太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

自分の名前を呼んでみる

2014-04-25 06:58:02 | 本とか
フランスで大ベストセラー、と書いてある、哲学の本を買った。

副題に、「やったら楽しい101題」とある。


名前も知らない食べ物を食べる だとか

おしっこしながら水を飲む だとか

頭の中でりんごをむく 

つまらないものに執着する  だとかいったお題が101項目紹介されている。

それぞれのお題には、その効果と所要時間、用意するものが書いてある。


その内容の、どうでもよさ加減、あほらしさ加減に惹かれた。

ばかばかしいことを真面目にやるのは好きだ。


1番最初のお題は、「自分の名前を呼んでみる」だ。

効果は「自分がもうひとりいる気がする」で、所要時間は約20分、用意するものは静かな場所。


通勤の車の中で、私は自分の名前を呼んでみた。

本には、

”はじめの15回ぐらいは、何もないところにむかってひたすら話しかけているような感じがするだけでしょう。

滑稽でばかばかしいものです。でも続けてください”とある。

声のトーンを変えたり、よび方を変えたりしながら、おもしろがってやっていたら、

不思議なことになってきた。


30回ぐらいまでは、確かに私が私の声を使って私の名前を言葉にしていた。


そのうち、3文字からなる私の名前が、意味のない、単なる言葉の羅列のように思えてくる。

つまり「いごた」とか、「えねが」とかいった、ただ言葉をくっつけただけの音に思えてくる。

よく知っている漢字を、ゆっくり大きくポスターなどに書く時に

これってこんな字だったっけ?と思う瞬間があるけれど、それに似ている。

これは名前なんだろうか、と思う。


そして、声を出している私と、それを聞いている私は、果たして同じなんだろうか、と思う。


私、は誰なんだろう、と思う。


その名前で呼ばれているのが私だろうか。


「その名前で呼ばれているのが私だろうか」と考えているのは誰なんだろう。


その時点で、呼んでいる私と、それを聞いている私は確実に別々だった。

呼んでいる私は、名前のあとに「ありがとう」と言った。

その途端、漫画みたいに涙があふれてきた。

聞いている私が、泣いていた。

呼んでいる私も、泣きそうな気持ちだった。





他のお題にはこんなのもある。

「何かをなくし、何をなくしたかも忘れる」

効果は「不安になる」所要時間は予測不能、用意するものは「無頓着」。


「身の上話をいくつもでっちあげる」なんてのもある。

効果は「人生観が変わる」所要時間は数ヶ月。

これはちょっと社会的にどうかと思うようなことだけれど、確かに

『人生なんか所詮作り話』と思えたら、気がラクになるかもしれない。



自分と遊ぶのに、最適な1冊。




「暮らしの哲学」  ロジェ=ポル・ドロワ 著  ヴィレッジブックス










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