day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」

2010-12-04 | エイガ。
12月は見たい映画がいっぱいあるので土曜日にまとめて2本見てきました。2本目。インターバル10分。
これは漫画家・西原理恵子さんの元夫で戦場カメラマンだった鴨志田穣さんの自伝を原作にした映画です。西原さんご自身もこそっと出演されてます。


「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」◆監督・脚本・編集: 東陽一◆出演:浅野忠信・永作博美・香山美子 他
《あらすじ》
戦場カメラマンとして世界中を駆け回ってきた塚原安行(浅野忠信)は、人気漫画家の園田由紀(永作博美)と結婚し子どもにも恵まれるが、彼のアルコール依存症が原因で離婚。やがてアルコール病棟へ入院した安行は、そこで出会った人々との触れ合いに不思議な安堵(あんど)感を覚える。家族の深い愛情に支えられ、安行は穏やかな日々を取り戻すが……。(シネマトゥディ

公式サイト
映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』予告編


劇中にも出てくる医師の台詞に、
「アルコール依存症が他の病気と決定的に違うところは、周囲に一切同情されないことです。時には医師からも」
といったものがあります。
ぶっちゃけて言いますが私も「同情」する気にはなりません。

私はお酒が好きで、毎日でも飲めるし悪酔いしたり二日酔いしたりで何度痛い目に遭っても飲酒は楽しいものだと思ってます。が、普通に2、3日全く飲まない(我慢じゃなくて)日があっても困らないし毎日飲まないとなんか物足りないともあんまり思わない。
ちなみに90歳で亡くなった祖父は朝から晩まで日本酒をぐびぐび飲んでいたのでもしかしたら軽い依存症だったかもしれませんがそれが原因で暴れたりしていた記憶はありません。父とはよく喧嘩して茶碗投げたりしてましたけど。ただし非常に健康で、亡くなった時も外傷が原因だったので火葬場で「90歳の仏さんのお骨とは思えない綺麗さだ」と感心されました(笑)

アルコール依存症と言ってもなんでその段階まで行っちゃうかは人によるんでしょう。単純にお酒が好きすぎてどんどん嵌ってった人とか、何か嫌なことから逃避するために飲んでいてそこまで行っちゃう人とか。
だから依存症という「病気」になる道のりの間には同情したくなるような事情があったりもするんだろうと思います。
でも、じゃあ「病気」ならダメだとわかってても飲んでしまったり酔って暴れたりすることを許せるかっていうとこれは私は許せないわけで、そこが「同情できない」に繋がってるのかなあと思ったりもします。
※依存症の人じゃなくても人を殴ったり普段絶対吐かない暴言を人に投げつけたりするような酔い方をする人とは友達になれませんわ。えb(ry

で、病気だからって優しく見守るような気にならないわという話を前置きにしますが。


この映画は実際は塚原がアルコール依存症を克服するドキュメンタリーというわけではなくて、その過程で一度は崩壊した家族をどうやって取り戻したかという話なんだと思います。
由紀が離婚した相手にもかかわらずどうして別れた夫のことをそこまで面倒見る、心配するんですかと質問されて「とは言っても一度は好きになった人をそうそう嫌いにはなれませんし」と答えておいて、酔った塚原に酷い暴言を吐かれて殴られたりした時のことを思い出す場面があります。
私は結婚していないので、そういう耐え難いことがあったからこそ(子どもの為でもあったのだろうし)離婚したのに、それでも相手を思いやる気持ちというのがもうひとつ判らないんですよね。長い時間や空間を共有してきた二人だからこそ感じることなのかもしれないし、由紀が少し特異な人だったのかもしれない、それが想像は出来ても実感としてはよくわからないのは残念です。

回復することが難しいといわれるアルコール依存症を最終的に克服した塚原だけど、その時にはもう酒は塚原の身体を思うさま蝕んでしまっていた。自業自得だと言ってしまえば素っ気無い一言だけど、犯罪を犯したわけでもないのにその「過ち」に対する罰が全ての人に公平じゃないのが辛い。

悲しみで身体が満たされてしまうともう悲しいのか嬉しいのか判らなくなる。
そう語り、同感されたくないんですとも言った由紀。
もしかしたら悲しいことが多すぎて悲しみに鈍感になっていたのかもしれないけど、玉ねぎを刻みながら誘い出された涙に、一気に悲しみを溢れさせてしまう。何も語らずにただ嗚咽を漏らし続ける由紀がまた悲しい。

とは言っても、全体的に悲壮感があるわけでもなくなんとなくのほほんと進行している感じがこの映画の味なのかも。
アルコール病棟の個性的な入院患者たちとか。基本的にコミカルに描かれているので気分が重くなることから救っています。
通院治療を始めた時に、「ビールくらいならいいよな」から始まり、焼酎の度数を見ながら「これくらいなら」とどんどん飲んでいってしまう様子とか、可笑しさを越えてちょっと怖かったけど(笑)。


長くはないと宣告された塚原を『家族』で共に暮らしてやりたいという由紀に、塚原の母は
「あの子にもまだ『帰る場所』があるんだねえ」と述懐します。

帰る場所があって、
そこへ帰ろうと言う相手がいる幸せ。

それは重すぎる罰を課せられてしまった塚原に少しだけ与えられた救いだったのかもしれません。



由紀が医師に、塚原は戦場で酷い光景を見てきて辛い思いをしてきて、と酒に逃げるようになった要因について漏らす場面があってその時医師が、「でも、それを見た人よりその中で生きてる人の方がずっと辛いでしょう」みたいなことを言います。
でもどうなんだろう、確かにその中でしか生きられない人の方が辛いのは当たり前だけど、外から来てそれを見た人だからこそ感じる無力感とか絶望とかそういうものもあるんじゃないかな。


しかし原作は自伝だとはいえ、映画として出すならもう少しどこかに焦点が合ってた方が良かったかなとも思いました。
パスカルズの音楽は映画の空気感ととても合っててすごく良かったです。

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原作は読んでないし(西原さんの漫画はいくつか読みましたが)鴨志田さんの著作は読んだことがないので、あくまでも「映画」の感想として書きました。西原さん、鴨志田さんのファンの方で不快になった方がいらしたら申し訳ありません。
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