むらくも

四国の山歩き

伯耆大山<天狗ヶ峰・剣ヶ峰>(鳥取県)…9/20

2010-09-22 | 日本百名山

天狗ヶ峰・剣ヶ峰          てんぐがみね・けんがみね



標高                1711m、1729m
登山口               鳥取県大山町文鳥水入口(2kmほど南東にある大山環状線沿いにある鍵掛峠登山口もよし)
下山口               三ノ沢文珠堂
駐車場               あり
トイレ               なし(文珠堂から大山環状線を1km余り南に下った鍵掛峠の駐車場にトイレ有り)
水場                なし

同行者               つむじかぜさん




一ヶ月ほど前から伯耆大山の最高峰剣ヶ峰に登ろうと思い、三ノ沢~槍ヶ峰・天狗ヶ峰・剣ヶ峰~キリン峠の周回コースを計画し温めていた。
その後、都合で予定を繰り延べにし、やっとこの日になったのです。
その間にこのルートについて、幾分か情報を集めることができたのですが、不十分だったようで、前日の夜まで、周回するかどうかで迷ってしまいました。

大山は多くの方がご存じのように、近年崩壊が続いており、特に2000年10月に発生した鳥取県西部地震では震源地がこの大山近くの深さ9km、M7.3、崩壊は一層進み、大山のマッターホルンと云われている烏ヶ山では登山道そのものが崩落し、未だに入山禁止になっている。

弥山~剣ヶ峰間が通行禁止のロープが、弥山側に張られていることは知ってましたので、そちらからの入山は念頭にはなかったのですが、三ノ沢から剣ヶ峰へは入山できるものと理解していました。
また、文珠越からキリン峠を経て、槍ヶ峰へも問題ないものと考えていた。
しかし、調べていくうちに、槍ヶ峰から剣ヶ峰はナイフリッジが続く、さらに槍ヶ峰からキリン峠間は相当な難所があって、特に槍からキリンを下山路で使うなんていうのは無謀に等しいとのこと。

迷いに迷った結果、「三ノ沢から登り、ピストンで下山」「キリン峠ルートから三ノ沢への反時計回り、しかし、これには条件付きで、キリン峠から先への崩落地が危険だと判断されたときは、素直に引き返す」、二者択一です。

前日の登山口でのテント泊で、この二者択一をつむじかぜさんと討議し、そして翌日にしっかり登ろうと考えたのです。



というわけで、19日夕方につむじかぜさんと待ち合わせをし、一路、瀬戸大橋を渡り、瀬戸道、山陽道、中国道、米子道を突っ走り、午後8時過ぎに大山環状道路脇にある文珠堂駐車場に到着。
テントを張って、ランタンを吊して、ビールと焼き鳥で前夜祭、空には星がなく、いやな予感、おかしい、天気予報では晴れ時々曇りの筈だが…。

つむじかぜさんに二者択一を提起してみた。
答えは、「大山は若い頃に何度か登ったが、最近のことは分からない。ただ、登山というものは山頂を極めればいいというもんではない、経過経緯を大切にし、そのためにもルートを重視しないと行けない」

ハレホレヒレハレ、ガッビョ~ン!
酔った頭でキリンルートに決定。
シュラフに潜り込んで、夜中にパラパラッとテントを叩く雨の音、その後は朝まで熟睡。

午前4時、携帯電話の目覚ましでぴょんと飛び起き、コッヘルで味噌汁を温め、おにぎりと漬け物に鰯の缶詰、蜜柑のデザート、テントをたたんでチャッチャッと出発したつもりでしたが…ザックを担いで文鳥水入口発が6:30丁度。見上げる空は雲ばかりなり。




入口には平成12年(2000年)10月鳥取県西部地震により烏ヶ山登山道崩壊、登山禁止の看板。
繁った沢を登っていく。

沢をやや右に詰めて文珠越に着くが、道標はあっても鍵掛峠からの道がない。




変だなと思いながら下り気味にブナ林を先へと進むと、ありました、右から鍵掛峠からと思われる道と合流。




途中に倒木が何本かあり、乗り越えくぐりしているうちに鳥越峠に到着。
右に行けば鳥越避難(駒鳥)小屋を経て振子沢-三鈷峰へ行くことが出来る。しかし、振子沢はいささか藪いているらしい。

道標にない左方向に濃い踏み跡がある。これがキリン峠への道です。




左折ししばらく歩くと前方尾根上右にちょこんと見える槍ヶ峰の矛先。
やがて白いポールのある肩に着く。なにかの看板らしかったがポールだけが残っている。
標高を確かめたが手持ちの標高計は1355m、キリン峠は1405m、もう少し先のようだ。先へと進んでみたが踏み跡にはやや灌木などの枝が覆い被さり、歩きにくい。




