボードにこれから日本はどうすべきか書きました。その内容はさまざまでしたが、「自ら(近現代史)を知ること」「多様な視点をもつこと」「互いに和解すること」というメッセージが取り上げられていました。互いを理解すること、自らを理解することが、この番組の議論をふまえたメッセージであり、そしてNHK側の意図だったのでしょうね。画面の端にちらちら見えた他の出演者のボードを見ると、穏健で単純なメッセージが比較的取り上げられていた作為的な印象を受けなくもありませんでした。しかし、これこそ今後の日中・日韓関係の方向を指し示す、大事な目標だろうと思います。
 私は、すぐにとはいかないまでも、いつかは日本と中国・韓国が衝突なく手を携える時がくるだろうと信じています。番組中で、総理大臣の靖国参拝や歴史教科書の記述が発端になって、日本がまた侵略戦争をする国になるんじゃないか、という外国の方の心配が吐露されていました。しかし、外国に軍隊を派遣して積極的に対外戦争を行うことは、60年前に日本国民全員が放棄したはず。私は、他国の人々を力づくで従わせることは、今後の日本にはありえないことだと確信してます。
 常識ある人は、戦争が人権を侵害しついには人を殺すことを知っているし、人を殺す権利は誰も持っていないことを知っています。常識ある人々が増えることこそ、60年前の父祖たちの経験を無駄にしないことにつながるのだと思います。これこそ、戦没者を尊重することではないでしょうか。我々教育に携わる(携わる予定の)者ができることは、常識ある人間を育てること、これに尽きましょう。
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