教育史研究と邦楽作曲の生活

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目次詳細(学校道徳教育の基礎 第1~4章)『教育の理論④道徳教育の理論と方法―道徳を考え議論するために』

2023年02月06日 22時26分00秒 | 目 次
 久しぶりにKindleテキストの目次紹介です。第4巻の目次紹介が遅れておりました。
 教育の理論第4巻『道徳教育の理論と方法』は、序章・本文2部13章・結章で構成しています。小・中学校における道徳教育の理論と方法をまとめた内容で、「特別の教科 道徳」(道徳科)の指導案を最低限のことを踏まえて編成できるようになることを目指しました。道徳科の指導案を編成するには、そもそも道徳教育が何を目指しているか、現代日本の学校道徳教育の仕組みがどうなっているか(なぜこうなっているか)を知らないといけません。第4巻第1部の第1~4章は、こういう視点から、道徳教育のそもそもを考え、現代日本の学校道徳教育の目標と道徳科独特の位置づけについて整理しています。日本の小中学校における道徳教育の理論・方法は、世界共通・普遍のものではなく、良くも悪くも日本独特の個性的なものです。日本の学校道徳教育の個性について、第1章では「道徳」という言葉から、第2章では現行の学習指導要領やその背景にある法体系における目的・目標規定から、そして第3・4章では明治から平成(令和)までの日本の道徳教育史から探ろうとしています。
 第4巻第1章では、「道」と「徳」の語源と、人間らしさとの関係から道徳教育とは何かを考えます。特に、道徳は行為であり、道徳教育は頭でわかっただけでなく行為まで及ぶ必要があることを指摘しています。第2章では、学校道徳教育の基本的な方向性として欠かせない、学習指導要領と各法令における道徳教育の目的・目標について整理します。ここでは、道徳教育が善悪を教えることではなく道徳性(道徳的な思考力・判断力・実践意欲・態度)を育てるものであることを確認することが大事だと考えています。第3章では、「特別の教科 道徳」(道徳科)がなぜ設置されたか、その設置に至る歴史と、戦前の道徳教育専門の教科「修身科」との比較から考察します。ここでは、道徳科と修身科とが異なるものであり、道徳科は現代的課題に応えるものであることを明らかにします。また、修身科の歴史を「無視」ではなく「歴史」や「教訓」として捉えていけるように道徳教育に携わる教師としての歴史認識を育てようとしています。第4章では、戦前日本の修身科以外の道徳教育の歴史と、道徳科の直接の前身ともいうべき「道徳の時間」の設置とその展開をめぐる歴史を整理しています。ここでは、現代日本の学校道徳教育の基本である「教育活動全体における道徳教育」について、確かな歴史認識を育てることをねらっています。修身科以外の学校道徳教育を含めて日本道徳教育史を捉える認識がなければ、例えば、場合によっては「アメリカに押し付けられたもの」という誤りにも同意しかねませんし、修身科廃止「だけ」で戦前日本を克服したような誤った歴史認識をもつことになりかねません。また、1958年以降数十年間積み重ねられてきた「道徳の時間」の実践を「無視」してしまったり、それらの実践から教訓や課題等を引き取りにくくなったりしてしまいます。現代日本の学校道徳教育は、その原理や歴史をきちんと踏まえることで、しっかり認識できるようになるはずです。

 
白石崇人『教育の理論④道徳教育の理論と方法―道徳を考え議論するために』Kindle、2022年。

序 章 ―道徳授業に向き合うために
 第1部 道徳教育の基本
第1章 道徳とは何か? ―人間らしさと道徳
 1.「道」と「徳」
 (1)規範としての「道」と行為としての「徳」
 (2)人間らしい生き方としての道徳
 2.人間らしさと道徳
第2章 学校の道徳教育は何を目指すか? ―学習指導要領から
 1.学校道徳教育の目標
 (1)学校の教育活動全体における道徳教育の目標
 (2)「特別の教科 道徳」の目標
 2.学校道徳教育の目標の先にあるもの
 (1)道徳性をもった「主体性のある日本人」
 (2)学校教育法・教育基本法の目的、日本国憲法の精神
第3章 「特別の教科道徳」とは? ―成立経緯と戦前修身科から考える
 1.「道徳科」設置のねらい
 (1)「特別の教科 道徳」の新設
 (2)道徳科新設の背景―いじめ問題・規範意識低下対策、「心の教育」
 2.戦前の「修身科」の特徴
 (1)和漢洋の折衷的教材
 (2)徳目主義・人物主義・暗記主義
 (3)子どもの道徳的生活に対する関心の芽生え
 3.「道徳科」と「修身科」
第4章 なぜ「学校の教育活動全体における道徳教育」か? ―戦後日本道徳教育史
 1.修身科だけではなかった戦前日本の道徳教育
 (1)学校管理法・訓練法・訓育法
 (2)修身科以外における道徳教育
 (3)課外活動も含めた道徳教育
 2.社会科から「道徳の時間」の特設へ
 (1)社会科中心の道徳教育の挫折と「道徳の時間」の特設
 (2)道徳教育の目標・内容・方法の模索
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