キリン峠と思われるところからは前方にドーンと槍ヶ峰東壁。




少し右手には振子山のなだらかな頭がちょこんと乗っている。

近づきつつ、槍ヶ峰へのルートを凝視したが、ここからではまったく見えない。
ジッとさらに凝視してみた。すると小さく小さく、白いポールが立っているのが見えた。(右写真の中央稜線上)どうやらルートはあのポールまでの尾根を結べばいいようだが、尾根は途中で崩れていて続いていない。





振り返ると烏ヶ山。右手には矢筈ヶ山と甲ヶ山。




もう一度立ち止まって、ジッと眺める。




鞍部へ降りて、緩やかな登りにさしかかると、そこは一面のお花畑。




イヨフウロ、ホソバノヤマハハコ、オオバギボウシ?イナカギク(後日追記訂正 ゴマナ)?




キュウシュウコゴメグサ、ダイセンオダマキ。




ダイモンジソウ、岩場に近づいてきた。




すると岩場の肩で男性が煙草をくゆらせている。紫煙がふわっと澄んだ空気に溶けてゆく。
岡山から来られた方で、文珠越-沢登り<文珠越から左折し沢(左写真)を上り詰める>
-剣ヶ峰-三ノ沢を辿るとのこと。




男性は先行された。続いてわたしたちも…。




足元は脆い安山岩溶岩。




前をゆくつむじかぜさんも慎重だ。




最難所。下は断崖、ゾッとする。




難所を過ぎても油断は出来ず、匍匐前進。




キリンから確認できた白いポールに着く。ちょっこし一安心。




アカモノ、イワカガミ。





ガス越しの槍ヶ峰。




岡山の方に三ノ沢分岐口を教えて頂く。




10:03、1692mピーク山頂。




崩壊するナイフリッジ。




お天気が良ければ素晴らしい展望が得られたが…。




10:14、天狗ヶ峰と書かれた分岐点と三鈷峰への道。

三鈷峰への道も崩落が激しいらしい。




天狗で記念撮影。
(と思いきや、実際の天狗ヶ峰はここではないそうでここは単にユートピアへの分岐点だったようです。後日に天空人さんからのご指摘で訂正かた追記)




和ませてくれたキュウシュウコゴメグサ。




剣ヶ峰へ。




10:26、剣ヶ峰。

岡山の方に弥山方面への状態をお伺いしたところ、崩落が激しく、特にラクダの背はあまりにも危険な状態になっていて、わたしもここのところ近寄らないようにしているとのこと。





遭難碑と方位盤。再び天狗へ。




下山開始。




三ノ沢分岐から急斜面を下る。唯一ほっとしたナナカマドの樹の潜り道。




三ノ沢、あまりにも痛い尻セード。




長いガレた三ノ沢が続くが、お花畑と思われるところもチラホラ。




やがて大きな堰堤を右に下り、次第に緩やかになる。フッと振り返るが、北アルプスを彷彿とさせる勇姿もガスに煙って見えない。

12:35、文珠堂登山口に降り立つ。親切に案内および先導をして頂いた岡山の男性とここでお別れです。
この山行で命を縮かめる思いをしましたが、この方に、もしキリン峠の先の肩で出会わなければ、引き返していたものと思われる、感謝です。

下山後もしばらく緊張は消えず、足はガチガチ、短時間の山行にもかかわらず、筋肉痛。しかし、大山は魅力に溢れた山です。
あらためてその思いを強くしました。




文鳥水入り口6:30-文珠越6:59-鍵掛峠道合流7:14-鳥越峠7:44-キリン峠手前ポール8:21-最難関登り9:25-白いポール9:42-三ノ沢分岐口9:54-10:031692mピーク10:10-分岐点10:14-10:26剣ヶ峰10:54-分岐点11:00-三ノ沢分岐口11:13-最奥堰堤11:57-12:35文珠堂下山口


(注意) このルートは4年ほど前にある山の本にて紹介された熟練者向けのコースです。しかし、伯耆大山の弥山~剣ヶ峰・天狗ヶ峰・槍ヶ峰~三鈷峰、およびキリン峠間の各ルートは年々崩落が続いており、危険度が極端に高まっています。
わたしたちは十分な知識を持たないまま、恐ろしくも周回してしまいましたが、困難なところは鎖もロープも梯子もなく、岩などもろくセルフビレイできる状態ではありません。
極めて危険ですので、計画の参考にはしないでください。